第190話 3人でダンジョン 8

それから、しばらく進むと罠を発動させる回数は減ってきていた。ただそれに伴って、モンスターと多く遭遇するようになっていた。


僕が先頭になってからは、モンスターに遭遇する度、僕が倒していた。結とヨタを手伝っているはずの僕がすべてやってしまっていることに2人が気づき、罠も減ってきたこともあり、先頭を交代することになった。


2人が先頭になってからは僕が先頭の時よりもスムーズに進んで行った。罠が減ってきたこともあり、後ろに下がってからは僕が罠を発動させる回数は減っていた。


先頭を代わって、進行が安定してくると僕はあることが気になり、2人に聞いた。


「なあ、他のプレイヤーをあまり見ないんだけど、なんで?」


僕はほとんど店の周辺でしか行動しなかったし、他のプレイヤーに会わないようにして来ていたから、今までは気にすることさえなかった。でも、ここに来るまでにプレイヤーらしき人影は何度か目撃していた。しかし、ダンジョンに入ってからは、一切見ていない。


何人かとは遭遇してもおかしくはないと思ったのだ。


「ああ、それは、最短ルートを通ってないからだよ」


ヨタが僕に質問にすぐ答えた。


「ん?そうなのか?」


僕は2人が指示しているから、最短だと思っていたが、そうではないらしい。


「そうだよ。下層は普通駆け抜けるって言っただろ?」


「ああ、そうだったな」


僕は、そんなことを聞いたことを思い出していた。でも、それとどんな関係があるのかはわからなかった。


「それで、その最短ルートだと罠の数が今のルートよりかなり多いんだよ。まあ、場所も分かっているから、それを避けながら進めば、罠の数なんて問題にならないしな」


「う、うん」


なんとなく、ヨタの言いたいことがわかり、僕は冷や汗をかいてきた。


「それで、罠が多いから零、お前を連れてそこを通るのは無理だと判断してから、罠の多いところをできるだけ回避しながら、進んでいるわけだ。それに、罠を発動させる他のプレイヤーにも迷惑がかかるしな」


「申し訳ございませんでしたっ!!」


僕は、2人にとって完全なお荷物になっていた。それがわかり、僕は土下座をして謝っていた。


これ、完全に僕がいない方が良いような気がしてきた。


ほんと、よくこれで、2人に教えられると思った自分が恥ずかしくなった。なんとかなると最初思っていたが、それは間違いだった。


「だから、気にするなよ。別にできないことがあっても当たり前なんだし。だから、俺たちができないことをしてくれよ。俺たちは零のできないことをするからさ」


「ヨタぁ」


ヨタにしては良いことを言っていて、ヨタのことを見直していた。普段からは考えられないことだった。


「それにお前に関しては、もう諦めたから」


ヨタはそう言うと、僕から視線外した。


「ヨタぁ?!」


その一言が全てを台無しにしていた。僕の感動を返して欲しい。全部僕が悪いにしても、諦めるとは酷い。でもそれほど、僕がダメということもわかった。


「ほんとこれで、よくここまでやれてきたよな」


「ま、まあ」


僕はそれには正直に答えることができないので、言葉を濁すしかなかった。


話はそこで一旦終わり、進むことに集中した。それと僕は、わなの少ないところを通っていることがわかったので、その気遣いを無駄にしないために、今まで以上に注意を払って進んで行った。2人の通った場所しか通らないよう、2人の動きを見逃さないようにしていた。そのため、僕の動きはかなりおかしくなっていた。しかし、そのことに僕が気づくことはなかった。


気づいたとしても、直すとは思えなかった。直したら、罠を発動させてしまうかもしれないからだ。


僕は2人に迷惑かけないよう、2人の後を追って行った。

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