第122話 間違いなく迷子 ◆

「――やらかしたわ」


 シェアトは暗い夜道を1人で歩いていた。

 周りに人影はなく。気が付いた時にはぽつんと1人という状態だった。

 基本シェアトが1人で動くということは今までほとんどなかった。

 シェアトが動けば基本コールや誰かが付いてきているというのが当たり前であり。こちら、悠宇たちの住む世界でも今日はずっと誰かと一緒に居た。

 そんなシェアトはとある命の危機を直感。精霊の力など関係なく。完全に直感で感じて脱走――したまでは良かったのだが。

 とにかくあの場から離れようとそこそこ無理して走り回ったシェアト。気が付けば全く知らないところに居た(今日こちらに来たばかりのシェアトが1人で行動すればこうなるのは必然である)。


 「――うーん。わたしどっちから来たかしら?」


 前を見ても後ろを見ても右を見ても身に覚えのある道がなく。

 そしてどの道も暗い――などと思いつつ右を見たシェアト。


「あっあっちなんか明るいじゃないの」


 どうやらたまたま大通りに繋がる道のところに居たらしく。シェアトは今いるところよりは明るい道を見つけることができた。


「とりあえず明るいところに行けば何かわかるわよね」


 シェアトはそう呟くと少し早歩きで大通りの方へと歩きだした。


「――えっと――って、だからここどこよ」


 少し移動したシェアトは大通りに出た。

 大通りと言っても車がビュンビュン走っているところではないが。先ほどまでシェアトが歩いていた住宅地よりかは明るい場所に出た。

 なお。シェアトの迷子は継続だが――。


「うーん。海楓の家――どっちだったかしら?」


 大通りに出てもあたりを見回すシェアト。しかし何も身に覚えのあるものがない。

 そもそもこの場所はシェアト初めて来るので、見覚えがあるわけないのだが――と、そんな時。


「あっ。あれ――こんびに?だったかしら?そうよ。コンビニよね。確かあれは昼間に見たわ」


 シェアトはコンビニの看板を発見した。

 それは昼間に見たもの。

 しかし、シェアトは知らなかった。大通りに出ればコンビニがあちらこちらに

あることを――。


 コンビニは見覚えがある。

あそこに行けば多分わかると思ったシェアトは再度足早に明るいコンビニの看板の方へと移動をした。

 したのだが――。


「あら?昼間見たコンビニ――こんな感じだったかしら?」


 再度となるが

 この場所はシェアトが昼間教えてもらった場所ではない。

 しかし建物の雰囲気が似ているためこの世界を見たばかりのシェアトは少しの間コンビニの駐車場あたりで建物を見つつ考えることに――そして、見知らぬ男性らに絡まれたのだった。


「何々?君1人?」

「おっ、かわいい子じゃん。外国人?」


 シェアトが気が気が付いた時にはすでに3人の男性。10代20代くらいの男性に囲まれていた。

 

「――何よ」

「おお、怖くねー」


 シェアトは少しドキッと(普通なら。向こうの世界なら精霊の力で人などの察知はできる方だったが。この地ではそんなものは全くの無意味のため気が付くのが遅れたため)しつつもとりあえず嫌な予感がしたため3人のうち1人を睨んだが――。


「めっちゃかわいいじゃん」

「ちょ、1人なら道案内しようか?」

「そうそう、俺ら暇だし」

「――(クズと見たわ)」


 男性たちには効果なし。

 そして、いつもコールたちになんやかんやと言っているシェアト。

 はじめこそいきなり近寄られたので驚いていたが。すでにいつも通りの状態。

 本来なら見知らぬ土地で1人なので不安になってもおかしくないのだが。今のシェアトは何故か落ち着いていた。

 ちなみにシェアトの頭の中では――男性らをどのように蹴散らすか。罵倒すればいいかという考えがいろいろと渦巻いていたのだが。

 そんなシェアトの元に猛ダッシュしてくる影が近づいていたりする。


「――おいおい俺の――ぬわっ!?」


 ――不穏な声がシェアトの耳に届いた時。


「――――うそぉ……」


 シェアトの視線の先には――とある人物が映り。

 急に乙女チックな表情をするシェアトだった。

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