第156話 師匠?8

僕たちは街に帰ってきた。


帰って来る頃には、日が暮れはじめていた。ヨタと結がこれからについて考えたいと言うので、2人を店の方に連れて行くことにした。時間的に店の方が終わっている頃だと思ったからだ。それに、何もないが、誰かに邪魔されることもないからだ。


というか、僕はとしては最初から店で色々と説明したかったのだ。でも、店が混んでいたので、それを諦め、実践という形ある程度説明した後、店に行くことを最初から決めていたりした。


まあ、途中で往復することになったからちょうど良い時間になったんだけどね。


本当ならテレポートでも使えば、最初から店で説明できたんだけど、やっぱりあまり見せたくないっていうのも本音だ。むしろ見せるべきではないとも思っている。自分が見つけたのだから、他人に奪われたくないというのもあるが、バランスを壊しかねないからな。言いふらすものでもないと思っているのだ。


そんなわけで僕は2人を連れて、店に帰ってきた。2人には僕の店ということに言っておらず、自宅ということで連れて来ていた。


僕の狙い通り、店の前にできていた行列はなくなっていた。僕は特に気にすることなく、ドアを開け入って行った。


中では、あずさが片付けと掃除をしていた。あずさは、僕が帰ってきたことにすぐ気づき、挨拶した。


「零さん、おかえりなさい」


「うん、ただいま。でも、別に手を止めてまでしなくても良いよ?」


「いえ、手を止めないとできませんし、挨拶しないなんて失礼ですから」


「別に僕は気にしないんだけど」


「私が気にするんです」


いつものような会話をしていた。


すると、あずさがヨタと結に気がついた。


「あれ?零さん、お客様ですか?」


「え?…ああ、別にお客ではないかな」


僕は一瞬、お客様をヨタと結のことを指していることに気づかず、言葉に詰まった。


「えっと、それでは、そちらの方々は」


「ああ、2人は——」


あずさに紹介した方が良いと思い、振り返ると、そこではありえないものでも見たとでも言いたげな表情をした、ヨタと結がいた。


「って、お前らその表情はなんだよ」


僕は、それが少しイラっとしたため、語調が少し強くなってしまった。


「いや、だって、なあ?」


「うん」


と、何故か2人は息が合っているようで、お互い言いたいことがわかっているようだった。僕はそれが少し気に入らなかった。


「だからなんなんだよ!」


僕は、2人の言いたいことがわからず、強く聞き返した。


「いや、だって、普段、人と話したがらないお前が、しっかりしてそうな幼女と普通に話してるんだぞ。普通おかしいと思うだろ」


「うんうん」


結はヨタの意見に同意なのか、首をこれでもかというほど、強く振っていた。


「べ、別に話していていいだろ!」


「まあ、そうなんだけど、俺たちからしたらさ、意外だったんだよ」


「うぐ」


そう言われてしまうと、納得もしたため、強く言い返すことができなかった。


「それと、やっぱりロリコンだったか、と」


「ロリコンなわけあるかぁぁぁ!」


僕は、ヨタの聞き捨てならない言葉に反論した。それだけは認めてはいけない気がしたからだ。


「別に隠さなくてもいいんだぞ?」


ヨタが優しくそんな言葉をかけてきた。


「だから、違うって言ってんだろ!」


「認めたくないのはわかるけど、なあ?」


そういうと、ヨタは結の方に目を向けた。


「?」


結は、なんで自分の方を見られたのか分からないのか、首をかしげていた。


しかし、僕にはその意味がわかってしまった。


確かに、結は身長も低いし、幼く見えなくないが、それとこれとは全く違う。


「べ、別にそういった意味はねぇよ!」


「ほほう、そういった意味はない、と。他の意味はあるんだな?」


ヨタは勝ち誇った顔で、そう言ってきた。


ここに来て、僕は自ら墓穴を掘ったことがわかり、激しく後悔した。また、ヨタに弱味を握られてしまった。


僕は、ヨタを睨むことしかできなかった。


僕は、ヨタの勝ち誇った顔をこれほどまでに憎く思ったことはなかった。


「あ、あのぉ」


あずさが、何か言いたそうに声をかけてきた。


「なんだ?」


僕は、ヨタとのやりとりがあり、少し不機嫌になっており、それを抑えることができず、不機嫌のまま、あずさに聞き返してしまった。


「ご、ごめんなさい!」


あずさは、僕が怒っているとでも思ったのか、謝られてしまった。そのことで頭が冷え、冷静な判断ができるまでになり、自分があずさに当たっていることに気づき、反省した。


「別に、あずさに怒っているとかはないから、謝らなくて良いから」


「そ、そうなん、ですか?」


「う、うん、だから気にすることはないよ」


僕はできるだけ優しい口調であずさに言った。


「そうだぞ、他人にまで怒りをぶつけるなんて最低だぞ」


「誰のせいだと思ってるんだ!」


僕は、ヨタの無責任な発言につい、キレてしまった。そのせいで、またあずさが縮こまってしまった。


その度、僕はあずさのフォローをしていた。


結は何故か満足した表情でこちらの様子に見ていた。


僕は、2人をここに連れて来るべきではなかったと後悔していた。それはもう遅かった。まあ、他にゆっくりできるところもなかったから仕方ない面もあるんだけど。


それから、あずさのフォローやヨタへの文句を言い、それらが終わった後、結をこちらに引き戻して、ようやく話せる状態になった。




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