第139話 雇用 6
それから、僕はあずさに仕事のやり方を教えることにした。そのため、荷物を部屋に置かせ、店の方に連れて来た。
「まあ、今日は休みだが、明日から働いてもらいたいので、今日のうちに仕事の内容を覚えてもらう」
「はい!」
「最初にやることは、店のドアの前ににあの看板をかける」
僕はそういいながら、ドアの近くに置いてある看板を指差した。
「はい!」
「準備することは、このくらいかな」
「あの、掃除とかはしなくていいんですか?」
「あ、そうだな。時間があれば、やってもらいたいな」
僕は、店の掃除なんてやらなかったから、全くそのことに気づかなかった。まあ、地下室は、掃除していたが。
「わかりました!」
僕は、そんなあずさの元気の良い返事を聞きながら、次の指示を考えていた。
「ここでの仕事は、店番をすることが主にやることだ。売るものも、ポーション系のものしかない」
僕は、そういいながらいくつかのポーションを出して見せた。
しかし、あずさはポーションを売ることを知らなかったのか、すごく驚いていた。
「あの、ポーションを売るんですか?」
「ああ、そうだが?」
「そんな!私には怖くて持てません!」
「いや、怖いって」
何が怖いのかわからなかった僕は、ポーションが安全ということを証明するため、あずさに向かって放り投げた。
あずさは一度はポーションを掴むも取り損なった。あずさは必死に掴み直そうと手を伸ばしたが、間に合わず、ポーションの瓶床に落ち割れ、ポーションは床に溢れてしまった。
僕は、投げなければよかったと反省しながら、あずさに声をかけた。
「あずさ!大丈夫か?」
見た所、怪我はしてないようだった。だから、大丈夫だろうとは思っていたら、予想外の答えが返ってきた。
「ごめんなさい」
今にも消えてしまいそうな小さな声で、あずさはそう言った。
「ごめんなさいって、僕が投げなければこんなことにならなかったんだから、あずさが謝る必要なんてないぞ?」
僕は、そうあずさに声をかけたが、あずさには聞こえてないようだった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!なんでもするので許してください!」
「いや、だがら僕が悪いんだから気にしなくていいよ」
「私が、取り損なわなければ、高価なポーションを無駄にすることもなかったんです!」
今度はちゃんと聞いていたようだった。僕には気になったことがあった。
「いや、別にそのポーションなんて高価じゃないぞ?」
「そんなはずありません!ポーション1つ作るにもかなりの時間を使うと聞きいたことがあります!それに1人で1日に作れるポーションは100本が限界とも聞きました!そんな貴重なものを私は無駄にしてしまったんです!だから、私には責任を取る必要があるんです!」
あずさはすごく力説してくれた。しかし、言っていることを僕は正さないといけないと思った。
「いや、力説してくれているところ悪いんだけど、そのポーション、本当に手間もかかってないし、お金もかかってないんだよね」
「そんなのは嘘——」
「ああ、もう、いいから見てろ!」
あずさがまだ反論してくるので、実際に見せてみることにした。
僕は、あずさの言葉を遮った後、ポーションを複製した。その光景を見て、あずさは言葉を失っていた。
僕は、それからどんどんとポーションを複製していった。
あずさが少し落ち着いたところで僕は、あずさに言った。
「僕は、ポーションを簡単に作ることができるんだよ。1日に1万本はポーションを作ることができるんだ。だから、あずさが気にすることなんてない」
あずさはポカーンとしていたが、僕にもこの後用事があるので、あずさにはすぐに正気に戻ってもらい、仕事内容の続きを話した。
「ポーションがなくなったら、その日の仕事は終わりだ。ポーションの予備は違う部屋に置いておくから、そこから持ってくるように」
そういい、その置いておく部屋も教えた。
全部聞き終えたあずさは僕に質問をしてきた。
「あの、零さん。このポーションってどのくらいするんですか?」
「ものによって違うが、1本100ゴールドだが?」
「あのー、十分高価な気がするんですけど」
「僕はもっと安くても良いと思っているんだけど、安くし過ぎると他の店のものが売れなくなるから安くしないでくれって頼まれてるんだよね。だから実際はそんなに高くないよ」
「あ、はい、わかりました。それと、ポーションの見分けるにはどうしたらいいですか?」
「ああ、そうか、わからないのか。それなら、僕がわかるように分けておくよ」
「わかりました」
こうして、仕事内容を教えることは終わり、あずさには部屋に戻ってもらった。僕は自室に行き、ログアウトした。
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