第146話 雇用 13

ログアウトした後は、最後の勉強会へ向かった。



最後の勉強会は、後のことを考えて、今までよりは長く監視した。と言っても、普段よりも1時間長い程度だ。


しかし、そのおかげで課題の半分近くが終わった。夏休みが始まって約1週間、ここまでできたのは初めてだった。今までは、休みの前日まで、ほとんどやってないのが当たり前だった。そう思うと、ここまで終わったことが本当に嬉しかった。


それでも、まだ半分は残っているので、今年こそは何とか夏休み中に終わらせてしまいたい。勉強会は終わったが、これからは定期的に監視を兼ねて、遊びに行こうと思う。どんなに技術が進もうが、直接自分の目で確かめるのが1番信頼できるからな。


そういった、これからも課題の進捗状況を確認のため、行くことを告げると2人して嫌そうな顔をしていたが、僕が夏休みの終わり、楽をするため仕方ないことだと言っておいた。


2人からは、散々嫌味を言われたし、ゲームをやらせろとも言われたが、夏休みの終わりを楽に過ごすことだけは、譲れなかった。


ちなみに、僕は課題をこの勉強会という名の監視をしている間に終わらせている。監視をしているだけでは暇だったからだ。


そんな感じで、夏休み始めの勉強会は終わった。これからは、夏休み中の勉強会が始まる。まあ、僕のもゲームはしたいから、頻度は下がるだろうけど。



それから、自宅へと帰り、とりあえず少しだけゲームにログインをした。


ログインした時間が遅かったため、暗くなり始めていた。


僕はあずさの様子を確認するため、店の方へと降りていった。店ではあずさが、掃除をしているところだった。


あずさは僕が来たことに気づき、挨拶をした。


「零さん、お疲れ様です」


「お、うん、お疲れ」


あずさはあまり疲れていないようだった。それは、見た通り疲れていないのか、それともただ無理をしているだけなのかはわからないが、ポーションを減らしたことは成功しているように思えた。


「零さん、聞きたいことがあるんですが、いいですか?」


「なんだ?聞きたいことって?」


僕は、もしかして、ポーションを減らしていたことがバレているのかと身構えた。


「今朝、売上げを渡したそびれたんですけど、やっぱり……」


僕は、予想していた内容じゃなかったことに安心した。


「ああ、売上げでそこまで気にすることはないよ。まあ、僕はほとんどいないから、いる時にまとめて渡してくれてもいいし」


「え?あ、そう、ですか」


あずさはなぜか戸惑っていたが、その後はいつも通りになった。あずさから売上げを受け取り、そこからあずさへ大銀貨20枚と銀貨10枚を渡そうとした。銀貨を渡したのは、やっぱり、こまかいお金も必要だと思ったからだ。


「あの、零さん?これは何ですか?」


「ん?ああ、あずさへの賃金とこの店の運営費かな?」


「私に聞かないでください。というより、こんなに受け取れませんよ!」


「それでも、3日分の賃金は受けとれよ」


僕はそういい、大銀貨3枚を渡した。あずさもこればかりは断れないのか、素直に受け取った。僕、受け取ったついでとばかりに残りもすべて渡した。


「だから、こんなに受け取れません!」


「はあ、別に使う必要はないんだからさ、受け取ってくれよ。もしかしたら、使うことがあるかもしれないだろ?」


「うう、ですが」


毎回のことながら、受け取らせるだけでも一苦労である。


「僕はほとんどいないんだから、運営費はあずさが持っているべきだろ?模様替えもまだ終わってないようだし、お金は必要だろ?」


本音を言うとあずさに任せっきりだから、多めに賃金を渡したいのだ。しかし、そのことを言うと、受け取ってもらえなさそうだから、言わないようにしている。


「…わかりました。ですがこんなにはいりません」


結局最後まで、納得はしていないようで、大銀貨5枚だけ返された。僕もこれくらいならと思い受け取った。本当にお金のことになると頑固すぎて困ったもんだ。


僕は、今日ポーションを売っていないことを思い出し、ギルドに行くことにした。


「あずさ、僕はこれからギルドに行ってくる」


「あ、零さん、行く前にちょっといいですか?」


「ああ、なんだ?」


僕は、急いでいたため、返事が雑になっていたし、頭の中も早く行くことだけでいっぱいになっていた。


「明日はポーションの量を減らさないでくださいね」


そのため、そんな予想外のことを言われてしまえば、動揺しても隠しきれないのは仕方ないと思うのだ。


「え、あ、な、なんの、ことだ?」


僕は、動揺しまくりで言葉がうまく出てこなかった。


「私のことを思って減らしてくれたのは嬉しいですが、減らしたことで買えない人が出ることをわかってほしいです」


あずさは、僕が動揺していることを気にせずに言った。


「……わかった」


僕は、あずさの言っていることが正しいことがわかったから、次からは、減らさないようにしようと思った。



それから正気に戻った僕は、慌ててギルドに向かった。そこでも、クロエさんに散々文句を言われた。


ようやく店まで帰って来れたが、今度はあずさに監視されながら、僕はポーションを仮の倉庫に入れていた。そこで、ポーションを昨日より多く補充したにもかかわらず、足りないと何度も言われ、昨日の約1.5倍の量のポーションを補充した。今日のあずさはなぜが怖く、逆らえなかった。


それから解放された後、すぐにログアウトした。


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