第62話 新しい街 4

次の日、僕はとりあえずギルドに行ってみた。もちろん早い時間帯にだ。あんまり人には会いたくないからな。


でも行ってみると、すでにギルドは混雑していた。


うん、やっぱり田舎より都市の方が混んでいるな。


うーん、どうしよう?これくらいなら、並んだ方がいいだろうけど、急いでるわけでもないし、お金にも困ってないし。正直ここまで混んでいるとは思わなかった。


前の街ではクロエさんみたいに知っている人がいたから長く並んでいられたけど、今回はそういうことはないし。


まあ、顔見せを兼ねて何かクエストでも受けてみますか。


それから、約30分後ようやく僕の番がまわってきた。


「ん?見ない顔ですね。ここに来るの今日が初めてですか?」


「はい、そうです」


「それなら、このギルドのルールも知りませんね?」


「わかりません。というかルールなんてあるんですか?」


「はい。このように混みますから、ルールというより、いかに早く人を捌くかで、ちょっとした工夫があるんですよ」


「へえ、そうなんですか。それはどういうルールがあるんですか?」


「今も時間がないので簡単に説明しますね。まず、受け付けによって取り扱うことが違います。私だったら、クエストの受注ですね」


「なるほど」


「それとクエスト受注の場合、あらかじめ受けたいクエストを持ってきてもらっています。掲示板に貼ってあるので探してください。他のところは、その担当の人か、暇そうにしてる冒険者の方に聞いてください」


「わかりました。ありがとうございます」


そう言って僕は、ギルドを後にした。


そんないきなり他人と話せとかハードルが高いんだよ。だから誰にも聞かずに帰ることにしたのだ。他の受け付けの人のところも混んでいたし。そこに聞きに行くのは申し訳から。


それでギルドから出ようとした時、肩をトントンと叩かれた。


振り向くとそこには男がいた。


「君、初めてなんだろ?俺がいろいろと教えてやるよ」


その言葉を聞いて僕は、女の子の方がいいなと思った。


「おいおい、そんな露骨に嫌そうな顔をするなよ。傷つくだろ」


「あ、すいません」


「いいよ。それにこういう時は女の方がいいもんな」


「はい、そうですね」


「少しくらいは否定しろよ。それで君は初心者かな?」


「いえ、僕はβ時代からやってます。ですが、最初の街以外には行ったことがないもので」


「なるほど、ちなみにランクは?」


「一応Sです」


「そうか、なら、とりあえずこのギルドについてだが、ルールは基本的に受け付けが分かれているということ以外は、ファスムとほとんど変わらない」


「あれ?掲示板からクエストを受けるのも違うのでは?」


「は?ファスムでも同じだろ?」


「いえ、僕の場合はすべて受け付けの人がやってくれましたよ?」


「俺の場合は自分で取りに行ったぞ?」


うん、すでに話が噛み合ってないぞ。しかも、僕ってなんかいろいろと管理されてたのか?でもすべて受け付けのクロエさんがやってくれて楽だったからいいけど。


「そうなんですか。他には何かありますか?」


「いや、これだけわかっていればいいからな。それと1金貨な?」


「ん?料金ですか?それなら、どうぞ」


僕は、そう言って何の躊躇いもなく渡した。


それに驚いているようだったけど、すぐに立ち直って、金貨を受け取っていた。


「おう、俺はそろそろ帰るな」


「はい、ありがとうございます」


そこで今度こそ、僕はギルドから出て行った。

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