第161話 増員 2

それから、しばらく黙っていたが、あずさが最初に口を開いた。


「すいませんでした!」


「気にしてないから、謝らなくて良いよ」


「でも、私の勝手な思い込みで零さんに迷惑をかけてしまったから」


「迷惑になんて思ってないよ。それに僕も言葉が足りなかったと思うし。お互い様ってことで」


「でも……」


あずさはまだ納得していないようだった。


「というか、まだ人が増えるって決まったことじゃないから」


「え?どういうことですか?」


「前回、人を募集したとき、来たのがあずさだけだったでしょ?」


「はい、そうですね」


「それで、また同じように募集したら、集まらないと思うんだよね。だから、人を増やしたいけど、増えるかはわからないんだよ」


「ああ、そういうことですか」


と、なんとか、話をずらすことに成功し、あずさもさっきのことを一旦は忘れてくれたようだった。


「それで、一応駄目元でまた募集をしてみようと思って、それをあずさに伝えただけなんだよ。勝手にやって人を増やすのもあずさに悪いと思ったし」


「私のことは気にしなくて、決めて良いんですよ?私は単なる雇われている者ですから。零さんの決めたことに、口出しはしません」


僕は、さっきのことを思い出していた。口出しはしないと言っているが、一応これからも伝えてから行動に移した方が良いなと思った。


「それで、相談なんだが、誰か知り合いにやってくれそうな人はいないか?」


そう言って僕は本題を言った。最初から僕は、あずさにこのことを聞くため言ったのだ。あずさと2人でやってもらうのだから、あずさの知り合いの方が良いと思ったからだ。


「私の、ですか?」


「ああ、そうだ。いないんだったら、別に構わない。僕がまた募集を出すし、見つかるまでは僕が手伝うから」


「ありがとうございます」


「いや、お礼を言われるようなことではないから。むしろ、今まで1人でやらせていたのが申し訳ないよ。ほんとこちらこそありがとう」


「そんな、私の方こそお礼を言われることではないです。私としては、雇ってもらえているだけで嬉しいんですから。それなのに、ここまで良くしてもらっているんですから、1人だとしてもやるのは当たり前です!それに、今までに比べればたいへんではないですから、このまま1人でも問題はないです!」


「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、やっぱりこれ以上は1人ではやらせたくないな」


あずさの変に遠慮してるところは、もうどうしようもないと思っているから、気にしないようにしているが、それでも僕にも譲れないことはあった。


「わかりました」


あずさがそう言ってくれて僕は安心した。でも、人を増やすにしてももう少し早くやっておくべきだった。僕がこういったことをやったことがなかったからあまり気にしてなかった。これからは、いろんなことに気を配れるように行動しようと決めた。実践できるかはわからないけど。


「それで、知り合いにやってくれそうな人はいないか?」


「そうですね。ちなみにどんな人が良いんですか?」


「ん?僕のことは気にしなくて良いよ。あずさが一緒にやるんだから、あずさがやりやすい人が良いよ。まあ、あえて言うなら、真面目で信頼できる人かな」


「そうですか。それ以外には、ないんですか?」


「うん、ないかな」


僕は、あずさの反応から、誰かいるみたいで良かったと思った。これで、増やせないことはないと思えたからだ。


「一応、2人ほどやってくれそうで信頼できる人ならいます」


僕はその言葉に少なからず、どんな人物か気になった。











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