第138話 雇用 5
翌日、僕は午前中補習に行き、午後はまず3時までゲームにログインしていた。それは、クロエさんに言ったことを守るためだ。2人の課題は午後3時過ぎから手伝うことを伝えておいた。
課題を少しでもやっておいてくれると助かるが、まあ、やらないよな。
僕はそんなことを思いながらも、ゲームを優先させた。
僕がゲームにログインしたのは、午後の2時になる少し前だ。その時間なのは、2時より前にログインするとまだ朝も早い時間だからだ。さすがにそんなに早くには来ないだろうということから、2時にログインしたのだ。
それから僕は、ギルドに向かった。連れて来て欲しいと言ったが、全然時間がないことがわかったから、僕が迎えに行くことにしたのだ。
僕がそう思い、店を出ると店の前に見知らぬ可愛らしい幼女が少ない荷物を持って立っていた。服装はメイドみたいな格好をしていた。髪は黒く長く、しっかりと手入れされているみたいで綺麗だった。思わず、見惚れてしまうほど可愛かった。
僕はいきなりのことに驚いて、動けないでいるとその幼女が話し出した。
「店長さん、おはようございます」
「店長?」
僕は見知らぬ幼女から、言われるはずのない単語を言われ、首を傾げると、その幼女は、驚いていた。
「え?店長じゃないんですか?」
なんか、話が噛み合ってないようだったから、一旦落ち着いた。それから僕は、その幼女に名前を聞いた。
「えーと、君は誰?」
「あ、ごめんなさい!」
その幼女は何かに気づいたのか、腰を90度曲げ、謝ってきた。
「え、謝ってもらう必要はないんだ、けど」
僕は、申し訳ないことをしてしまったと思い、慌てて否定した。
「私みたいなスラムの人を雇ってくれると言ってもらったのに、失礼でしたよね。ごめんなさいです。私の名前はあずさです。今日からよろしくお願いします」
僕は、それを聞いてようやく目の前の幼女、あずさが一昨日来ていた幼女だと言うことに気づいた。一昨日は見間違うほど綺麗になっていたから、最初は全然気づかなかった。
「あぁ、一昨日僕が採用した子か。前とは比べられないくらい変わったから、わからなかったな」
「それは、店長さんやクロエさんのおかげです。ありがとうございます」
「いや、僕はお金を出しただけだし。必要なことだったから、お礼なんて必要ないよ。それより、その店長さんって呼び方じゃなくて、名前で呼んで欲しいんだけど」
「わかりました。それじゃあ、零さんで」
そんなこんなで、あずさを雇うことになった。
僕は、早速仕事をしてもらうために店の中にあずさを入れた。
あずさを入れながら、僕はあることが気になっていた。
「そういえば、あずさっていつから店の前にいたの?」
「えーと、昨日の夜からです」
「え?」
僕は、信じられないことを聞いて、再び止まってしまった。しかし、少しずつ状況がわかると僕はあずさに迫っていた。
「あずさ!」
「は、はい!」
あずさは僕の口調に驚いたようで、姿勢を正した。
「体とかは大丈夫か?!」
「え?」
「だから、体は大丈夫なのかって聞いてるんだよ!」
「はい、いつも通り元気です」
「いつも通りって、辛くないのか?」
「はい、全然辛くないですよ。それに今日は、これだけ服が着れてますから、普段よりは断然体調は良いですよ」
「普段って、一昨日みたいな薄い格好なのか?」
「はい、そうですよ。あれに比べたら、全然平気ですから」
僕はだんだんと聞いていられなくなっていた。
「あずさ、今日の仕事は無しだ。今日は、しっかりと体を休めること、いいね?」
僕は、そう言っていた。
「え?でも——」
「いいね?」
僕は有無を言わさないような口調で言った。
「わかりました」
僕は、あずさを部屋の方に連れて行った。2階にある一部屋を使わせるつもりだ。その部屋は4畳ほどで、ベットと机くらいしか置いてない質素な部屋だ。ベットや机は、先日買っておいた。
僕がその部屋に連れて行くとあずさは驚いていた。
「あの、零さん」
「ん?なんだ?」
「この部屋を使っていいんですか?」
「ああ、ベットも机もおまえの好きなように使っていいぞ」
「そんな、私なんかに部屋なんて、必要ないですよ。私は廊下で充分なくらいです」
僕は、その言い方にイラっときたから、僕は、また命令口調で言った。
「おまえの部屋はここだ。それ以外はない。それに廊下に居られる方が邪魔だ。それと今日はベットで寝ること、いいな?」
「私にそんな気遣い必要ありません」
「ベットで寝ること、いいな?」
「だから、私にそんな——」
「いいな?」
僕は、あずさの言葉に被せる形で、言い聞かせた。あずさもようやくわかったくれたようだ。
「わかりました」
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