第121話 夜でも活発に行動中 ◆

「いやー、暗くなっちまったなー」


 夜になり人通りの少なくなった道路を獅子が1人で歩いていた。

 その顔は満足げな表情をしている。

 現在の獅子は友人との遊びの帰りである。

 本来、今日は朝から悠宇の家に行く――正確に言えば突撃訪問をするという目的があったが。そんなことは今の獅子はきれいさっぱり忘れ。今日の出来事。楽しかった出来事を思い出しつつ自宅へと向かっていた。


「っか、なんか飲み物欲しいな」


 そんな中ふと、獅子はコンビニに寄ろうと少し進行方向を変えて、コンビニのある通りの方へと歩き出した。


「コンビニコンビニ――って、俺なんか朝もコンビニ行こうとしてなかったか?うん?」


 歩きながら1人ごとをつぶやく獅子。


「――あっ!女神様」


 そして、特に思い出す必要がなかったことを思い出していた。


 今日の獅子は悠宇の家に朝から突撃訪問。

 悠宇の自宅内がどんな状況か確認すべく動いていたが。

 その際にクラス。学校のと言ってもいいかもしれない女神様が悠宇の近くに住んでいることを思い出し。

 もしかしたら女神様とも会えるかもしれない。なら手ぶらで行くのは自分のポイントがたまらないと考え買い物に――で、一度コンビニに行くことを考えていたりするのだが。

 そこへと向かう際に友人たちと遭遇、遊びに誘われそれっきりだったりする。

 もし友人たちの中に女性がいなければ参加せずに女神さまと遭遇するかもしれないルートを選んでいたかもしれないが――今日は遭遇したメンバーに女性が居たためあっという間に流された獅子だったりする。

 

 そんな獅子が数時間ぶりにコンビニのことを思い出し――いやたまたま寄ろうとしたところで女神様。海楓のことを思い出し。今日の自分は悠宇のところに行く予定だったことを思い出したのだった。


「って、こんな時間じゃさすがに女神様いないかー。悠宇は居るだろうが。夜に悠宇に会いに行ってもなーおもろくないし。って、まあ必ず居るから入れるか――でもまた悠宇のところまで行くのもな――近い気もするが――でも面倒だな。向き違うし」


 さらにぶつぶつつぶやくながら歩く獅子。

 するとコンビニの明かりが近くなって来て――。


「――うん?って、マジか!」


 急に目の前に現れた光景。人物により余計なことをいろいろと考えていた獅子はそんな事――女神様の事すらそんな事――というくくりにして、頭の中から追い出した。

 なぜなら今獅子が向かっていたコンビニの前には男性3名と女性1人が何やら話している光景が見えたのだが――明らかにナンパ。男性3人が女性にちょっかいを出しているところであり。

 そのちょっかいを出されている女性がそれはそれは物語の世界から出てきたのではないかという雰囲気のある女性だったからだ。


「金髪超絶美少女発見!」


 獅子。

 金髪の女性のところまであと数十メートル。

 状況をちゃんと把握してはないが。確実にあれは困っている女性――多分外国の子供?と判断して、今ここであの女性を助ければ――などなどという考えを脳内で超高速でシュミレーション。そして颯爽と現れる王子を演じるべく急接近を試みるのだった。

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