第181話 手伝い 6
しばらくポーションを複製していると、あずさとあすかさんが帰ってきた。
「零さん、帰っていたんですね」
「ん?ああ。おかえり」
「はい、ただいま帰りました!」
僕は、下を向いて集中していたため、すぐには気づくことができず、少し間ができてしまった。
ヒールストーンスライムもあずさが帰ってきたことに気づいたのか、僕の手の中から飛び出し、そのままあずさの頭に収まった。やはりそこが良いのかな?
ただ、ヒールストーンスライムが居なくなってしまったことで少し寂しくなった。
「零さん、ひーちゃんのことを見ていただき、ありがとうございます!」
あずさは僕にお辞儀をしながら、お礼を言った。
「別に僕は何もしてないよ。それに、僕が世話をするべきなんだし、気にしなくて良いよ。むしろ、いつも世話をしてくれてこちらこそ、ありがとう」
「と、当然のことをしたまでです!それに私が面倒を見ると言ったので、お礼を言われるようなことじゃありません!」
僕は、相変わらずだなと思った。ただ、これ以上何か言っても、お互いに譲らないと思うので、僕から何か言うことはやめた。
「そういえば、今日はどこに行ってたんですか?」
僕は、それが気になっていたことを思い出し、聞いてみた。
「今日は、買い出しに行ってました」
あすかさんが僕の質問に答えた。
僕は、「まあ必要なものもあるから当然か」と思った。それに僕は、帰って来た時にいなかったことが気になっていただけで、何をしていたかまでは別に気にしてはいなかった。
「買い出し?」
ただ、あずさが買い出しに行くところなんて見たことがなかったから、今までどうしてたのか気になり、そう聞いた。
「はい。いろいろと必要なものがあったので、買ってきました」
僕のつぶやきにあすかさんが答えた。
「そうなんですか。でも、あずさはあまり買ってなかったような?」
「はい、そうみたいで、最低限のものだけ買って、ほとんど何も買ってなかったんです」
「え?」
僕はあずさの方を見ながら、そう言った。
僕があずさと目が合うと目を逸らされてしまった。そのことにショックを受けていたが、それよりも気になっていたことがあった。
「あずさ、なんでお金を使わないんだよ」
それは正直な疑問だった。普通、お金をもらえば、使うのが当然と言えば、当然のことだろう。ある程度貯めるかもしれないが。それなのに、使わないと言うのはわからなかった。元々、使ってないとは思っていたが、僕の予想以上に使ってなかったらしい。
ほんとあすかさんが来てくれたおかげで、あずさに関する心配がある程度、なくなった。
「それは、零さんがいけないんです!」
「なんでだよ?!」
いきなり、人のせいにされて、僕は驚いて大きな声を出してしまった。
「零さんが私を甘やかすからです!私たちは、もっと少ない賃金でも大丈夫なんです!それなのに、こんなに多いから使い辛いんです!」
「いや、それなら、工夫して使えば良いじゃないのか?」
「じゃあ、余ったら、零さんが預かっていてください」
「それは、嫌だ」
そんなに持っていても困る。今でもほとんど使ってないから増えていく一方なのだ。これくらいしか、お金の使い道が僕にもないのだ。だから、それを断たないで欲しいのだ。
それから、あずさには何とか今のままで良いと言わせることができた。
僕は、もう少し遠慮がなくなればな、と思ったが、それがいつになるのかはわからなかった。
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