第187話 3人でダンジョン 5
結とヨタはダンジョンをあっさりと攻略していった。
まだ下層だからということもあるだろうが、今のところ、僕が必要になるような場面はなかった。戦闘においても、サポートにおいてもだ。
むしろ僕が2人の足を引っ張っている状況になっていた。というのも、このダンジョン、おかしいくらいに罠だらけなのだ。1つの通路に複数の罠は当たり前というくらい、そこら中にある。
僕が罠を発動させて、それに対処すること以外は順調に進んでいる。
そのせいでもう1時間くらいは入っているが、まだ3層にとどまっていた。
罠は床がなくなるものや矢などが飛んできたりして攻撃してくるもの、天井が崩れたり、壁が迫ってきたりなど多種多様であった。まだ3層なのにかなりの量の罠があり、これから、進むのが嫌になるほどであった。
そんなことを考えている間にもまた罠を発動させてしまったらしく、目の前から矢が迫ってきていた。
前を先導している結とヨタはそれをかろうじて躱していた。僕は、高速処理のスキルで難なく躱すことができていた。
「零、またかよ」
ヨタはこちらを向き、呆れながらそんなことを言ってきた。
「またかよって、しょうがないだろ。どこに罠があるなんてわからないんだから」
「わかるだろ?!よく見れば少し違うところがあるだろ!」
「うーん」
僕は言われた通り、じっくり周りを見回したが、他と違うところはわからなかった。正確には、おかしなところはない、だろうけど。違うところなんて、全く同じように壁ができていたりはしないのだ。ところどころ汚れていたり、ひびが入っていたり、床の石畳もでこぼこでむしろ同じところがなく、全て違うように見えた。
だから、僕は胸を張ってこう答えるのだ。
「わからん!」
「何清々しく言ってるんだよ!少しくらいわかれよ!」
「はは、まあ、ほぼ全て罠を発動させるのはやめて欲しいかな。私たちもそれだと辛いから」
結は疲れたのか、少し声に張りがなくなっていた。
「そうか、それはすまん。気をつけるよ」
さすがにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないので、気をつけていこうと心に決めた。
「気をつけるって、お前、今までどうやってダンジョンを攻略してたんだよ」
「どうって、普通に、だけど?」
僕はただ何も考えずにダンジョン進むだけ攻略してきたから、なんて答えて良いかわからず、そんな答えになってしまった。まあ、ダンジョン攻略なんてほぼやってないから、それがたまたまだったかもしれない。
「普通ってなんだよっ!普通に罠を発動させながら進んで行ったのか?!」
「いや、そんなわけないだろ。罠に当たったのなんか今回が初めてだよ」
だからこそ、僕も戸惑っている。こんなに罠があるとは思いもしなかったからだ。
「なんで!今回だけこんなに引っかかるんだよ!おかしいだろ!」
「僕だっておかしいって思ってるよ。ただ、原因がわからないんだよ」
「原因って、お前がわざと罠を発動させてるんだろっ!」
「そんなことするわけないだろ!なんでそんなことが言えるんだよ!酷いじゃないか!」
僕は、ヨタのその発言を許容できなかった。僕もそこまで酷いことはしない。だから、決めつけてくることが許さなかった。
「まあ、私も零がわざと罠を発動させているとしか思えないけど」
「ゆ、結まで?!」
結まで僕を疑っていることに僕はショックを受けた。
「だって、罠を感知するスキルがあるのに罠に引っかかるって、わざととしか思えないでしょ?」
「へ?」
僕は、結のその答えに疑問しかなかった。
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