第108話 準備 8

勧誘が激しくなった日の夜、僕はジジィのところでポーション作りを頑張っていた。


後でわかったことなのだが、朝にあった勧誘は、何もただ増やすのが目的ではなかったらしい。データを失った人を再び勧誘するのが目的だったらしい。


もしかしたら、前にいたグループから変える人もいるかもしれないからだそうだ。だから、前からいた人を他に取られないようにするのも目的にあったらしい。


しかし、一向に高性能ポーションは作れない。どんなに頑張っても10%までしかできないのだ。まあ、1%のときに比べれたら10倍にもなっているんですけどね。それでもジジィの作った15%のポーションと比べると霞んでしまうのは事実だ。


ハイポーションは30%っていう壁がありますし。まあ、ハイポーションの方は一切手をつけてはいないですけど。まずは、ポーションをしっかりと作れるようにしなければならないのだ。


ジジィに聞いたところで何も教えてはくれない。その割に、ジジィはよく話しかけてきたりする。それに答えるのがほんとうにめんどくさい。しかも、思っていることと違うことを言うと鋭く見抜かれてしまう。そのため嘘なんてつくことができない。これもジジィとの会話をめんどくさくしている理由でもある。


そして、今日もジジィのどうでもいい話に付き合っていた。


「そういえばお主、なんでワシのところにいちいち訪れるんじゃ?」


「そんなの…………なんでだろ?」


「ワシが聞いているんじゃけど?」


言われてみれば、理由らしい理由はない。強いて言えば、作り方を教えてもらえるかもしれないという理由だったりするのだが。


まあ、追われているから逃げているというのもそうなんだけど。


「別にここじゃなくても良くね?」


考えた末に出たのがそんな答えだった。


「お主、意外とヒドいことを言うんじゃな」


「そりゃあ、こっちが教えて欲しくても全然教えてくれないからだろ」


「確かにそうじゃが。教えるようなこともないんじゃよ」


「コツとかでもいいからさあ」


「そんなこと言われても、ワシもたまたまできたものだし。それにこれ以外作れたこともないし」


今更、かなり重要なことを言われたような気がする。


「ジジィ!それしか作れてないのかよ!」


「ジジィとはなんじゃ!ちゃんと師匠と呼ばんか!」


「お前なんかジジィで充分だよ!」


そう言って僕は口を閉ざし、黙々とポーションを作っていった。しかし、ジジィはそのことが気に入らなかったらしく、こんなことを言ってきた。


「なんでお主は帰らないんじゃ!さっさと出て行け!」


「なんで、そんなことになるんだよ」


「ふん!ワシのことを師匠と呼べないやつを置いておくほど甘くはないわい!」


そんなことを言ってきたので、大人しく帰ることにした。


もうこれ以上来ることはないだろうし。それに、たまたまなら、作っているうちにできるだろ。まあ、何時になるかはわからないけど。


そして僕が立って家から出て行こうとしたところで、ジジィがこんなことを言ってきた。


「え?本当に帰ってしまうのか?まだ居てもいいんじゃよ?」


本当にめんどくさいジジィだ。寂しいならそう言えばいいのに。


「本当にどっちなんだよ!」


「だから、もう少し居てもいいんじゃよ?」


そんな可愛く言っても誰も得しないから。


それにこれ以上は精神的にあれなんで、そのままいることにした。


それから、またくだらない話をして過ごした。



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