第103話 準備 3
ギルドに着くと、クロエさんはすぐに見つけることができた。クロエさんも僕を見つけたらしく、こちらを見て微笑んでくれた。
怒っていないと思い、近づいて行った。近くにつれてクロエさんの目が笑っていないことに気づいた。
しかし、気づいてしまったからには、ここで方向転換して帰るわけにもいかない。それで、さらに現状を悪化させる方がまずい。
気のせいだと思うのだが、クロエさんが僕に気づいたあたりから、人がクロエさんの方に近寄らなくなっていた。
僕は覚悟を決め、クロエさんに近づいて行った。
「零さん?」
「はい、なんでしょうか?」
ここで弱気になってしまってはダメなので、自分は何も悪くないと強気で臨んでみる。
「なんで3日も来なかったんですか?確か、毎日来るようなことを言っていましたよね?」
「いや、ほら、僕にも予定というものがありましてですね?少しくらい来れない日もありますよ」
「それなら、連絡とかもできたのではないですか?」
「いや、急な予定だったもので」
僕はだんだんと追い詰められていった。それに言い訳も苦しくなってきた。
「わかりました。そういうことにしておきますね」
お?まさか、許してくれるのか?まさか、あんな言い訳で許されるとか、思わなかった。
「ですが、次からは気をつけてくださいね?」
「りょ、了解です」
有無を言わさないクロエさんの口調に僕は、肯定するしかなかった。
「それで、今日はポーションだけですか?」
「はい、そのつもりでいます。あまり良いクエストもありませんから」
「そうですか。それでは、行きますか。なぜか今日は人があまり来なかったので」
僕は「クロエさんが怒っているからですよ!」と言いたかった。しかし、それを言うと僕の方に飛び火しそうなので、言わなかった。
それから、いつものようにいつもの量のポーションを売った。
数十分の時間をかけ、売り終わった後、僕はクロエさんに今後について話した。
「クロエさん」
「はい?何ですか?」
「これから何ですが、できるだけ早くは来るつもりでいますが、いつになるかはわかりません。もしかしたら来れないかもしれません」
「零さん!また今回みたいになったら、どうするんですか?!」
「ですから、何とか来るようにはします。でも来れないときがあるかもしれないということです。それに毎日はこれませんから。どんなに早くても3日くらいの間隔で来ると思います」
「どうしてもですか?」
「どうしてもです。それに、僕にばかり頼るのもやめてくださいね」
いままで、言えずにいたことをついに言うことができた。
「そうなんですけど、零さんのポーションを作れる人が見つからないということと、零さんの持ち込んでくれる量は重要ですから」
「それは何となく分かりますけど」
確かに僕はコスト0でポーションを無限に作ることができるからな、量に関して言えば、確かに重要だ。そのこともあって、売った金額のすべてが利益になるんだからな。
でも、ポーションを作っている奴らはそうじゃない。材料費から調合に使う道具などすべて自腹なんだから、すべてが利益にはならない。いくら作業工程を短縮できるからといって、1日に作れる限度というものもあるだろうからな。
つまり、僕くらいの利益でないと好き好んでやる奴なんて出てこない。
そりゃあ、重要視されるわけですよ。
「ですから、できるだけ来るようにしてくださいね」
「わかりました」
そして、この日はこのままファスムの宿に帰るのではなく、違う街に向かいそこで宿をとり、ログアウトした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます