第157話 師匠? 9

僕は、全員が落ち着いたところで、全員の紹介を始めることにした。


「で、この2人は、僕の友人だよ」


「あ、そうだったんですね」


あずさは、いろいろと納得したみたいだった。


「男の方はヨタで、女の方は結だよ」


「ヨタだ、よろしくな!」


「結だよ。よろしくねー」


「それで、この幼女は、アルバイト?従業員?のあずさだよ」


「あ、あずさです!よろしくお願いします!」


あずさは、ヨタと結に対して緊張しているようだった。僕は、他にすることもないと思い、2人を奥に連れて行き、話の続きをしようと決めた。


「まあ、これくらいにして——」


「ちょっと待て!」


ヨタが、何か言いたいことでもあるのか、僕の言葉を遮った。


「なんだよ」


「なんだよじゃねぇよ!なんだよ従業員って!」


そういえば、面倒だから言うのを忘れていたことがあったことを思い出した。


「あー、そういえば、言ってなかったな」


「何をだよ」


「一応、僕、ここの店主をやってるんだよね。まあ、形だけだけどね」


「そんなこと聞いてねぇよ!」


「うん、言ってないからね」


「わかってるわ!」


「それで、どんな店やってるの?ここには、何もないみたいだけど」


ヨタとは違い、結は冷静に店内を確認し、そんなことを聞いてきた。


確かに今は、何も置いてない。あるのは調度品だけだ。おそらくあずさが片付けたのだろう。


「ああ、一応、ポーションを売ってるよ」


「へぇ、そうなんだ」


「って、結もなんで関心してんだよ!いろいろとおかしいだろ!」


「ん?そうかな?」


「そうだよ!そもそも、こいつにこんなことできるわけないだろ!」


「失礼な」


僕は、ヨタの言い方にイラっとした。


「まあ、確かにそうかもね」


「ちょっ、結?!お前までそんなこと言うか?!」


「だって、ねぇ?」


「だからなんだよ!その含みのある言い方は!」


「それより、いいの?」


「何がだよ!」


僕の言葉に答えるように結は、僕の後ろを指差した。僕は、それに反応するように後ろを向いた。そこでは、あずさがまたしても縮こまっていた。それから、僕は慌ててあずさのフォローをした。


なんか、少し前にも同じようなくだりがあったよな。本当疲れた。


それから、なんとかフォローできて、話せる状態に戻った。


「そういえば、聞きたいことがあるんだけど」


「今度は何だよ」


結が何か気になることがあるようで僕に聞いてきた。僕は、今までのことがあり、少しうんざりしていた。


また、こんなことにならないようにしないとな。


僕はそんなことを思って、次の言葉を待った。


「その、あずさちゃんの頭に乗っているのって何?」


「え、えーと、この子のことですか?」


あずさは、躊躇いがちにそう言い、頭の上のヒールストーンスライムを持ち、胸の位置まで降ろし、抱えた。


「そう、その物体!何なの?」


「あー、確かに気にならな」


ヨタも気になったのか、その話に混ざっていった。


「この子は、ひーちゃんです!」


「「「え?」」」


僕たち3人はその答えに、同じ反応をした。僕の場合は、ちょっと意味合いが違うけど。


「あっ!す、すいません!間違いました!ヒールストーンスライムのひーちゃんです!」


「え?スライムなの?」


「何か、違うような?」


2人は、スライムに対して疑問があるようだが、僕は、その名前に対して疑問があった。確かに、少し前にスライムの正式名については聞かれたから、答えたけど。その名前はどうなのか、と。安直すぎると思った。


「あずさ」


僕は、あずさに何故名前をつけたの聞いてみたかった。確かにヒールストーンスライムは長い。だから、そんな風に呼ぶのは、別に構わない。それに、全て任せたのは僕だから、文句を言うつもりもなかった。


「零さん、す、すいませんでした!」


でも、あずさには、僕が怒っているように見えたらしく、謝られてしまった。


「え、いや、それは——」


「勝手に名前を付けたりしたら、ダメですよね」


「いや、だから——」


「零、お前最低だな」


「そんなことも許してあげてないの?」


2人からも何故か、僕が悪いみたいに言われてしまった。まだ何も言ってないにもかかわらず、だ。


「って人の話を最後まで聞けよ!」


「最後まで聞いたら反対するんでしょ?」


「するかよ!むしろ、ありがたいくらいだよ!元々長かったからな、そう短くしてくれる分には問題ないよ。それに、僕が全部任せていたんだから、口出しする権利なんてないよ」


「え?良いんですか?」


「ああ、別に構わないよ」


僕がそう言うと、あずさは安心していた。


「お前、こんな小さい子に仕事全部任せていたのかよ!」


「うぐっ」


「って、否定くらいしろよ!」


ヨタは、冗談のつもりそんなことを言ったらしい。でも、本当のことなので何も言い返すことはできなかった。


「……」


「いやいや、マジかよ」


「……」


「お前、ほんとうに最低だな」


僕が黙っていると、そう言われてしまった。


「零さんをひどく言わないでください!」


僕が黙っていると、あずさがそう言った。


「でも、実際——」


「零さんは私に優しくしてくれます!それにお金だってたくさんくれます!私には十分すぎるほど、良くしてもらっています!それを最低なんて言わないでください!」


と、数日前に見た光景をまた見ることになってしまった。僕としては、そんなの当たり前のことだし、できるだけ働いて欲しくないという気持ちはある。まあ、雇っている以上そんなことは言わない方が良いんだろうけど。


ヨタも結もその剣幕に圧倒されていた。


「はい、すいませんでした」


ヨタは素直に謝っていた。


「あ、す、すいません。私、零の友人の方に対して失礼なことを、申し訳ありませんでした。ですが、これ以上、零さんをひどく言わないでくださいね」


「は、はい、わかりました!」


ヨタはあずさに萎縮していた。


まあ、あずさの言っていることもある意味正論だもんな。つまり、他人の価値観を押し付けるなって言いたいんだろうし、理解できた。


「でも、零は全部任せないで、自分でもやれよ」


「わ、わかってるよ」


僕は無理してでも、あずさの手伝いをしようと心に決めるのだった。


ようやく、話が終わり、2人に説明の続きができると思った。ただ、あんなことがあった後だ、僕は、あずさの片付けの手伝いをしてから、奥の部屋に行くことにした。


あずさは申し訳ないと言っていたが、無理やりに手伝った。そうしないといけないと僕が思ったからだ。

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