第179話 手伝い 4
「零さん、おはようございますっ」
気がつくと、少し明るくなっていて、あずさが起きてきていた。
「あ、ああ、おはよう」
ずっと集中して、ポーションの複製をしていたため、一瞬頭が回らず、少し間ができてしまった。それでも何とか、挨拶を返すことはできた。
あずさは、僕に挨拶をすると、すぐに準備を始めた。僕もあずさの邪魔にならないように気をつけながら、ポーションの複製を続けた。
あずさは黙々と準備を進めていった。
お互い、しばらく無言で作業をしていた。
すると、「コンコン」と扉を叩く音が聞こえた。
「はーいっ」
あずさはいち早くそれに気づき、返事をして扉の方に行った。
僕は、誰が来たのか気になったのもあり、その場で手を止め、あずさを目で追っていた。
あずさが扉を開けると、そこにいたのは、
「あ、お母さん」
あすかさんであった。
予定通りに来たので、僕はあまり驚くことはなかった。あずさもあまり驚いている様子ではなかったので、わかっていたのだろう。
「遅くなってしまいました。申し訳ありませんでした」
「いや、気にすることじゃないですよ」
「お気遣いありがとうございます」
あすかさんは僕にお礼を言ってきた。
特にお礼を言われるようなことではなく、当たり前のことを言っただけなので、その言葉は不要なのである。でも、こんなことを言ってもたぶんお互いに譲らないと思う。そんなことになったら、しばらく話が終わらず、時間だけが過ぎてしまう。そうなってしまえば、時間の無駄だ。
僕はそうならないために、それ以上言わないようにした。
あすかさんは、すぐにあずさと同じように準備を始めた。あすかさんはあずさに聞きながら、準備を進めていた。
その光景を見てますます、自分の居場所がないなと感じた。
僕は端の方で、ポーションを複製するしかなかった。
準備が終わり、店を開けるとすぐに人が入ってきた。あすかさんは、最初こそ戸惑いながらやっていた。しかし、しばらくやっていると慣れたのか、戸惑うことなく、こなしていた。
改めてあすかさんの能力が高いなと思った。
そのことに気を取られていて、自分のやるべきことをおろそかにしてしまい、手が止まっていた。そのせいで、2人から急かされてしまった。
そこからはずっと集中してできたが、終わる頃には、自分の無能さと3人でやるには狭いということがわかったので、良かった。
今日のやることは終わったので、後のことは任せて、僕はギルドの方へ向かった。今日は忘れていたわけではなく、あすかさんがいつ来るかわからなかったため、あえて行かなかったのだ。
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