第52話 討伐イベント 8

討伐イベントまで僕はいろいろなクエストをやって過ごした。


そしてついに討伐イベント当日の4月30日になった。


僕は30日に日付けが変わる前に寝てしまった。


でも僕は慌てず、いつも通りに起きて、朝食をゆっくり食べ、そして両親が仕事に行った後、ゲームにログインした。


ログインするといつも宿ではなく、またあの真っ白な空間に出た。


「プレイヤー諸君久しぶりだ。今回は今日の討伐イベントのモンスターを発表しようと思う」


おお!待ってました!


「それで今回のイベントの討伐モンスターは——」


おお!


「討伐モンスターは——」


いいから早く発表しろよ!


「討伐モンスターは——」


だからそういう風に溜めなくていいから早く発表しろよ!


「討伐モンスターは——魔王だ!」


え?もうラスボス的なのを出しますか。うーん、どうなんだろ?


「それで今回のイベントが始まって7時間、つまり21時間が経った今現在、1000人以上のプレイヤーが挑み、ほぼ全員が死んでいる。それと全プレイヤーで倒せるのは1体だけだから、1体倒した時点でイベントは終了だ」


マジか。もうそんなに挑んでいるのか。


それなら、ネットで調べてからの方がよかったな。というか、それだけで挑んでも勝てないのか。


それに、1体しか倒せないのか。なんか不親切だよな。


「それと新機能追加に伴って、新しくキャラが作れなくなっている。一応明日には終わるため、今日だけだ。だからプレイヤーの諸君死なないように」


そして映像は終わった。


あー、うん。だったらこんなイベントやるなよって話だよな。ってことは1000人くらいの人はもう今日はできないってことか。


なんというか、どんまい。


それに僕には関係ないし。どうせ死なないんだから。


まあ、僕が倒しますけど。だから他の人に譲ってやらないとな。そうしないと不公平になりかねないし。


どうせ最後の数分で倒せるだろうから、終わり間際で挑めばいいか。


そんなことを考えていたらいつの間か、白い空間から宿になっていた。


まあ、とりあえずギルドの方にでも行きますか。



ギルドに行く道はかなり騒がしかった。魔王が出たことに住民たちが騒いでいるようだった。


そのうるさい道を進み、ようやくギルドに辿りついた。


ギルドの方もかなり人で溢れかえっていた。


いろんなところで聞こえてくるのは、メンバーの募集だった。より多くの人を集めて倒しに行きたいらしい。まあ、何人で挑んだかはわからないけど、1000人も死んでるんだから当たり前か。


でもこの街だけで集められるのも限られているけど、イベントをやりたい人は他の街から帰ってきているだろうからいいのか。


僕は、メンバーを集めている人たちの間を抜け、クロエさんのところまで来た。


こっちの受け付けの方もそれなりに混んでいてしばらく待つことになった。


ようやく僕の番が回ってきてクロエさんの前に立つとクロエさんがいきなり言ってきた。


「零さん」


「はい、なんですか?」


「魔王を倒しに行くとか言いませんよね?」


「まさか、言うに決まってるじゃないですか」


「はあ、やっぱりやりたいんですか」


「そりゃあ、そうですよ」


「はあ、わかりましたよ。ただし、無茶だけはしないでくださいね」


「わかってますよ」


いつものようにクロエは僕のことを心配してくれているけど、それ自体不要なんだよな。まあ、クロエさんが信じてくれないのが悪いんだし、それに別に知ったところでって感じはするしね。


それにランクが上がって、ほんとに緩くなったよな。まあ、ドラゴン討伐も含まれているんだろうけど。


個人的にこれは楽だからいいんだけど。


「あ、でもまだ討伐には行きませんよ」


「え?そうなんですか?」


「はい、予定的には明後日に行こうかと思っているんですよ」


「そうなんですか。よかった」


「ん?何がいいんですか?」


「だって、後の方が絶対に弱ってるじゃないですか」


「ああ、確かにそうですね」


「だから、少し安心しただけです」


「そうですか」


「はい。あれ?じゃあなんで今日来たんですか?」


「ああ、いつも通りポーションを売りに来たんですよ」


「ありがとうございます。それに今日はいつもよりも多く売って欲しいですしね」


僕はクロエさんとモンスターの鑑定をしたところに行き、10,000本のポーションを取引した。


10,000本も売ったのに、まだアイテムボックスの方には余りがある。


うーん、作り過ぎたかな?それならしばらくは自重しようかな?


そんなことを考えながら、僕はギルドを出て、宿に戻り、ログアウトした。


結局、魔王は2日目も倒せずに終わった。ちなみに1日目、と言っても半日しかなかったけど、僕はログインしないまま終わっていた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る