第185話 3人でダンジョン 3
「1つ聞いていいか?」
2人のレベルの高さに驚いて気づくのが遅れたが、よく考えたらおかしいところがあることに気づいた。
「ん?なんだ?」
「なんでお前と結のレベル差が50もあるんだ?プレイ時間は2人とも同じくらいだろ?」
「あー、それは……」
何か聞いてはいけないことだったのか、ヨタは口ごもってしまった。
「それは、ヨタが毎回先行してモンスターを倒しちゃうからよ」
僕の疑問にヨタが答えないためか、結が会話に混ざってきた。
「お、おいっ、言うなよ!」
「そのせいで何回も大変な目に遭ってるんだし、別に言っても良いでしょ?」
「そうだけど……」
ヨタは自分が悪いと思っているらしく、反省しているようで、落ち込んでいるのがわかった。
「まあ、先行するだけが原因じゃないらしいけど」
「ん?どういうことだ?」
僕は、結の言葉の続きが気になり、聞き返した。
「そ、それだけはやめてください!お願いしますっ!」
するとヨタがさっきよりも必死になって結を止めようとしていた。言葉使いが変わるほど嫌なことということはわかった。
「結、ヨタのことは気にしなくて良いから、続きをどうぞ」
「あ、うん、わかった」
「お願いだからぁ!」
ヨタの必死の訴えは、無視されて話が続いた。
「なんかほとんど休みを取ってないみたいなんだよね」
「ん?そうなのか?」
「えーと、まあ、はい」
僕は呆れていた。ただ、なんとなくわかっていたことだったので、なんでそこまでヨタが必死に隠そうとしたのかがわからなかった。
「少しくらいは休めよ」
「や、休んでるよ!」
「どのくらいだよ」
「言わないとダメか?」
「言え」
往生際が悪いので、強めに言った。
「えーと、飯の3食とトイレ、風呂、睡眠3時間くらいかな?」
「ほんとに休めよ」
つまりその時間以外はずっとログインしているってことだろ?どんだけやってるんだよ。呆れを通り越して、尊敬すらしてしまうほどやっていた。そりゃあ、僕よりレベルが高くても納得だった。
「ん?でも結もそれなりにレベルが高くなかったか?」
ヨタは150くらいと言っていたが、結だって100くらいと言っていた。つまり、結もそれなりにやっているということになる。
「わ、私はヨタより5時間くらい多くは休んでいるわよ」
「変わらんわ!」
僕でさえ、そこまではやってない。僕は大体1日で約3〜6時間程度だ。ゲーム内では約9〜18時間といったところだ。夏休みに入ってからは、10時間近くになることもあった。ゲーム内では30時間ほどだ。
それに比べて、結は約14時間ほどで、ヨタは約19時間近くもログインしていることになる。ゲーム内では結は約42時間、ヨタは約57時間にもなる。それはやり過ぎだろと思う。
僕もそれなりにやっているが、10時間もやっていることなんて稀だ。
そんな細かい計算をしていたら、あることに気づいた。
「ん?そういえばお前ら、いつ課題をやってるんだ?」
「「ギクッ」」
「リアルでそんな擬音を使うやつを見たのは初めてだぞ。それで、いつやってるんだ?やって時間なんてないだろ?」
「えーと、ほら、こっちに来てやってるんだよ」
ヨタがそんな苦し紛れの言い訳をしてきた。
「ほう、それはいい心がけだな。じゃあ、休み終わりに僕に頼ってくることはないよな?」
「へ?」
「だってそうだろ?後、半月以上もあるんだからやってるなら終わるだろ?」
「ごめんなさい!嘘つきました!」
なんとなくわかってはいたが、やはり進んでないようだった。
「はあ、ちゃんとやれよ。それで結はどうなんだ?」
「わ、私は、ヨタよりゲームやってないし、少しは進んでるよっ」
目が泳ぎまくっていたため、結も嘘をついていることは明らかであった。
「はあ、お前ら、ちゃんとやれよ」
やっぱり押しかけて無理やりやらせた方が良いのではないかと僕は思い始めていた。
予想できたのに何もしなかった僕にも原因はあると思うので、2人を責めすぎないようにしようと、それ以上は何も言わないように心がけた。
「そ、そういえば、零はレベルどのくらいなんだ?」
ヨタが、そんな苦し紛れの質問を僕にした。少しでも僕の意識を課題から逸らしたいんだと思えた。
ただ、それは僕が一番恐れていた質問だったため、僕は内心かなり焦っていた。それに急に話を振られたため、いつも以上に焦ってしまっていた。
本当のレベルはバレたくないので、テキトーにサバを読むことにした。少ない時間ではそれくらいしか、思いつかなかった。
「え、えーと、ぼ、僕は今は300くらいかな?」
実数値にして倍くらいサバを読んだ。最初に浮かんだ数字が300だったから、そのまま言ったのだ。しかし、それが浮かぶまで少し時間がかかってしまい、最初少しだけ言葉を噛んでしまった。
「そうなんだ」
怪しまれたような気はしたが、追求はしてこないようだったので、大丈夫と思いたい。
ただ、別にヨタのその質問に答えずに、課題のことを追求すれば、やりすごせたのではないかとのちに気づいた。
この時、ヨタの目論見は完全に成功していた。僕は、焦ってしまったことで、完全に課題のことが頭から抜けていたからだ。そのあとも、課題の話はしなくなっていた。
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