第183話 3人でダンジョン 1
しばらくすると結とヨタがやってきた。
「零、相変わらず早いな。待ったか?」
「待ってたけど?」
僕はヨタがなんでそんなことを聞いてくるのかわからなかった。
「そこは今来たって言うところだろ?」
「なんで、男相手にそんなこと言わないといけないんだよ」
「なんとなく?」
「なんとなくで聞くなよ」
僕は、ヨタのいい加減さに呆れていた。
「でも、あっち喜んでいるぞ?」
僕は、そう言うヨタが指す方を見た。そのにはトリップしかけている結がいた。
しかし、結は自分に視線が集まったことをいち早く察し、取り繕おうとしていた。
「そ、そんなことは、な、ないよ?」
と、声が震えていて全く取り繕えていなかったが、話が進まなそうだったので、無視することにした。それに、それ以上踏み込んだら、変なことを聞きそうだったからやめた。
「それより、なんで今日、僕は呼ばれたんだ?今まではそんなことなかったのに」
「無視?!」
無視されたことが意外だったのか、結は大きな声を出していた。
「そのことなんだけど、とりあえず歩きながらにしないか?」
ヨタも結のことは無視していた。結がちょっと可哀想だが、気にせず歩きながら話を進めることにした。
「そうだな、それでなんで僕に声をかけたんだ?」
僕たちは、歩きながら話を進めた。時々、結がついて来ていることを確認するのは忘れずに行う。
「それはちょっと付いて来て欲しいところがあるんだよ」
「その付いて来て欲しいところって、どこだよ」
「それはダンジョンだよ。知ってるだろ?」
「ああ、知ってるよ。でもなんでダンジョンなんだ?」
ほとんど行ったことはないけど。まあ、戦闘をしてないから当然と言えば、その通りなんだけどね。
でも、なんでダンジョンで助けが必要なのかわからなかった。今日まで僕を頼らずやってたのだ、何か理由があると思った。
「なんでって、長いだろ?だから、回復が足りないんだよ」
「ああ、そう言うことか。つまり、僕に回復役として付いて来て欲しいってことか」
「そういうこと」
まあ、別に回復役で付いて行くことは問題ない。理由がわかって良かった。でも余計わからなくなったことがあった。
「別に回復役で付いて行くことは良いんだけど、なんで今までは僕に助けを求めなかったんだ?」
たとえ回復を必要としなくても、万が一に備えて、回復役はいた方が便利だ。
「それは、零に迷惑をかけたくなかったんだよ」
「迷惑?」
「そうだよ。俺たちに付き合ってまた最初からってのもつまらないだろ?それに全部零に頼ってばかりなのも良くないし。頼ってばかりだと俺たちも上達しないから、最初くらいは俺たちだけでやって、できるだけ零に頼らないようにしたかったんだよ」
「そ、そうなのか」
しっかりと考えていることに驚いた。もっとテキトーな理由で僕のことを頼ってないんだと思ってた。それに、僕がお節介で手伝おうとしていたのが、なんか恥ずかしく感じた。
「まあ、結局頼ることになったんだけど」
「それは仕方ないだろ」
自分じゃできないこともでてくるんだから、気にしなくても良いと思った。
定期的に結がちゃんと付いて来ているか確認したが、離れることなくずっと付いて来ていた。ただ、なんで話に混ざらないのかは気になった。しかし、それに触れない方が良さそうだったので、触れないでおいた。
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