第8話 悠宇の後輩

 海楓と共に近所のスーパーへとやって来ている悠宇。

 海楓はいつもの通り地域の人に捕まったため。1人で店内を回っていると悠宇も声をかけられた。


「うん?あー。も買い物か?」


 悠宇に声をかけてきたのは、悠宇や海楓と同じ制服を着た小柄な女子生徒。悠宇と比べると30センチくらいの身長差がある。

 そして特徴的な髪色。暗めだが透明感のある青色のボブカット。

 また海楓と同じく規則通りに制服を着こなしているため優等生のオーラも出しつつ――今日も小さくてかわいい姿が悠宇の視線に入った。


「悠宇先輩。今私を見て今日もチビだなと思いましたね?」

「マッタクオモッテナイヨ?」


 声をかけてきた女子生徒を見つつあからさまな反応をする悠宇。

 なお、実際に悠宇は言われたことを思っていた。しかしそれは馬鹿にしたものではない。


「あからさまな反応ありがとうございます」


 悠宇の態度がいつも通りだったので、少し頬を膨らませながら頭を下げる女子生徒。こちらもそこまで――嫌な気分?ではないらしい。むしろ悠宇との会話を楽しんでいる様子だ。


「悪い悪い。いや、今日もちかはかわいいなー。と」


 そんな女子生徒。ちかに再度悠宇が声をかける。


「なっ。そ、そんなこと言っても私は喜びませんから!」


 すると、今度は明らかに。本当に誰が見てもわかるくらいに頬を赤くし。尻尾がないからか。急に頭のてっぺんにアホ毛が生まれ。それがブンブン上下に動いているように悠宇には見えた。

 いや、悠宇以外にも今彼女を見た人は全員同じ感想を言うだろう。

 ちなみに悠宇はこのやり取りをいつも楽しんでいたりする。

 

 今悠宇が話しているのは、海浜かいはまちか。高校1年生。悠宇と海楓の1つ下の学年の後輩である。

 いつ頃から悠宇と仲良しになったかは、悠宇本人はすでにとなっているが。ちかもかなり前からの知り合いである。海楓と同じく保育園のころにはすでに出会っていた――である。

 そもそも悠宇とちかの接点は悠宇の爺ちゃん経由の繋がりだったりする。


 ◆


 これは悠宇とちかが生まれた頃の話。

 その頃すでに、海浜家と悠宇の爺ちゃんには接点があった――らしい。

 悠宇が爺ちゃんから聞いているのは――『大昔にちかちゃんの親とはいろいろあってなー。その繋がりが今もあるんだよ。それこそ、線路は繋げば繋がりの宝ってことじゃな。繋がりは不思議なことも起こすんじゃ。覚えておくといい――』というちょっとわからない話だった。

 なお、その後悠宇の爺ちゃんはいつも通り鉄道模型をいじりながら『線路は繋げば繋がりの宝じゃ――』ということに関して悠宇に語っていたため。悠宇はまた爺ちゃんの妄想。別世界にでも飛んでいったような話が始まったなどと思い。それ以上の話を聞くことなかった。

 そもそも語りだした悠宇の爺ちゃんの会話は基本一方通行のため。悠宇はそれ以上聞けなかった。とも言える。

 とりあえず爺ちゃんの知り合いのところの子。ということで、悠宇とちかの交流は始まり。悠宇とちかのちながりは今も続いていたのだった。


「ってか、チビじゃなくてもうすぐ私150突破ですから!」


 ちか本人身長はかなり気にしている。この会話は悠宇とはよくやっている。


「それ――ここ何年か言ってないか?中学――いや、小学校卒業するくらいから言っているような――」

「いっ……言ってないです!」


 ちなみに小学校から、ちかは言っている。悠宇正解である。


「でもちかは今も十分かわいいからな」

「だ、だから!そんなことでだまされませんからね!もうっ」


 悠宇とちかはいつもこんな感じのやり取りをしている。

 学校も基本同じということもあり。学年が違うため会うことはそこまで多くはないが。でも会えば普通に話している仲である。なので一部の人が2人は仲良さそうにいつも話しているということを知っているレベルだ。

 それと普段悠宇は海楓に弟扱いされているため。その反動というべきか。ちかと話すときの悠宇はちょっと意地悪なお兄ちゃん的ポジションといつの間にかなっていた。

 なお、ぱっと見は揉めているように見えるが。良く知った仲の2人なので、本人たちは険悪な雰囲気になどは一切ならず。和やかな雰囲気が2人を包んでいる。2人の挨拶みたいなものである。


「別に身長なんて気にしなくてもいいのに」


 ちかの全身を見つつつぶやく悠宇。すると、再度頬を膨らませながら悠宇の方を見るちか。


「気にします!」

「ちかは今のままでよし。チビでかわいいかわいい」


 悠宇はちかの頭をぽんぽん触る。


「子ども扱い禁止です!ってチビ言った!!」

「気のせいだな」

「言いました!」


 話しながら悠宇がちかの頭にポンポンと触れているが。ちかは払いのけることはせずに文句をいつも通り悠宇に言う。ちなみにちかの頬は緩みだしている。

 なお、先ほどから話している2人だが。悠宇の視線は下へ。ちかの視線は上となっている。それは先ほども触れたが2人の身長差が30センチくらいあるからだ。悠宇の身長が180半ばあるため基本悠宇と話すとみんなこのような形になるのだが。ちかは特に同学年と比べても身長が低いため2人が並ぶと年の離れた兄妹。いや――もしかすると親子と見えているかもしれない状況である。

 

「ぐぬぬぅ……なんで伸びない――」


 しばらくいつものやり取りをした後。いつものように悠宇を少し睨むように唸るちか。なお、悠宇はそんな姿のちかを見ていつも通り癒されていたのだが――ちかは悠宇の和やかな表情には気が付かず唸り続けたのだった。

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