第116話 開業 6

変なスライムができた後も今までと変わらず、ポーションの改良を重ねていたが、全然成果が出ていなかった。店を開ける準備もやらなければならないため、やることが多くて大変だ。


そのこととは関係ないのだが、ヒールストーンスライムを水に浸けてみようと思ったのだ。なぜかポーションができるみたいだから、本当にできるのか試しておきたいというのがあるからだ。


まあ、できたとしても質の高いものはできないと思うけど。


しかし、ヒールストーンスライムが意外と大きいため、入れられる容器がないのだ。だからそれも確保しなければならない。


1本分でいいのなら、このスライムを作った時に使用した容器を使えば、できないこともない。


まあ、試しに作ってみるだけだし、そんなに大きい容器が必要なわけでもないため、小さな容器に水を入れ、ヒールストーンスライムをその水に浸けておく。浸けておくとは言いにくいけど。


ヒールストーンスライムを水に浸けた後は、時間がなくなってしまったので、そのままログアウトをした。




ゲーム内でその翌日。


僕は、1日スライムを浸けておいた水を確認してみた。


水はスライムに吸われることもなく、ちゃんと残っていた。それに水も最初の透明からポーションの色である緑色になっていた。


僕の期待が高まる中、その水を鑑定してみた。



・スライム水 レア度1

スライムの体液が十分にしみ出した水。

飲んだり、患部にかけたりして使用する。

HPを10%だけ回復する。

飲んで使用すれば効果が20%高くなる。ただし、ドロッとしているため飲むのは困難。喉に詰まらせる使用者もいる。味はポーションよりひどい。



だから、なんで僕の予想をことごとく外してくるんだよ!それにスライム水ってなんだよ!確かに少しドロッとした見た目をしているけど!


それよりも喉に詰まらせるってどんだけ固形なんだよ、これ!それに味もひどいって——まあ、スライムの入浴水と思えば、確かにひどいよな。


というか、僕、騙されてるよね?


確か、ヒールストーンスライムの説明にはポーションが作れるって書いてあったはずだよね?なのになんでポーションができないで、スライム水ってものができるの?おかしいのね?


それとも僕がやり方を間違えたのか?


それはわからないが、とりあえずこのスライム水でも飲んでみますか。どれほどひどいものなのか、気になったからだ。気になってしまったのだ。


正直、飲みたくない。誰かに押し付けたい。でもそれで死なれちゃこっちが大変だから、自分が身を以って体験しなければいけないと思ったのだ。


覚悟を決め、僕はスライム水を一気に口の中に流し込んだ。


その瞬間、僕はスライム水を吐き出そうとした。しかし、吐き出すことはできなかった。


理由は簡単。スライム水は粘性が強く、僕の口内にくっついてくるのだ。そのせいでまともに吐き出すことすらできない。


そのうえ、最初だけは飲み込めたので、スライム水が喉の位置で止まってしまったのだ。そのせいで呼吸すらすることができなくなっていた。


僕はスライム水を何とか出そうと必死だった。そのため、スライム水の味なんて味わっている暇はなかった。


それからなんとかして、スライム水を吐き出すことができた。


そして、僕の中でスライム水は絶対に飲むものじゃないと決まった瞬間だった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る