第60話 新しい街 2

それから、しばらくは今まで通りにゲームを進めていた。


それと鉄板はあの後、ちゃんと買うことができた。でもやっぱり少し大きかったかな、と思う。まあ、これ以上小さくしても使い辛いだけだと思うから、これはこれでいいんだけど。


鉄板を買ってから、いろいろなクエストをクリアしていき、いつの間にかSランクまで上がっていた。


ただ、Sランクに上がるとき、クロエさんはあまりいい顔をしなかった。まあ、僕がいなくなると大変なんだろうけど、ポーションが足りないって意味で。


それと、今までとは違った生活リズムになってきた。


それは復活の玉があるからだ。復活の玉はゲーム内で1日ログインするとカウンターが1貯まる仕組みになっている。だから、朝4時以降に起きて1回目のログインをして、ポーションをできるだけ作り、そして学校から帰ってきて、2回目のログインをして、またできるだけポーションを作り、さらに寝る前に3回目のログインする、というサイクルでゲームにログインしてるのだ。3回目は、いろいろとクエストをやるけど。まあ、できて3クエストくらいだ。あとはログアウトする前にまたポーションを作る。


多くの人は僕が不死なのにログインする必要があるのかと思われるかもしれないが、なんとなくこういうものってコンプしたいじゃない。ただそれだけのことだ。


まあ、ポーションの生産量が今までの3倍になったから、いつアイテムボックスの中に入らなくなるか不安で仕方ないんだけど。


それと、違う街に行こうとも考えている。理由はこの街周辺にダンジョンがないからっていうのと、目新しいクエストがないからだ。


でもポーションが売れなくなるから、どうしようと考えているんだけどね。今でも毎日、ゲーム内では3日に一度だけど売っているんだけど、増えていく一方なのだ。


だから違う街に行くために今持ってるすべてのポーションをギルドに売れば、ある程度は自由になるのでは?と考えているのだ。


なんか僕のポーションもかなり需要が出てきたみたいで購入したい人が増えたから、売っておきたいのだ。


そして今日、それを実行しようと思う。


まずギルドに行き、クロエさんを確保した。


「零さん、それで要件とはなんですか?最近忙しくなってきて大変なんですよ?」


確かに最近リアルで追加の発売がされたからな。その影響だろう。


「今僕の持ってポーションをすべてギルドに売ろうと考えているんですよ。まあ、売れなくてもいいんで、引き取ってください」


「ああ、そういうことですか。でもなんで全部売るんですか?それにタダでもいいって。何かありましたか?」


「はい、近々違う街を拠点にしようと思いまして」


「なるほど、そういうことですか。ってちょっと待ってください」


「はい、なんですか?」


「この街からいなくなるんですか?」


「?そういうことになりますね」


なんか言葉にニュアンスが違うけど、まあいいか。


「この日がいつか来るとは思ってましたが意外と早かったですね。それでポーションはどのくらいあるんですか?」


「ん?止めないんですか?」


「なんで止める必要があるんですか?」


「だって今まででしたら、止めていたような気がするので」


「だって、零さんももうSランクなんですから、こちらで拘束するのはおかしいじゃないですか」


「その言い方だと、Sランクじゃないなら、拘束してるってことですよね?」


「そんなわけないじゃないですか。それに拘束するのは零さんくらいなものですよ」


「それはそれでどうかと思いますよ」


「まあ、そんなことよりもどれくらい持っているんですか?」


「えーと、ちょっと待ってくださいね」


そう言って、アイテムボックスを確認した。


「あ、わかりました。えーと、7,693,542個ですね」


「うん?なんか桁がおかしくなかったですか?700万ですか?」


「はい、7,693,542個ですね」


「なんでそんなに持ってるんですか?!」


「毎日コツコツと作りましたからね」


「いやいや、絶対おかしいですからね!」


確かにおかしいな。それによくこれだけのものがアイテムボックスに入ったものだ。


「それより、このポーションどうしましょう?」


「どうしましょう、ってこっちが聞きたいですよ!」


「え?もしかして引き取ってくれないんですか?」


「それはわかりません!引き取りたいですが、置いておく場所がありませんから」


「じゃあ、どうしましょう?」


「とりあえず、上の人に聞いてみますので、また後日来てください」


「わかりました」


そしてこの日はこのまま僕は宿に帰り、ログアウトした。


5月6日のことだった。

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