魔王討伐編
第56話 心配
ログインすると僕は草原の真ん中に立っていた。
なぜこんなところにいるかはわからないけど、まずは街の方に帰ることにした。その時テレポートは使わず、歩いて帰った。理由は今どこにいるか知りたかったから。
まあ、街がどこにあるかわからないけど。
そんなことで迷いながら、なんとか街が見えるところまで帰ってきた。
街に帰ってくると、ギルドに向かった。遅くなればなるほどクロエさんがうるさくなるからな。早く会っておかないといけないのだ。
でもギルドに着くといつもの活気はなく、人も少なかった。そのせいでクロエさんにすぐ見つかってしまった。
「あ、零さん!」
クロエさんは僕を見つけるとこちらにかけてきた。
「無事だったんですね!」
「ええ、そう簡単には死ねませんからね」
「はあ、よかったです」
よほど心配だったのか、クロエさんは腰が抜けたみたいで地面にペタンとお尻がついた。
「クロエさん大丈夫ですか?」
「大丈夫ですかって、零さんがこんな心配を私にさせなければいいだけの話です!」
「そんなこと言われましても、どうすればいいのか」
「そうなんですよね。零さんってそれなりに実力があるから規制するのも難しいですから、面倒くさいんですよね」
「なんか貶されてるような気がするんですけど?」
「はい、貶してますから」
「ひどいっ!」
そんな会話をしていると、クロエさんもなんとか立てるくらいには回復していた。
「それで零さん、今回はどういったご用件で?」
「ああ、ただの顔出しですよ。顔でも見せておかないとクロエさんが心配しますからね」
「そうですか、心遣いありがとうございます。でもその評価はおかしいと思います」
「どこがですか!完璧にクロエさんの行動そのものじゃないですか!」
「はいはい、わかりました。それより、魔王はどうなりましたか?」
「なんか投げやりでひどい。魔王は眠りにつくみたいでしたよ」
「そうですか。じゃあ、零さんはまた3ヶ月後に挑むんですね」
「え?」
「ん?挑まないんですか?」
「いえ、魔王がまた現れるなら、挑みますけど?」
「やっぱりそうですよね。ですが、十分注意してくださいね」
「わかってますよ」
「そう言えば、零さんはよく無事でしたね」
「ん?どういうことですか?」
「それは、今までに魔王に挑んで帰ってきた人がいないからですよ」
「そういう割にはそんな話しませんでしたね」
「はい、このことを言うと現実のものになってしまいそうで、言えなかったんですよ。でも言わなくてよかったと思います」
このことを聞くと無理やりクエストに向かったことに罪悪感を覚えるのですが。それも狙ってるんですかね?
「そうですか。でも僕はそろそろ帰りますね」
「はい、わかりました」
そして僕がクロエさんに背を向けて歩き始めたとき。
「帰ってきてくれてありがとう」
とそんな声が聞こえてきた気がした。
これじゃあ、しばらくまともにクロエさんの顔が見れないよ。
そんなことを思いながら僕は宿に帰って、ログアウトをした。
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