第12話 これが本来の幼馴染
悠宇と海楓が買い物へと行き。そこでちかと合流し。今は一緒し海楓の家で食事をすることになったため海楓の家。加茂家へと3人で帰った来たところである。
「ちかちゃんどうぞー」
「――お邪魔します」
前を歩く海楓とちかに続く形で悠宇も荷物を持って室内へと入る。
「ちかちゃんここでちょっと待ってて」
「あっ、はい」
「悠宇は荷物持ってこっち」
「あ、ああ」
それから居間にちかを案内した後。通常なら海楓は片付けは悠宇によろしく。という形になるが今のところまだ演技中である。
ちかを居間に待たせている間。台所では海楓と悠宇が片付け――主に悠宇が冷蔵庫や棚に買ってきたものを片付ける。
「――ってことで、お馬鹿な悠宇でもわかると思うけど。ちかちゃんにはいろいろ知っておいてもらった方があとあと良さそうだから。演技の事話そうと思うんだけど。大丈夫だよね?ちかちゃん幻滅とかしないよね?ってかよくよく考えたら。ちかちゃんも1人暮らしなんだし。こういう時は私の家にちかちゃん泊まっても良いし――って、悠宇を366日拘束はできないから。ちょっと手伝ってもらえるような流れで――」
悠宇が片付けていると、コソコソと海楓が悠宇に話しかけてきたが。悠宇は話半分。予想通りということで適当に話を聞きつつ。荷物を片付けていた。
というより。海楓が365日。いや、うるう年の日数で海楓が自分を拘束しようと思っていたことを知り。このままでは本当に自分のことができなくなるかもしれない。なのでちかには犠牲になってもらおうと頭の中でこの後の流れを考えながら話を聞いていたのだった。
「ちょっと?悠宇聞いてる?悠宇以外が秘密を知ることになるんだよ?」
「いや、ちかもう知ってる」
海楓が確認と言った感じで近寄ってきた際に悠宇は答えた。と、言うかバラした。
「――えっ?」
「かなり前から話してるし」
「はい?」
悠宇が何を言ってるかわからない。と言った表情をした海楓。こんな表情もするんだな。などと悠宇が思っていると。海楓が何やら考える素振り――のち台所を出て行った。
台所には冷蔵庫などの音が低音で響くだけ――と、いう時間が少し過ぎた後。
「本当に知ってたの!?」
居間の方から海楓の驚きの声が聞こえてきた。
そしてそのあとすぐに海楓が台所へと戻って来て――。
「悠宇。お座り」
「なんでだよ」
海楓は悠宇に犬になれと言い出した。ちょっとお怒り?モードの海楓である。なお、あまり悠宇には効果はなさそうだが――。
「勝手に人の秘密話すとか。お仕置きが必要でしょ。お姉ちゃんが甘かった」
「いや、俺の方がかなり海楓を甘やかしてきたかと」
実際悠宇は海楓が何もできないということに関して教えようとしたこともあるが――なかなかに海楓が壊滅的だったためここ最近は諦めて基本悠宇1人がしていた。でもそんな中で洗濯は何とかできるようになったので、それだけでもかなり進歩と思った悠宇は料理など他のことに関しては甘やかしてきた。なので悠宇の言っていることはほぼ正しい。かなり海楓を甘やかしてきた。
ちなみに海楓は悠宇を甘やかした――と言うより。学校外では頼りまくった。である。
「――先輩たち何を言い合っているんですか?」
悠宇と海楓が台所で話していると。廊下からちょこんとちかが顔を出した。
「ちか。とりあえず俺が言っていたことほんとだっただろ?」
ちかの姿を見つけると、悠宇はちかの方を見て今までのことを確認するかのように問いかけた。
「えっと――まあ料理。家事に関しては悠宇先輩が今まで全部していたと海楓先輩から聞きましたが――」
「よしよし。俺が嘘言っていた疑惑なくなったな」
「――まあ先輩が言うことは嘘とは思っていませんでしたが」
「ちょっと悠宇。お座り。今は私と話してる途中」
悠宇が1人で頷き。
ちかはちかで悠宇が嘘を言うとは思っていなかったので、ずっと信じていたという感じでつぶやいていると。海楓が主張するかのように、再度悠宇に犬になれと命令を下した。
「お座りとか言う暇があるなら。海楓さっき買ってきたもので何を作ろうとしていたか話してみろ」
「――えっ?普通にカレーじゃん」
海楓の命令は聞かず。悠宇が海楓に買い物のときに聞けなかったことを確認すると――悠宇とちか再度海楓の答えに驚くこととなったのだった。
「「どこが!?」」
海楓に突っ込みながら悠宇とちかは再度顔を見合わせて、声には出さなかったが『あれカレーの材料だったか?』と、それぞれが頭の中だけで考える。
「えぇ――なんで?って、ちかちゃんも」
もちろん悠宇とちかにそんな反応をされるとは思っていなかった海楓は海楓で驚いていたが――。
「いや、海楓。カレーだろ?」
確認のため悠宇が海楓に再度聞く。
「カレーだよ」
海楓は海楓で自信満々に答える。
「――何買っていたっけ?」
なんとなく未来がわかっていたが。一応念のため悠宇が海楓に聞いてみる。
「えっ、じゃがいも。玉ねぎ――」
「まあそこまでならよかったが。まだ入れるつもりだっただろ?」
「えっ。だってカレーだからお肉いるでしょ?」
「まさか――それがレバーだったんですか?」
悠宇と海楓の会話にちかも驚きつつつ入って来た。
「えっ?カレーに入ってるよね?」
ちかの問いに海楓が答えると。ちか額を抑えつつ悠宇にバトンタッチと声には出さず。悠宇の肩に手を触れたのだった。
「海楓のカレーには何が入ってるんだよ」
無言のバトンを受け取った悠宇はそのまま確認作業を継続する。
「えっ、レバー、こんにゃく、キノコ。あと、彩を考えてキュウリでしょ。それと隠し味って入れるでしょ?だから唐辛子や柿とソース。牛乳。チョコレート……」
「「もうストップ」」
海楓がいろいろ考えながらいろいろな材料をつぶやきだしたので、悠宇とちかが海楓を一度止めた。
そしてちかは悠宇の腕を引っ張りコソコソ話し出す。
「ちょ、何ができるんですか?」
「カレー……みたいだな」
「玉ねぎとじゃがいも。まあキノコまではOKですが。あとのなんですか」
「いや――」
「隠し味のソースとチョコレートはまだまあOKとしましょう。牛乳――入れますか?もしかしたらコク?とかでなのかもですが。私は――入れないです。あと、唐辛子?キュウリは――添えるんですかね?いやでも流れは入れる感じ――って、柿は――えっ?ですよ」
海楓が言った材料を繰り返しながらちかが悠宇に問い詰める。そして自分で言いつつちかは混乱している様子だった。
ちなみにちかは料理をする際基本レシピ通り。アレンジなどはしないため。カレーと聞いたら。お肉、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもだと思っていたのでもう頭の中はパニックである。
「いや――もう何とも。ちなみに柿カレーはあったと思うぞ」
「――あるんですか?」
そして悠宇の言葉に再度驚くちか。
「なんか聞いたことあるな。だから柿だけならおいしいはずだ」
「私はわからないので何とも――って、こんにゃくに関しては絶対こんにゃくのままですよ。カレーにこんにゃく――入れたことないのではっきりとはですが――合わないと思います」
「俺もそれは合わないと思ってる。っか、入れようと思ったこともない」
「――にしてもここまでとは――って、悠宇先輩。今まで学校で調理実習とかありましたよね?その時――って、あー、あれは材料が決まっているから問題なしですか?」
「まあそれもあるし。あいつ学校では女神。聖女扱いで大切にされているからな」
悠宇のつぶやきにちかは少し考え。あっと、声を出して確認を始めた。
「……もしかして、包丁とか火は危ないとかで他の人が――特に男子が代わりに……あっ、そもそも男子は海楓先輩に料理できる男子アピール?とかだったりします?」
ちか、花丸の回答である。
余談だが。今まで海楓が学校で料理をしなければいけない場面はそこそこあった。それこそ今ちかが言ったように、調理実習。小学校、中学校、高校と1年のうち何回かは家庭科の時間にあった。そのほかに自然教室など料理をみんなでするという場面はあった。
もちろん、海楓の近くに居る悠宇が家事万能ということは知れ渡っていることなので、悠宇が居ると海楓以外の生徒も悠宇に頼ろうとしたが。そもそも悠宇と海楓が授業で同じ班になるということは毎回はない。なので悠宇もどこかではバレると思っていた。思っていたが――海楓の周りに居る信者はやばかったのだ。
ちょっと盛り付けや準備を海楓は手伝うだけ。ということがほとんどだったのだ。なので、今のところ海楓は学校で料理が壊滅的――いや、独創的というのは奇跡的にバレていないのだ。
「おお。拍手拍手。ちか完璧」
花丸のちかの回答を聞いた悠宇は拍手をしつつちかを褒める。もちろんちかは全く嬉しそうではない。
「――みんなが海楓先輩をダメにしていた」
「まあ何もしようとしない海楓もだがな」
「――ちょっと、2人とも。かなり好き放題言ってない?」
さすがに目の前でコソコソ話されたので、丸聞こえだったため少し不機嫌そうに海楓が2人に声をかける。
「言った」
「もう」
聞こえていたのは承知済みなので、すぐに悠宇が答えると。海楓がさらに少し不機嫌そうな表情をしつつ悠宇の腕を軽くパンチする。そしてパンチしながら――。
「絶対この材料で作ったらおいしいと思うけど――」
そんなつぶやきを言ったがもちろん――。
「「ない」」
悠宇とちかに再度突っ込まれたのだった。
――なおもしかすると海楓の集めた材料でもおいしくなるのかもしれないが――現在この場に海楓の集めてきた材料でおいしいカレーを作れる自信があるものはいなかったので、その確認はできない。
「ちょ、ちかちゃんも!?」
つぶやいたことに対して、悠宇とちかに声をそろえて突っ込まれたため。少し自分の考えを改める――かと思われた海楓だったが。
「なら――ご飯の代わりにお刺身と食べるとかの方が――」
「もう黙れ。海楓」
「お刺身に――カレー……えっ?」
何故か新たなものを作ろうとし出したため。悠宇とちかがぐったりとすることとなったのだった。
ということで、まず海楓の料理が独創的。ということが、ちかに知れ渡った後。いつも通り悠宇がカレーを作ることになった。
そして悠宇は普通のカレー。買い忘れられた人参抜きの普通のカレーを作ったのだった。ちなみに柿はデザートとなった。その他の材料は――そのうち使われる予定である。今は海楓の家の冷蔵庫へと落ち着いた。
なお、悠宇がカレーを作っていた時のこと。
海楓とちかは雑談をしていた(主に海楓がちかにお願い)。悠宇がいないとき。ちかに料理を作ってもらえないかという相談だ。教えてではない。作ってのお願いである。
そしてちかにはお礼として加茂家で寝泊まりをOKにだったが――「悠宇先輩に相談してから決定を――」と、ちかが言ったため。食事をしながらその話をすることになったのだが。
ちか。この時すでに選択ミスをしたのだった。
そもそものこと悠宇はちかを巻き込む予定だったので。
「はい決定」
話を聞いた悠宇。即答である。
「えっ?」
「よし。ちか。海楓のことは任せた」
「ちょっと!?」
食事を開始してすぐ。ちかの確認に悠宇が答えると。その後の悠宇はカレーを黙々と食べることを選んだのだった。ちかからのクレーム。やっぱりお断り――という選択肢を選ばせないためにである。
「悠宇先輩に相談しなければよかった――」
そんな悠宇の反応を見て、自分は明らかに面倒なことに足を突っ込んだことを察知したちかだったが。もう手遅れである。
「ちかちゃんよろしくね」
海楓も笑顔でちかの方を見ていたので、ちかはいろいろと諦めた。
「――今まで通り週末だけ悠宇先輩に甘える生活の方が絶対楽だった――」
その後小声でそんなことをちかは呟くのだった。
この日。ちかも悠宇と海楓の生活に巻き込まれることになったのだった。
そして、この時悠宇と海楓とさらにちかは近くなったことによりこの後起こる
周りでの出来事に大きくちかも関わることになり。
ちかはとある重大な事実を知ることになるのだが――それはまだ先のこと。
「やっぱり悠宇の料理は最高だね」
「普通が一番なんだよ」
「今度はこんにゃく入れてみてよ」
「なんで普通が一番って言ったそばからそうなるんだよ。っか、自分で入れろ。今この家の冷蔵庫にあるし」
「じゃあ、ちかちゃん一緒に食べてみる?」
「えっ――私は――」
「あっ、アクセントに唐辛子入れたらおいしくなるんじゃない?」
「いや――こんにゃくと唐辛子でそれはそれで何か作った方がおいしいかと――」
「ちか頑張れ」
「ちょ、悠宇先輩逃げないでください」
とりあえず、すでにちかが疲れた表情をしていたが。この日から悠宇、海楓、ちかの3人が賑やかに過ごす日々が増えることになったのだった。
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