第72話 ダンジョン攻略 8

ボス部屋に入ったとき、目の前にモンスターに毒気が抜かれてしまった。


目の前いるのは体長50センチほどの亀だ。しかもかなりアニメ風になっていて可愛い。こんなのもいるのかとマジで思った。


今まではかなりリアルでグロい、まさにモンスターという生物ばかりだったからだ。


そのせいか、この亀を見てるとすごく癒される。


でも油断はしない。


こういうときは大抵、亀が豹変してかなり怖くなるのが普通だからな。


なので慎重に亀に近づいて行った。


しかし、どんなに近付いても豹変することはなかった。


僕はそのことに安心して亀を抱き上げようと手を近づけた。すると、亀は甲羅にこもってしまった。


何、この生物!本当に可愛いんだけど。しかもグロくならないとか、なんていう天使ですか?!


そんな様子に和んでいると、甲羅が飛んできた。僕はそれをまともにくらってしまった。


「え?なにごと?!」


飛んできた甲羅を見てみると、あの時アニメ風亀の甲羅だった。


やっぱりモンスターなのか。


僕はそのことに愕然としながら、倒すことを決めた。それに倒さないとこのダンジョンからも出られないし、しかたないか。


そう思い、僕はその甲羅を真っ二つにするように真ん中に鉄板をテレポートさせた。


すると、呆気なく倒れてしまった。


「あれ?弱くね?」


そうなのだ。ここのボスは一応Aランク相当のはずなのに、ただぶつかることしかできないのになんでだろ?もしかして、僕が早く倒したから、わからなかったのか?


しかし、そんなことを考えているだけの時間はなく、すぐにダンジョンの外に出されてしまった。



外に出たら、僕の姿を確認するとその場のいた人全員が動きを止め、僕に注目していた。


なにごとかと思ってしばらくそのままでいると、いきなりそこにいた人が叫びだした。


その光景に圧倒され、逃げようとしたが、近くにいたプレイヤーと思われる人に手を掴まれてしまった。


「どうやってあのボスを倒したんだよ!」


そのプレイヤーは興奮してるのか、すごくテンションが高くなっていた。


「おい!抜け駆けするなよ!俺にもどうやって倒したか教えてくれよ!」


そのことがきっかけとなり、僕の周りに人が集まってきていた。


「いや、ちょっと待って!」


しかし、僕の声は届かず、そのまま周りの人からの圧力で身動きがとれなかった。


その後、常識のあるプレイヤーが、


「おい!嫌がっている奴のプレイスタイルを無理やり聞くな!」


みたいなことを言って、なんとかその場の騒動は治まった。周りの圧力がなくなると僕は瞬歩を使い、その場から逃げ出すことに成功した。


そして、なんとか宿まで帰ってくることができた。


僕は今日のことを振り返ってみた。槍はボロボロになるし、探索はめんどいし、それにストレスしか溜まらない。なんで皆さんこんなことをしたがるのかがわからなかった。良いことなんて何もない。


だから僕は二度とダンジョン攻略はしないと心に誓い、ログアウトをした。


後日、ギルドに行ってみた。僕の周りに人が集まることはなかったが、何か周りから視線を感じるようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る