第166話 増員 7

あずさが起きてきたのは、外が明るみ始めたくらいの時だった。


「ぜ、零さん?!」


「ん?あずさか。どうかしたか?」


「どうかしたかって、零さんこそ、なんでまだポーションを作っているんですか?もしかして徹夜したんですか?」


「あ、うん、まあ、そうだね」


僕は、一睡もしていないため、うまく頭が働いていなかった。


「零さん、私には早く寝ろなんて言いますけど、自分では早く寝ないんですね」


「まあ、そうだね。僕は何もしてないからであって、あずさはずっと働いているでしょ?だから、休めって言ってるのですよ。それに普段は徹夜なんてしないですし」


「たまになら良いということですか?」


「そうなるね。まあ、これからこんなことをすることはないだろうけどね」


普段から、それなりに規則正しく生活しているため、今の状況は少しばかり辛い。なんで僕こんなことしてるんだろう、と後悔してきた。こんなことになった原因って、僕が新しく人を雇うことにしたからだ。雇うなんて言わなければ良かったと、少し思ってしまった。


それに、これからあずさの代わりに店番をしなければならない。そのことを考えると嫌になってきてしまった。僕から言い出してしまったことなので、今更やめるとも言えなかった。


「零さん、大丈夫ですか?」


あずさは僕が普段と違うことに気づいたのか、そんなことを聞いてきた。


「ん?ああ、僕は大丈夫だよ。それより、あずさ、おまえは今日休みなんだから、こんな朝早くに来る必要はないぞ?」


あずさを休みにしたのに、こんな有様だと格好がつかないため、僕はそんなことを言った。


「えーっと、そのことなのですが、よく考えたら休まなくても良いかなと思いまして、今日はいつも通りにやることにしました」


「え?どういうこと?」


僕は、あずさの言っていることがよくわからなかった。


「その、よくよく考えたら、夜にはおそらく見つからないですし、呼びに行くだけですから、そんなに時間がかからないことに気づきまして」


「はいはい……はい?」


あずさが詳しく説明してくれたので少しだけ理解することができたが、一つ気になることがあった。しかし、あずさの話はまだ続いていた。


「それで、今日、零さんがいるみたいですので、早く終わらせてしまって、その後にすぐに連れてきてしまえば良いと思ったのです」


今の僕からしたら、あずさが店番をしてくれるのはありがたいことだった。


「まあ、それならそれで良いんだけど、夜に見つからないってどういうこと?」


「えーと、それはですね、その人は夜に仕事をしているのですが、特定の場所ではなくて、いろんなところに行って仕事をするので、見つけられないことに昨日の夜、気づきました」


「へぇ、そうなんだ」


僕は、あずさの話を聞いて、何のために見張っていたのかわからなくなってしまった。


「だから、その、ごめんなさい!」


「いや、別に謝られるようなことじゃないから」


「ですが……」


「出来れば、言って欲しかったけど、どうせ徹夜はしてたと思うから気にしないでね」


おそらく、昨晩僕はあずさから同じことを言われたとしても信じないで、監視を続けていたと思う。


「そうですか」


「納得できないなら、その分働いてくれれば良いんじゃないかな?」


「はい!わかりました!」


あずさは、仕事をして良いと言われたことが嬉しいのか張り切って、働き始めた。いつもの日課になっているのか手際よく、掃除などをしていた。


僕は、何も手伝えず、ただポーションを作っていた。僕はあずさがいなかったら、いろいろと酷い状態になっていたことが確信できた。それほど、あずさの存在は大きいものになっていた。









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