第191話 3人でダンジョン 9
だいぶ上層に来たのか、わからないが罠が発動することはほとんどなくなっていた。これも2人の通って後をほぼ正確に通っているからだ。それでも、間違えて違う場所を通ってしまうことはまだあった。そのせいで罠を発動させてしまっていた。
発動させてしまっている回数が減ってきているためか、結とヨタから咎めらることはなかった。僕は最初ほど、2人の足を引っ張ってないことに安心していた。
2人の後について進んで行くと、広い空間に出た。広さはよくわからなかった。でも、端の方まではよく見えなかった。天井は5メートルほどだ。
広くなったことで、ボス戦か?と僕は身構えた。僕が身構えるほどのことなんて、まず無いので、気にするだけ無駄なのだ。そもそも、僕が身構える必要がある場合はかなりヤバイと思う。僕が1人身構えながら、辺りを注意していた。
結とヨタを見ると、2人は今まで以上にリラックスしているように見えた。
「あれ?」
僕は、2人の様子から自分の思っていることが何かおかしいように感じた。
「ん?どうかしたか?」
僕の漏れた声を聞いたのか、ヨタが後ろを振り返って聞いてきた。
「いや、急に広くなったから。ここってなんなの?」
「ああ、そういうことか。ここは、簡単に言えば、休憩所みたいなところかな。まあ、見ての通り何もないけどね」
そう言われ、改めて辺りを見回してみると、たしかに何かあるようには見えなかった。ただ見回すと、人が何人かいるのが見えた。僕はこのダンジョンに入ってから初めて人を見たため、人が本当に来ていることに少し驚いた。
僕はヨタが嘘をついていて、本当は誰も来てないのでは?と少し思っていた。でもそれは違っていたため、僕は心の中でヨタに謝っておいた。面と向かって言うつもりはなかった。
「それより、これからどうする?」
「ん?どうするって何が?」
ヨタから質問されたが、僕はヨタの真意がわからず、聞き返した。
「ここに来るまでに結構時間がかかっただろ?」
「そうだな」
まあ、主に僕のせいだけど。
「だから一旦休憩を取った方が良いだろ?」
「ああ、そういうことか。それなら、確かに休憩した方が良いな」
僕はヨタの言いたいことがわかり、それに賛成した。気を張り続けて進んできたため、少し疲れた。だから、休めるのはありがたかった。
「それでなんだが」
「ん?」
「休むには、ここから出ないといけないんだよ」
「んん?」
僕はヨタの言っていることがよくわからなかった。理解はできるが、理解したくなかった。
「わかってると思うが、ダンジョンから出ないとログアウトできないだろ?」
(え?そうなの?)
僕は口には出さず、心の中でそう思った。思い返してみた。僕はダンジョンを途中でやめたことがなくそのことは知らないということがわかった。
「ここでも休めるが、見てわかるように何もないし、他人の目もあるからゆっくり休むこともできない。それなら、ログアウトした方が休めると思う」
「う、うん、確かに」
「そこで、どうする?ここで休むか、一旦ダンジョンを出てログアウトするか、このまま進むか?」
「ダンジョンから出るって来た道を戻るのか?」
僕は気になっていたことの一つを聞いた。
「いや、ここからならすぐに外に出られる。だからここまで来たわけだし。ダンジョンの途中だと、来た道を戻るしかないが、ここまでくればすぐに外に出られるからな」
なるほど、それでここに来るまで休むことを言わなかったのか。
「ダンジョンから出て、また始める時ってここからだよな?」
僕はもう一つの気になっていたことを聞いた。でも、こちらはなんとなく答えはわかっていた。
「いや、最初からだぞ?」
「ですよねー」
僕は今まで通ってきた道のりを思い出した。そこをもう一度通ることを思うと嫌になった。でも、疲れてるから休めるなら休みたい。
「そういうことなら、ここで休まないか?」
僕はそう言った。他人の目が気になるが、この際しょうがない。
「やっぱりそうなるよな。結もそれで良いな?」
「うん、私もそれで良いよ。もう一度零を連れてここまで来るのは大変だし」
「すみませんでした!」
僕は何度目になるかわからない、謝罪の言葉を口にした。
「本当に気にする必要なんてないからな」
「そうだよー」
「それより、早く休もうぜ」
「ああ!」
僕は2人に後をついて行った。
端の方に行き、地面に直に座り、僕たちは休んだ。その間、普段のように雑談をした。
やはり他人の目が気になってゆっくりは休めなかったが、少しは休めた。
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