第7話 地元でもナンバーワン
学校から帰ってきた後。なかなか座ることすらできない忙しい悠宇。
現在は海楓と共に歩いて15分くらいのところにある小さな町のスーパーへと向かっていた。
本来なら加茂家は車で10分くらいの大きなショッピングモールへと買い物に行くことが多いが。現在は車に乗れる人がこの場には居ない。
そのためいつも悠宇が使っている町のスーパーへと歩いて向かっていた。
ちなみに、家を出た海楓はというと――。
「悠宇。今日の晩御飯何が言い?お姉ちゃんなんでも作っちゃうよー」
「――こいつ……」
人がまた変わっていた。
漆黒の髪を風に靡かせつつ。再度ぴしっと制服を着て1人だけ違和感――というべきか。違うオーラを出している。
簡単に言うと少し前までの学校での姿。女神様。聖女様モードに海楓はまたなっていた。
ちなみに学校でもかなり有名な海楓。
もちろん地域でもとびっきりの美少女として有名人である。
余談だが。毎年地区の文化祭の時に地域の美少女コンテスト(年齢問わず。老若男女参加のイベント)では殿堂入りしている海楓だったりする。
保育園の時に初めて参加で優勝。
次に小学生の時に数年ぶりに参加し優勝。
そして中学生の時にも参加し優勝と。
出れば満票優勝ばかりの海楓。
実は昔から自分がかわいいという自覚はあった(海楓談)ため。毎年は出ず――と、悠宇には話していた海楓だったりする。
なお、海楓は基本敵を作るたタイプではないので、出たら優勝みたいなことをしていても地域内の評判は全く問題なかった。むしろ地域からは1年に1回海楓で癒されたいという声が一部男性陣から上がっていたとかで、毎年出るように言われていたらしい。
でもさすがに毎年出るとそれこそこのイベントが海楓を見る会になってしまうため。優勝3回の海楓は、中学生で優勝した翌年から文化祭時には美少女コンテスト特別審査員となっている。
これなら海楓は出ないが。毎年審査員の海楓を見ることができる。さらに美少女コンテストの方も参加者が増えて盛り上がると――と、今のところいい感じに収まっている。
もう1つ余談を言うと、実は悠宇と海楓の通っている高校も文化祭の時に美少女コンテストがあり。そちらは海楓がほぼ強制で、周りからの推薦で出ることになり。1年次は満票優勝していたりするが――それはまた別の話。
しばらく雑談をしつつ(悠宇は海楓のいつも通りの変わりように、いつも通り呆れつつ。家でもその姿してみろなどと心の中で思いつつ)スーパーへとやって来た。
大型のショッピングセンターのように種類は豊富ではないが。近場で買い物を済ませる。普通に生活する分にはこの町のスーパーで充分である。
「おっ、海楓ちゃんいらっしゃい」
「海楓ちゃん今日もかわいいねー」
「海楓ちゃん」
「海楓ちゃん海楓ちゃんちょっと見ていってよ」
「いやいやまずはこっちだろ」
「おい。俺のところの方が早く声かけたぞ」
「海楓ちゃんこんなおっさんたちより私の方に――」
「それよりこっちでちょっとみんなで話しましょうよ」
なおスーパーに入ると、まるで芸能人でも来たかのような盛り上がりになっているのは――いつものことである。
海楓の周りだけお祭り騒ぎ。
このスーパー店内にお肉屋さん。魚屋さん。お菓子屋さんが入っているため海楓を見つけたら客寄せのためだろうか。声かけあいの祭りである。
また町のスーパーは地域の人の憩いの場。井戸端会議の場にもなっているので、おじいちゃんおばあちゃんが集まっており。そこに有名人の海楓が通りかかればである。そちらからの視線。声かけもすごい。
さらにさらにスーパーの従業員の人も混ざったりとちょっとした騒ぎになるが。もういつものこと。
そして誰も海楓に危害を加えようとする人は居ないため。悠宇はその騒ぎに巻き込まれないように、入り口で買い物かごを取ると。まず1人で買い物を開始したのだった。
海楓の近くに居ると、一般人の方が身の危険である。なお、もちろんここでも悠宇は海楓のお気に入りの弟。という謎な情報が広がっているため悠宇に危害を加える人ももちろんいないのだが。悠宇は早々にその場を離れる選択をしたのだった。
「っか、海楓のところいつまで留守なんだ?しばらく俺が料理担当と思った方がいいのか?こりゃ――大変なことになっている?なっているよなー。海楓のところの両親もなかなか――」
悠宇はぶつぶつと独り言を言いながら店内を回る。
「あっ、悠宇先輩」
すると、商品を手に取りかごに入れていると悠宇を呼ぶ声が近くで聞こえて来たため悠宇は声の方を見たのだった。
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