第197話 夏イベント 3
僕たちは船に乗り、移動した。
しばらく船に揺られ、沖に出た。
陸が遠くに小さく見えているだけで、他には周りに何隻か同じように夏イベントを攻略しに来たと思われる船があるだけで何もなかった。
夏イベントはある程度場所が決まっているらしく、海に行けば良いというわけでもない。そのため、特定の場所だけに船が集まっているという、おかしな光景になっている。
僕たちが来た場所は比較的モンスターが弱く、最初にやるには最適の場所ってことを船の上でヨタから聞いた。
船に揺られるため、目的の場所に着くまでに何人か酔ったらしく、青い顔になっているプレイヤーもいた。僕は初めて船に乗ったが、酔うことはなかった。ヨタたちも酔っているようではなく、平気そうであった。
酔ったプレイヤーがいるため、何人かは船に残り、その他のプレイヤーだけで行くことになった。
僕は何をすれば良いかわからなかったため、とりあえず、海に入ることにした。早くやりたかったということもあり、その気持ちを抑えられなかった。それに別に死ぬこともないわけだから、何も問題はないと思った。
僕は、そんな甘い考えで何の用意もせず、そのままの装備で、海に飛び込んだ。
「ん?!零、待て——」
飛び込む前、後ろからヨタの声が聞こえたような気がしたが、気にせず飛び込んだ。
僕は、プールと同じ感覚で潜り、目を開けた。ただ、ボヤけて何も見えなかった。
ここまでは別に何も問題はなかった。水の中で目を開ければ、ボヤけた見えるのは当然だ。しかし、僕はここが「海」ということを忘れていた。
(ん?ぎゃあぁぁぁ!目が!目がぁぁぁ!)
目を開けると、水が目に入りしみたのだ。
痛みに悶えて、水中で暴れた。その時、息も吐いてしまった。
しばらく水中で悶えていると、段々と苦しくなってきた。苦しくなったことに気づき、空気を吸おうと、水中から顔を出そうと上に向かって水をかいて浮き上がろうとした。
しかし、かいてもあまり上昇しているようには感じなかった。それでも必死に水をかき、水面から顔を出すことに成功した。
何とかして水面から顔を出せたので、空気を吸おうとしたら、沈んでしまい、海水を飲んでしまい、むせてしまった。
「ゴホッ、たすけ、ゲホッ、て」
むせてしまい、うまく言えない。それに焦ってしまい、冷静さも失っていた。でもテレポートを使わなかったのは、まだ冷静だったと思う。まあ、使うことが頭になかったとも言えるが。
その後、何とか引き揚げてもらい、ようやく落ち着くことができた。
「大丈夫か?」
「は、はい。な、なんとか。ありがとう、ございます」
僕は引き揚げてくれたプレイヤーにそうお礼を言った。長い間呼吸できなかったため、息は荒くなっていた。
僕が船の上で倒れていると、ヨタと結が近づいてきた。目は痛くて開けられなかったので、閉じたままだった。
「大丈夫?」
「あ、ああ、だ、大丈夫」
結は僕のことを心配してくれているのか、気にかけてくれた。
「おまえ、バカだろ」
「う、うるせぇ」
一方でヨタは、僕のことをバカ呼ばわりした。でも実際、バカなことをした自覚はあるため、強く否定することはできなかった。
「まったく、なんで服着たまま、海に飛び込むんだよ。浮かないことくらいわかるだろ」
ヨタに言われて、そんな当たり前のことに気づかされた。
「仕方ないだろ、これを脱ぐわけにもいかないんだから」
と、苦し紛れの言い訳をした。脱げば、全裸とほとんど同じになってしまう。それは恥ずかしい。
僕が着ている服は露出の少ないもので布製だ。そのため、余計に水を吸ってしまい、重くなってしまったようだ。まあ、金属製の防具でないだけマシとは言えるが。
「まったく、全部脱がなくても良いだろ。上だけ脱ぐでも良いわけだし。それとこれも使え」
そう言われ、ヨタからゴーグルのようなものを受け取った。
水中で目を開けられなかったし、開けたとしてもボヤけていたため、それはありがたかった。それに少しでも軽量化する意味でも、ローブと上半身の服だけは脱ぐことにした。
女性はどうするのかな?って思って、痛い目を開け結を探した。結を見つけると、結は水着を着ていた。水着と言っても、競泳水着?スクール水着?そんなようなを着ていた。ビキニみたいに露出が多いものではなかった。ついでにヨタも海パンを履いていた。まあ、短パンとも言えなくはないようなものだけど。
「それ、どうしたん?」
「ん?これ?これは、このイベントの限定アイテムだよ。他にもいろんなものがあるみたい」
僕が聞くと、結がそう答えた。
基本的に今回の主な報酬は水着らしい。他にもあるが、多くのプレイヤーは水着が目当てらしい。
僕とは目的が違い、合わないなと思った。それに、あまり露出を多くしたくないというのが本音なので、水着を手に入れても使わないだろうと思った。
元々ゴーグルも水着もあるみたいなので、今回のイベントをやらなくても不都合はないようだった。でも種類はないようなので、今回のイベントで集めるプレイヤーはいるようだけど。
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