第120話 開業 10
営業3日目、僕は前日と前々日のことがあり、店を開けるのが嫌になっていた。
でも、このまま終わりにするのは負けたみたいで嫌だったから、続けようとは思えた。
そして店を開けてから1時間後、ドアをノックする音が聞こえた。
僕は最初のお客様と思い、テンションが上がった。3日間も待ってようやく1人のお客様が来てくれた、そう思い僕はすぐにドアの方に行き、ドアを開けた。
しかし、そこにいたのは、怒っているような顔をしたクロエさんでした。
僕はお客様がクロエさんとわかると目に見えてガッカリした。それと同時に、僕はクロエさんが怒っている理由を考えた。
考えをまとめ終わらないうちに、クロエさんが話しかけてきた。
「零さん?」
「はい、なんでしょうか?」
「いつになったら、売りに来てくれるんですか?」
あ、そういえば、店のことで頭がいっぱいでギルドに行くのを忘れていた。
「あ、忘れてました」
「忘れてましたって、また前みたいなことを起こしたいんですか!?」
「そんなわけないじゃないですか」
「それなら、来てくださいよ」
「気をつけます」
「まあ、いいです。今日はポーションを買いに来たんですから」
「あ、そうなんですか?」
「そうなんですかって、零さんがギルドに来ないのが原因じゃないですか!そのこと、わかってるんですか?!」
「すいません」
僕は、言い訳せずに素直に謝った。忘れてた僕が悪いんだから。
「じゃあ、零さん、ポーションとハイポーションをそれぞれ50本ずつください」
「わかりました?」
「どうかしましたか?」
「いくらギルドが近いとはいえ、100本も運ぶのたいへんじゃないですか?それにこれだけ近いなら、僕がギルドまで行きますよ?客はおそらく来ないですし」
「運ぶのは、問題ないですよ。最近、冒険者の方がアイテムポーチっていう物を発明してくれたので。でもそうですよね。これだけ近いなら、ギルドまで来てもらった方が良いかもしれませんね」
僕は聞きなれない、アイテムポーチってアイテムに興味を持った。
「クロエさん、ちょっと待ってください」
「はい?何か問題でもありましたか?」
「問題っていうほどのことじゃないんですけど、そのアイテムポーチって何ですか?」
「え?零さん、知らないんですか?!零さんも持ってるじゃ——ああ、零さんのはかなり性能が高い物でしたね。それなら、知らなくても納得です」
「クロエさん、1人で解決したことにしないで、ちゃんと説明してください」
「あ、ごめんなさい」
クロエさん、僕が持っているって言ったけど、もしかして、アイテムボックスみたいな物か?
僕が、そんなことを考えていると、クロエさんから回答をもらった。
「アイテムポーチっていうのは、零さんが持ってるアイテムボックスとほとんど同じ性能のものですね。違う点は、入る量が少ないということくらいですね」
「そうなんですか。でも、なんで僕のアイテムボックスとほとんど同じだってわかるんですか?」
僕は、自分ですら、どんな性能なのか知らないのに、そんな風に言える理由が知りたかった。僕が知ってるのも、運ぶのが簡単、なんでも入る、制限がない、くらいなもので後は何も知らない。
「なんとなくです。名前が似てますし、同じようなものかなと、それに零さんが10万本のポーションを持って来てたりするじゃないですか。でもアイテムポーチは、100本くらいしか入れられないので、性能は下かなと思ったのです」
「なるほど、そういうことですか。他にどんなことがあるんですか?」
「そうですね。重さとかも全然感じませんね」
さすが冒険者というところか。そんなものまで作れるとは、ほんと、僕の取り柄がどんどんと無くなっていくよ。
聞いているうち、あることに気づいた。
「あの、クロエさん」
「はい、なんですか?」
「そのアイテムポーチをアイテムポーチに入れることとかはできるんですか?」
この回答によっては、ほんとに僕の取り柄がなくなる。
「はい、できますよ」
はい、終わった。それなら、僕がアイテムボックスを使えても、アドバンテージにはならないな。なんか、悲しい。
こんだけ不憫なステータスしてるんだからと、思ってしまう。
「でも、する人はあまりいないみたいですよ」
「え?なんでですか?」
「なんでも、入れた物がどれに入っているかわからなくなるそうです。それにまだたくさんは出回ってませんし、値段がかなりするので、複数持つ人は未だいませんね」
よし!まだ僕の方が上だな。
まあ、そんなことどうでもいいんですけどね。
その後、結局僕はギルドまで行き、ポーションを売ってきた。
僕が帰る間際、クロエさんが僕に、店のことについていろいろダメ出しをしてきた。看板や内装についてだ。
看板は、字が読めない人が多いから、意味ないと言われてしまった。内装は、淋しすぎると言われてしまった。
最後に、ギルドで売っているポーションが僕の店でも売っているということを宣伝してくれると言ってくれた。ほんと、それだけは嬉しかった。
でも、値段はギルドのモノと合わせてほしいということも言われた。まあ、片方だけ安ければ、安い方に行くだろうし、当然といえば、そうだよな。
僕はギルドから帰ってきて、早速値段だけ直した。他のものはどうしようもないから、しばらくはこのままで行こうと思う。
その作業だけ終わらせてからログアウトした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます