第94話 異常事態 7

「それで、僕はどうすればいいですか?」


「とりあえず、劣化ポーションを大量に売ってください」


「わかりました。じゃあ、とりあえず出しま——」


「ちょっと待ってください」


言う通りにしようと思ったらいきなり止められてしまった。


言う通りに行動しようとして、止められたことで、僕は少し不機嫌になっていた。


「いきなりなんですか。劣化ポーションを売ればいいんですよね?」


なので、少し語調が強くなった。


「はい、劣化ポーションは売っていただきたい」


「なら、なんで止めるんですか?」


「零さん、割合回復の劣化ポーションを出そうとしましたね?」


「ええ、そうですけど?」


「売っていただきたいのは、割合回復じゃない劣化ポーションなんですよ。だから、止めたんです」


原因がわかったとは言え、すぐには元のようには話せない。


「それなら、早く言ってくださいよ」


「申し訳ありません。言う前に零さんが出そうとするものですから」


間接的に僕が悪いと言われてしまった。まあ、僕の早とちりですしね。そう思いながら、僕はアイテムボックス内を確認していた。


しかし、アイテムボックスにあった劣化ポーションのほとんどは、割合回復だった。そうでないのは、数本程度しかなかった。


「あの、クロエさん」


「はい?なんですか?」


「今、在庫を確認したのですが、ほとんどが割合回復でして、それ以外が全然ありませんでした」


「え?じゃあ、すぐには売っていただけないってことですか?」


「はい、そうなりますね」


「そうですか」


そう言ったら、クロエさんがすごく沈んでしまった。何かそれが申し訳なくて、僕はこんなことを言った。


「今日はだめですが、明日になら、1万本くらい用意できると思います」


僕がそう言うとクロエさんは希望が見えたのか明るくなった。


「それは本当ですか?!」


「はい、おそらくその程度なら可能ですよ」


「なら、今すぐ作り始めてください!」


僕はクロエさんの勢いに押され、すぐに作ることになった。しかし、ある問題があった。それは作る場所、というか宿だ。


僕の能力は、他人見せていいものでもないと思う。だから、あまり他人の目があるところでは作りたくないっていうのが本心だ。そのため、ある程度の場所が確保でき、他人の目がないところで最適なのが、宿というわけだ。


でも街の中の宿に泊まったら、今度は街に入ったようには誤魔化せないだろうし、ばれたらもう戻っても来れないだろうから、困っているのだ。


「あの、クロエさん」


「はい、なんですか?」


「安全で、住人の方から狙われないところじゃないと僕は作れませんよ?」


「それなら、ギルドに居れば安全ですよ。ギルドの仮眠室なら、一般人は入ってこれませんから」


ということで僕は、久しぶりに仮眠室もとい、独房に泊まることになった。


僕は、クロエさんに連れられて、独房に行き、独房に押し込められてしまった。


独房に入ると僕は、すぐに複製を行い、宣言した1万本以上を作り終えた。


それから、僕は一旦ログアウトをした。





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