第180話 手伝い 5
ギルドでポーションを売った後、僕は店へと帰ってきていた。帰って来る頃には日はおちかけていた。
店に入ると、誰もいなかった。
普段なら、あずさが片付けをしていたりしているはずなのだ。
あずさが必ず店の方にいる必要なんてないんだから、いなくても不自然なことはない。それでも僕は珍しいと思わずにはいられなかった。
そのことを考えても答えなんて出ないし、別に不都合があるわけでもないで、あまり気にしないことにした。
僕は誰もいない店を奥に向かって歩いて行った。
薄暗い、誰もいないはずの店で顔に何かが当たり、僕は後ろに倒れてしまった。いきなりのことで僕は驚いた。
ただ、襲われるとかそういうことではなかった。最初、顔に当たっただけでそれ以降は、何もなかったからだ。
僕はその当たった物体が何か気になり、上体を起こし、腹の上に乗っている物体を見た。そこにいたのは、ヒールストーンスライムだった。
ただ、なんでヒールストーンスライムがここに取り残されているのか気になった。普段はあずさの頭の上に乗っていて、乗った後、ほとんどそこから離れているところを見たことがなかったからだ。
あずさがいなければ、ヒールストーンスライムもいないと思っていた。益々、あずさがどこに行ったのか気になった。店の中、奥の居住空間にいれば、おそらくずっとあずさの頭の上に乗っているはずだ。だから、こんなところにいるとは考えられなかった。そのため、あずさはここにはいないということがなんとなくわかった。
ここにいないとわかったからと言って、どこにいるかなんて想像もできなかった。
とりあえず、放っておくわけにもいかないので、あずさが帰ってくるまでは、僕が抱えておこうと思った。下手に外に出して人を襲ってしまったら大変だから、外に出ないようにしたかったのだ。
ヒールストーンスライムを抱くと、ひんやりとしていて気持ちよかった。抱くことは今までしてなかったので、そのことは知らなかった。それに案外硬かった。まあ、ストーンというだけのことはある。
抱いたのは良いのだが、特にやることもないことに気づき、僕は、ヒールストーンスライムを抱いた状態で、ポーションを複製することにした。ポーションはかなり余ってるいるから、今複製する必要はない。でもあずさにヒールストーンスライムを預けるまではログアウトするわけにはいかないので、仕方なく複製することにした。
それ以外にすることがないというのが、正しいだろうけど。
移動するのも面倒になり、僕は店の床に座った状態で、ポーションを複製し始めた。誰も来ないだろうし、問題ない。床もあずさがしっかり掃除をしてくれているようで、汚れやホコリが無く、服が汚れることはなかった。
ヒールストーンスライムは以外にも抱き心地が良かった。ひんやりしていて気持ち良かったし、抱いていると少しずつだが、柔らかくなっていた。そのこともあり、ずっと抱いていられた。
僕は時間を忘れ、あずさが帰ってくるまで、床に直接座り、ヒールストーンスライムを抱きながら、黙々とポーションを複製していた。
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