第174話 実はこの頃にも――◆
『――荒れ果てたエーテル域の元魔王が居たと言われる近くに、昔昔不思議な光が集まっていくのを見た者が居たそうな。その光は単なる光ではなく。それはまるで生命の塊。バラバラになっていたものが1つに集まるかのようだったらしい。その光を見た者は『あの光は絶対神のお告げだ。まちがいねぇ』と、この世界のものとは思えなかったそうな。そしてその者は光が向かう場所を探したとか――』
とある古い言い伝え。噂を町の飲み屋でたまたま聞いた者が居た。
その者は黒いマントをかぶっており。背中には手入れの行き届いている大剣を担いでいる。周りには仲間らしき人は居ない。1人らしい。
この言い伝え。噂がどこから出てきたのかは定かではないが。噂と言うのは勝手に大きくなっていくもの。いや、誰かが頼まれもしていないのに大きくしていくものでもあるので、この飲み屋で話されていた内容もほとんどは作り話。または本当にあった話を大げさにしたもの――というのが普通だろう。
もちろんこの話。噂をしていた者も、人がすでに寄り付くようなところではなくなったヒメルヴアールハイトのことを言っていた。あの場所。地域の事なら適当に何を言ってもだろうとか思った酔っ払いの思い付きだったのだが――その酔っ払い。酔っていたからか無駄に上手に話していた。いや、話を聞く周りも酔っぱらっていたから、単に盛り上がっていただけかもしれないが。とにもかくもその者の話は意外と多くの人が真面目に聞いていた。
『でだ!あの光が集まったところではこの世のものではない命が誕生したらしいぞ。まあ場所はわかっていないんだがな。光を見た者をついには見つけられなかったそうな。だからな、まだこの謎は解明されていない。もし見つければ――見つけた者が力を手に入れれるかもしれねぇってことよ』
まあもちろん酔いがさめればそんな話あるわけねーだろ。というレベルだったのだが――この時だけは、その場に居た者は何故か大いに盛り上がったとか。普通なら楽しく飲んでいる人々のとある日の一コマ――だったのだが。
この情報あながち間違いではなかったりするのだが――まあわざわざヒメルヴアールハイトという生き物が住むべき環境ではないと言われているところに行く輩はいない――と思ったがいた。
まさかの話を聞いていた中にいたのだった。
「――噂が本当なら、それは相当な力。または場所が場所だけに魔王――いや、もっと強い何かがの可能性もか。面白い――これからの力になるかもしれない。確認すべきだな」
黒いマントをかぶった者はそんなことをつぶやきながら立ち上がった。そして、店主の前へと金を置き。お店を離れた。
この黒いマントの者が何を思ったのかは誰にもわからない。しかし、たまたま聞いた話によりこの後いろいろ起こってしまうとは――誰も思っていなかったことだろう。
『――まあ、場所が場所だ。呪われても――俺が知ったこっちゃない。けれどあの光は間違いなく……』
ちなみに黒いマントをかぶった者が去った後のお店の中では、その後もしばらく話が続くのだった。それはそれは盛り上がったそうな。
それからしばらくの年月が過ぎた頃。
黒いマントをかぶった者は、単なる作り話。酔っ払いの噂話レベルと思われていた話の真実にたどりついてしまうのだった。
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