第199話 実

「でもまあ、手洗えたのは嬉しいですね」

「ああ、やっとさっぱりできたわ」


 小川にやって来た悠宇とちかは少し話しつつ手を洗った後。松明もまだ大丈夫そうだったので、再度松明を持って小川の近くを見てみることにした。


「あっ、ちか、あまり川に近寄るなよ」


 小川の近くは凸凹していたり。ぬかるんでいるところもあったので、足元を照らしつつ悠宇がちかに注意する。


「大丈夫です。先輩の服掴んでますから。落ちる時は一緒です」


 すると、ちかはささっと悠宇の服を掴んだ。


「それはそれで嫌なんだが――でも川なら魚とかいないかね」


 ちかの手は払いのけることはもちろんなく。悠宇はそのまま小川の方を少し松明の明かりで照らしてみる。


「まあいてどう捕まえるか。ですが。見た感じ――いないですね。浅すぎますかね?」

「それもあるか。っか、水――飲めそうだよな。綺麗だよな?」

「見た感じは綺麗なんですよね。暗いからはっきりは――って、先輩先輩!あれ!あれ!」


 小川の近くを歩きつつ。悠宇が水だけでも試しに飲んでみるか。などということを考えていると、ちかが急に騒ぎ出した。そして掴んでいた悠宇の服も引っ張っている。そんなちかの行動により悠宇も小川ではなくちかの方を見ると。ちかが小川――とは反対の方を指さしていた。


「どうした?あれじゃわからんが――」


 ちかの指さす方は少しだけ松明の火で明るくなってるが暗いので悠宇が松明を小川とは反対の方向へと向ける。


「あの木。実ありません?ありますよ!ほら!」

「――えっ?どれ……って――マジだ。リンゴ?よりは小さいか?でもあれは――」


 実は悠宇たちが歩いていた小川のすぐ横に悠宇たちと同じくらいの背丈の木があった。

 もちろん悠宇も木があるのは近くだったのでわかっていたが。実があるのはよく見ないと。または近付かないと暗いこともありわからなかったが。

 そんな時、たまたま少しだけ悠宇の持ってた松明の火が木の方も照らしたのだろう。どうやら実に松明の火のあかりが反射した――なのかはだが。とにかく。ちらっとだけ実を光らせたことにより。ちかが一瞬気が付き。そのあと悠宇が松明をちゃんと木の方向へと向けたことにより。まずちかがはっきりと見つけたものを確認。そしてすぐにちかの指さす方向を見ていた悠宇も形はリンゴ。大きさはイチゴくらいの薄い赤色の実を見つけたのだった。

 この2人――町を見つけれる運は持ち合わせていなかったが。

 サバイバルの運はあるらしい。ちなみに先に言っておくが。悠宇とちかが見つけたリンゴの小さいバージョンのような物。毒はない。美味しい実だったりする。

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