第196話 夏イベント 2

僕が目的の場所に着くと、そこには結とヨタの他に十数人の人がいた。


僕は結とヨタ以外にプレイヤーが来ているとは思っていなかったため、驚いて止まってしまった。


普通に考えれば、プレイヤーは多い方が良いということもわかる。けど、他のプレイヤーと関わりを持ってこなかった僕からしたら、そこに混じって行動するということは、難しい。


「ん?零、そんなところで立ち止まってないで早く来いよー」


僕の気持ちをまったく考えてない様子のヨタは、僕のことを見つけると早く来るように促してきた。


僕は、そこの集団に混じり辛いから、立ち止まっているわけで、少しは理由とかも考えて欲しい。


ヨタが、僕に声をかけたせいでそこにいる他のプレイヤーもこちらを向き、注目を集めてしまった。あまり注目されることに慣れてない僕にとっては居心地が悪かった。


ただ、いつまでも立ち止まって注目を集めるのも嫌なので、急いでそこへ向かった。ただ、走ることはしなかった。下手をしたら、大惨事になりかねないからだ。


僕はできるだけ悪い印象を与えないように気をつけた。


「こいつが、前から言ってた零です」


「ぜ、零です。よ、よろしくお願いします」


緊張で噛んでしまった。その後は挨拶と自己紹介を簡単に済ませた。


紹介ではいろんな人がいた。ここにいるプレイヤーのほとんどは最近始めた初心者だった。結とヨタと同じくらいから始めていて、初心者同士で仲良くなったらしい。


それと一部には、僕と同じようにβテストからやっているプレイヤーもいた。


全員が集まったようで移動を開始した。移動している間、周りから見られていることに気づいた。


最初は気にしないようにして、できるだけ結とヨタの近くから離れないようにしていたが、我慢できなくなり、思い切って聞いてみた。


すると、内容はヨタが僕のことを誇張して話していたらしく、周りのプレイヤーから注目されてしまっていたようだった。それは初心者だけではなく、βテストプレイヤーからも同様だった。


僕はヨタを叱りながら進んだ。ただ、ヨタは全然反省しているようではなかった。



目的の海に着くまで、僕は事前に調べておいたことを思い出して、復習することにした。


水中では陸上とは体の動かし方がだいぶ違うらしい。当たり前だが、体の動きは陸上よりかなり遅くなり、陸上よりも体力を使うということが書いてあった。他にも、息継ぎも必要で、ずっと水中に潜っていることはできないため、船などの休憩ができるものが必要になるとも書いてあった。海のど真ん中で海上に顔だけ出せば息継ぎはできるが、休憩はできない。ずっと顔を出し続けるだけでも体力を使い、疲れてしまう。そのため、休憩できる船のようなものが必要らしい。船である必要はなく、海の上に浮けば良いので、木の板でも良いらしい。


息継ぎをせずにずっと潜っていると、苦しくなり少しずつHPが減っていくと書いてあった。それも時間が経つにつれて減る量が増えるとも書いてあった。それなら、HPが多い方が有利だと思うかもしれないが、そうでもなく、割合で減っていくらしく、むしろHPが少ない方が回復しやすく、生き残りやすいらしい。まあ、ポーションなんかは水中では水ごと飲む羽目になって、大変らしい。そのため、水中では回復魔法が重宝されるともあった。


それを読んだ時、僕の場合、どうなるのか気になった。HPが減らない僕の場合、どうなるのかわからなかったのだ。



そんなことで僕たちが向かっていたのは、船を借りられる港だ。船は数少ないβテストプレイヤーの方々が用意してくれていて、僕たちはそれに乗せてもらえるというわけだ。


タダで乗せてもらえるわけではなく、それなりの対価を払わないといけなく、僕が大量のポーションを渡すことになってしまった。まあ、ポーションならと気にせず、大量に渡した。


対価を払うのは僕だけで、他のプレイヤーは初心者ということで、タダだったり、知り合いとかで特に何も要求はされていなかった。


そのことに少しだけ不公平だと感じたが、海に関しては何も知らないわけだからと割り切り、気にしないようにした。


まあ、僕の場合、HPが減らないことを利用して浜から泳ぐという方法もある。もし、本当にやばいと思ったら、テレポートを使って避難をすれば良いだけだし。


ただ、それだとつまらないと思うので、今回くらいは普通に楽しみたいと思い、そういうことはしないようにした。

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