第172話 増員 13

あすかさんは最初とかなり印象が変わってしまった。そのため、僕はどうやってこれからあすかさんに接して良いかわからなくなってしまった。


それと、あずさがあすかさんに怒られたせいで小さくなってしまっているので、いつものような明るさがなくなってしまっている。そのため、僕はあずさに対して、声をかけにくくなっていた。


そのため、なんとなく空気が重いように感じた。


さっき、あすかさんに言われたこと、雇い主という言葉が僕の中で重要になったため、僕が何か言い出さないといけないように思ってしまっていた。でも、どんな言葉をかければ良いかわからなかった。


僕がかける言葉を悩んでいるうちに、あすかさんが話し始めた。


「あ、あの、私みたいな人やっぱりダメ、ですよね?」


「え?…い、いえ、そんなことはありませんよ!」


僕は違うことを考えていたため、すぐに言葉を返すことができなかった。


「でも、私なんかで良いんですか?」


「もちろんですよ!」


最初から雇わないということを考えていなかったため、僕はその部分だけははっきりと言った。


「そうですか、ありがとうございます。でも、私のどこが良かったのでしょうか?あんな酷いところを見せてしまったのに」


「え?そ、それは……」


僕は、雇うことは決めていたが、特に理由も無く決めていたため、そのことを聞かれて、すぐに答えることができなかった。


「やっぱり、私はダメですよね。その情けとかはいりませんから。ダメならダメと、はっきり言ってください」


「そ、そんなことはありません!えーと、えーと、そうです!あすかさんは、礼儀正しいですし、物事をはっきり言えるところが良かったです!」


僕は、その言葉を無理やり捻り出していた。


「無理しなくても大丈夫です」


でも、そんなお粗末な言い方では簡単に無理していることがバレてしまっていた。でも、僕は、自分がしっかりしないせいでこんなことになっていると思い込んでいたため、自分の責任だからと、何とかしないといけないと思っていた。


「む、無理なんてしていません!僕はあすかさんが良いと思ったから、そう言っているんです!」


「でも、無理してますよね?」


「む、無理してません!」


僕は無理してないと言ってるが、あすかさんには、疑われたままだった。


「それなら、私を雇ってくれるのですか?」


「もちろんですよ!」


「本当ですか?」


「ええ、本当です!」


「そうですか、ありがとうございます」


そんなことで、改めて雇うことが決まった。


なんか、勢いで言ってしまった感があるが、元々雇うつもりだったので、気にしないことにした。


それとこの会話をしている間、あずさは黙ったままだった。



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