第155話 師匠? 7
「まあ、後は実践しながら説明していくよ」
「わかった」
ヨタは、声に出し肯定し、結は首肯した。
それを確認すると僕はモンスターを探し始めた。
それから、しばらく探しているとようやくゴブリンを見つけることができた。
「じゃあ、実践しながら、説明するから、ちゃんと聞いていろよ」
僕は、ゴブリンを殺さないようにしないといけない。僕の攻撃は全てが損傷ダメージになるからだ。そのため、注意していないといけない。
最初の説明のため、かすり傷になるよう、攻撃を当てたかった。だから、かすらせるような軌道でテレポートを使った。
なんとか、成功してかすり傷を負わせることができた。
「こうやって当て方によってはかすり傷を負わせることもできる。まあ、ほとんどダメージはないけどね」
「うん、それはわかるけど、それってどんな意味があるんだ?」
「意味はほとんどないけど、システムダメージも同じで、かすらせたりするとほとんどダメージはない」
「なるほど、そんなことがあるのか」
僕も最初知ったときはそうなんだと思ったが、それ以上の感想はなかった。
僕がこうして説明している間、ゴブリンが2人の方に行かないように気をつけながら、ゴブリンの攻撃をかわしていた。ヨタなんか、おそらく一撃で死んでしまうだろうから、絶対にゴブリンを2人に向かわせてはダメだ。
「まあ、本題はここからだから」
僕はそう言うと、今度はゴブリンの片腕を切り落とした。
さっきのヨタのこともあってか、2人はあまり驚かなかった。僕として、説明がスムーズに進むため、ありがたかった。
「こんな感じに、部位を切り落としたりすることができるんだよ。ちなみに腕を切り落とすと大体ゴブリンの場合は、1、2割程ダメージが入る」
「へぇ、そうなんだ。一ついいか?」
「ん?なんだ?」
「お前ってさ、ゴブリンに損傷ダメージを与えられる程攻撃があるんだよな?」
「あ、ああ、そうだけど?」
実際は0のため、最初少しだけ口ごもってしまった。
「なのに、なんでゴブリンが死なないんだ?普通、システムダメージだけで死ぬだろ」
ヨタの言いたいことはなんとなくわかる。
「ようするに、かすり傷の時と同じで、部位によってシステムダメージの入り方が違うんだよ。それにシステムダメージじゃあ、1割を超えないって言っただろ」
「じゃあ、なんでシステムダメージが1割を超えないんだよ。普通おかしいだろ」
「えっとぉ、それは……」
ヨタの質問に僕答えられず、言葉に詰まってしまった。そこは僕も良く理解していないところだ。
僕は、なんとか調べたことを思い出し、それっぽいことを言った。
「簡単に言ってしまうと、損傷ダメージが主なダメージになるからだ。一旦損傷ダメージになると、それ以上システムダメージが増えないんだよ。つまり、損傷ダメージになるまでのダメージがシステムダメージで、それが1割程度なんだよ」
「うーん?」
ヨタはまだ納得していないようだった。僕も良くわかってないから、当然だ。
「えっと、ダメージが1割を超えたら損傷ダメージになるってことで良いのか?」
「うーん、ちょっと違うかな。1割を超えるような攻撃が損傷ダメージになるんだよ」
「ああ、もう、わからん!」
ヨタがついに考えることを放棄した。
「あまり考えないで、慣れた方が良いってこと?」
結も考えたくないらしく、そんなことを提案してきた。
「そうなるな」
僕は結の考えに同意した。こんなの変に考えるよりはやっていって慣れた方が絶対に良い。
僕は、この間もゴブリンに2人に向かわせないようにしていた。でもいい加減疲れてきたから、倒すことにした。
「じゃあ、倒すからな」
そう言い、僕はゴブリンの首を切り落とした。
さっきまで声を上げながら、こっちに向かってきていたゴブリンは動かなくなった。
「と、こんな感じに部位によっては即死させられるところもある」
「なるほど、部位によってダメージが変わるって、そういうことか」
「そういうことだ。急所をやられれば、即死するってことだよ」
「まあ、なんとなくわかったよ。それでそれが俺のステータスとどう関係あるんだよ」
「この損傷ダメージって、攻撃に限ったことじゃないんだよね」
「えっと、つまり?」
「つまり、防御系のステータスが0だと、強い衝撃を受けただけで、体が木っ端微塵に吹っ飛ぶってこと」
「怖っ!なんだよ、それ!」
僕の場合、そのせいで何度か体がなくなったし。まあ、問題はなかったけど。
「ステータスが0って、リアルの身体能力とほぼ同じ状態だから、攻撃以外の要素で死にやすくなるんだよね」
「?別に、何度死んでも問題なくね?」
「うん、私もそう思ったけど」
ここで、僕この2人にこのゲームのあるシステムを言い忘れていたことに気づいた。
「あ」
「なんだよ、その不穏な『あ』は!」
「えーっと、言い忘れてたんだけど、このゲーム、死ねる回数が決まっているんだよね」
「「……」」
2人して、何も言葉を発さなくなった。
「「はぁぁぁ?!どういうことだよ!!」」
少し後、2人して声を揃えて聞いてきた。
「えーと、基本的に1回しか死ねないんだよ。だから、そのステータスはやめた方が良いって言ってるんだよね」
「なんで、そんな大切なことを言わなかったんだよ!」
「いやあ、僕が死んだことがないから、忘れてた」
「おい、覚えておけよ」
「まあ、一応救済措置はあるから」
「どんなのだよ」
「ゲーム内で30日ログインすると、1回復活できるってものだよ」
「30日?!長すぎないか?」
そして、僕はまたしても大事なことを忘れていた。
「このゲーム、リアルで8時間で1日なんだよね。だから、リアルだと10日で1回復活できるってことになる」
「だから、そう言ったことは早く言えよ!」
「ごめんって、僕は慣れてるし、当たり前だったから忘れてたんだよ」
僕はそのあと、2人に怒られた。とりあえず、フィールドで説明することは終わったので、この後どうするか聞いた。
「それで、これからどうする?モンスターでも倒していくか?」
「いや、やめておくよ。まずはステータスを変えたいからな」
「そうか、なら帰るってことで良いか?」
「ああ、それで良いぞ」
「結もそれで良いか?」
「うん、私ももう少し考えてみたくなったから、それで良いよ」
そうして、僕は街に帰ることになった。結局、装備は何も使われないまま、役目を終えそうでなんか勿体無いなと思った。
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