第9話 不思議な後輩
ちかが唸り。悠宇が和んでいる間のこと。
ここからは昔話となるが。実は数年前。悠宇たちが小学生の頃はこの真逆の光景があったりする。
小学校低学年時。入学前からすでに140センチを超えていたちかは小学校の3、4年生になるまでは高身長扱いだった。
背の順に並べば常に一番後ろ。小学校入学時は髪色のこともあったが。身長がずば抜けており。さらに今と変わらずスタイルもシュッとしており良かったため。その頃すでに海楓の人気もあったが。ちかはちかで人気も実はかなりあった。
しかし、なら何故地域の美少女コンテストなどで海楓が独占ということが起こっていたのかというと――ちかは基本目立つのが嫌いだった。
しかし昔は高身長。さらに髪色(ちなみに独特の髪色は地毛)のこともあり。ちょっと外に出れば注目の的となるため。極力行事にも参加していなかったので、海楓の独占が起きていたのだ。
なお今のちかは前ほどは目立つことを嫌っていない。というより『さすがに慣れた。周りも初めて会う人以外は何も言ってこなくなった――』という雰囲気のちか談が以前悠宇にあったりする。
なら何故引きこもっているような子と悠宇が仲良くなって今もその関係が続いているか。それは少し前に触れたが悠宇の爺ちゃんが関係してくる。
実はちかも現在悠宇が住んでいる鉄道模型のレイアウトに占拠されている家を知っている1人である。というより。悠宇の爺ちゃんが元気なころから唯一。ちかが出かけていた場所が今の悠宇の家でもある。
ちかもすでに昔のことははっきり覚えていないが。悠宇やちか本人が思っている以上にちかの両親と悠宇の爺ちゃんのつながりは強かった――らいし。
そして、悠宇の爺ちゃんも孫の世話をするかのようにちかを預かることが多かったらしい。
それもあって、爺ちゃんの家に出入りしていた悠宇と繋がるということである。
話を戻すが。昔は身長が同学年と比べずば抜けていたちかだが。今では、背の順で何かあれば間違いなく最前列を指定席としている。
そう、ちかの身長は幼少期に急激な変化のち止まっているのである。ここ数年は身体測定などで計測しても全く変化なしが続いているらしい。それはそれは綺麗なまでに同じ数字とか――。
そのため小学校の高学年あたりからは今の悠宇とちかの状態となっている。ちなみに悠宇は未だに少しずつ身長が伸びているが――ちかには言っていなかったりする。言うといろいろ大変だからである。
そしてちかにはもう1つ不思議なこともあった。
それは――髪である。暗めだが透明感のある青色――という不思議な色もそうだが。不思議なことはそれだけではない。
ちかの髪は殆ど――いや伸びないのだ。
ちかは物心ついた当たりから髪を切った記憶がない。
これはごく一部の人しか知らないため。多くの人はちかが髪の手入れをしっかりしており。いつもお気に入りのボブカットを維持していると思っているが。実際は何もしていない。
余談だが。海楓は頻繁に美容院に行ってる子である。髪の手入れに関しては手を抜いていない。
話しを戻すが。ちかの髪のことを知っているのは、ちかの両親と今は亡き悠宇の爺ちゃん。それと悠宇だけである。
まずはじめにちかがふと『自分の髪は伸びていない――』と、気が付いたときにちかはなんとなく両親には相談したらしい。
しかし髪が伸びないからと言って特に何か問題があるわけでもなく。ちかの両親は気にしなくてもよいとちかに言っていた。
そしてたまたまその時に悠宇の爺ちゃんがその場に来たため。ちかの両親が髪の話をしたため悠宇の爺ちゃんも知っていた。
なお悠宇の爺ちゃんはその際に『わしはとうの昔に髪とはおさらばしたからな。はっはっはー』と、自身の光り輝く頭を触りながら笑いを取ったらしい。
もちろんその際のちかは何とも複雑な心情だった。髪が伸びない。そんなことあるのだろうか――と。また悠宇の爺ちゃんに対しては『――前髪だけあるじゃん』などと心の中だけで突っ込んでいたのだった。
それからしばらくは確かに髪が伸びないからと言って、ちかも問題がなかったので、あまり気にしないようにしていたが――やはり気にはなっていた。
もともと髪色も親譲りなのだが周りから見れば変わった色。それもあるのに髪が伸びない不思議があるというのは小学生のちかが1人で抱えるには大変なことだった。もしかすると髪が伸びていないことが知られると。実はかつらなのでは?などと変な噂が広がったりしないだろうかと。不安があった。
そんな時だ。悠宇の爺ちゃんの家へとちかがいつも通り預けられている時に、同じくやって来ていた悠宇が気が付いたのだった。
『そういえば――ちかっていつ見ても同じ髪型じゃない?ってか、頻繁に切ってる?ってくらいいつも同じだよな』
いつものように悠宇と遊んでいた時。唐突にそんなことを聞かれたちかは固まった。
気が付かれた。と、この時すでに悠宇とちかの関係はかなり良かった。なのでちゃんと話したらわかってもらえるだろう。それに悠宇なら噂を流したりすることはないだろうとちかは頭の中では思っていたが。いろいろなもし――という不安により何も言えず下を向いて固まってしまった。
しかしその後すぐちかは顔を上げることになった。
『おい、悠宇なんだ?女いじりか?はははっ』
『そんなことしてない』
2人の沈黙を破ったのは、悠宇の爺ちゃんである。
いつも通り鉄道模型を触りながら2人の会話が聞こえていたのだろう。というか。そもそも昔から生活スペースの小さかった尾頭家。自然と3人が居る場所は近くなるものである。
『照れんでよいよい』
『いやいやそんなんじゃないし。ちょっと気に――』
『なるほどなるほど、悠宇は海楓ちゃんよりちかちゃん派か――うんうん』
『勝手にいろいろいうな。って、そりゃちか。かわいいけどさ』
それからちかの前では悠宇と悠宇の爺ちゃんの会話が繰り広げられたが――この頃すでに悠宇は基本ちかのことをかわいがっており。話しながら何度もちかを褒めたりするもので――気が付くとちかは沸騰寸前になっており。髪のことなんてもうすっ飛んでいた。いつも言われていたことだが。何度も何度も目の前で自分の話をされると。というか褒められるというのは何ともという状況だった。
結果として最終的にはちかが我慢できず。2人の会話を止めて、悠宇を連れ出して家の外へと遊びに行き。その場で悠宇にはちゃんと髪の話をしたちかだった。
そして不思議なことに、話をするとそれが当たり前だった――ではないが。ちかはちかですっきり。悠宇は悠宇ですっきりとちょっと不思議な感覚が2人にはあったのだが――2人はそれには気が付かず。現在まで2人の秘密ではないが。特に話すようなことではないと頭の中で思っている2人だった。
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