第19話 空から女の子――ではなく。目の前に女の子が!

「――なるほど。理解した。多分理解した。俺は――なんか知らんけど願えば線路が作れるようになってしまった…………いや、マジか」


 自宅に居たはずなのに気が付けば見知らぬ土地。そして先ほどから不思議な能力も使えることが分かった男。その名は尾頭悠宇である。

 自己紹介は大切なので何度でもしておく。

 もしかすると、誰かいるかもしれないから――。

 というか、悠宇しかこの場には人はまだいないため悠宇が1人でつぶやき続けている現状である。


 少し前に自信が願うと新しい線路が生まれてくる。作ることができると知った悠宇は何度か試し。あの後からさらに5メートルほど新しい線路を作っていた。

 そして悠宇自身がやっと頭の中でいろいろと理解していき――。

 自分が作れる線路幅は決まっていること。悠宇の後ろで線路に乗っている蒸気機関車の線路幅しか作れない。狭くも広くも願ったがそれは叶わず。同じ線路幅のみ作れる。また消すこともできた。つい先ほど悠宇はカーブ。曲がった線路を一度願ってみたが。願うとちょうどいい感じ。適度な感じで線路がゆっくり曲がりだした。さらに分岐点。ポイントも作ることができた。ポイントなどは精密な計算などなどが必要そうだが。悠宇の場合願えば作ることができた。

 そして適当に作った線路を消すことにも成功し。今はまっすぐまた線路を少し延ばしたところである。


「とりあえず特に障害物ないし。まっすぐ伸ばせるだけ延ばしててみていいかな?いいよな?誰もいないし。消すこともできるし」


 今の悠宇はというと、どこまで線路を延ばせるのか。自分が願えば線路が生まれるということはわかったが。無限なのか有限なのか知りたくなったため。とりあえずまっすぐ線路を延ばしてみることにしたところだった(実は今の現状に対応しつつあり。不思議な力が使えることが分かった悠宇。現状を楽しみだしていた)。


『まっすぐ――まっすぐ――』


 悠宇の後ろにある蒸気機関車の動かし方はまだわかっていない。

 でも何故か線路作りを始める悠宇だったが――もちろん誰も止める者がいないため、それからしばらく悠宇は何もないところから突然湧いてくる砂利。枕木。線路を見て楽しむことになるのだった。

 ちなみに数時間悠宇はそのまま線路が生まれるところを眺めているのだった。

 そしてある程度進んだところで悠宇はさらにあることに気が付いた。


「――これ俺が見ていなくても作れるのか?」


 あまりに線路が作られるのがゆっくりだったため。悠宇はあたりを見つつ線路を作っていたが。ふとしばらく線路の様子を確認せずに周りをキョロキョロと見ていると。その間も線路は狂いなくまっすぐ延びていた。そのためこれは今自分自身がまっすぐのびろと言ったので延び続けている?などと考え。


「――じゃあとりあえず今のところ何もないから。もし生き物が居るなら。その場所までまっすぐじゃなくてもいいから適当に繋げてくれ。って、さすがにそれは大雑把――って、できるのかよ!」


 少し注文を付けて、曖昧な感じもしたがそんなことを悠宇が線路に対してつぶやくと――また線路は淡い光を発しながら線路を作り出した。

 そして今度はまっすぐ――ではなく少し線路は曲がって作られていた。


「――うん?俺の適当な言葉でもちゃんと線路が作られだしたということは――ってか、生き物が居る方に今線路は延びだした?ということになるのか?」


 つまりはそういうことである。

 もしここで生き物が悠宇しか居なければ悠宇の願いは線路には届かない。

 でも今線路は悠宇の願いを聞き入れ再度延びだしている。なのでこの土地には――ということである。

 悠宇もそのことを理解したため。やっと自分の状況を思い出した。

 

「とりあえずこれでここがどこかわかる可能性が出てきたか。ってか――今は特にだが。このままだと水分も食べ物もないんだよな。それに今はちょうどいい気温だけどもし暗くなって極寒とか。またはこのまま晴れ続けて灼熱とかになると――俺やばいな。再度死ぬことになるかもしれない。いや、そもそも俺って死んだのか?マジでなんでこんなところに居るのか考えるのが先だったか?いや、でも線路が作られだしたから、できれば何とかって、そうか、線路だじゃダメか。移動するには蒸気機関車も何とかしないとだよな。目立っているくせに動かないし」


 延び行く線路の反対側をつぶやきながら見る悠宇。

 そこには悠宇がこの場所に来てから全く動く気配はないが。何故か準備さえできればいつでも動けますオーラを出している漆黒の蒸気機関車がある。


「――あれも何かしたら動くのか?」


 悠宇はそんなことをつぶやきながら。線路の方はほっておいても良さそうと判断して、蒸気機関車のある方。ボロボロの建物の方へと歩き出した。

 するとその時だった。


「――ほぇ」

「何ごとです!?えっ!?」


 ボロボロの建物へと歩きだした悠宇の少し手前になんの前触れもなく2つの人影が現れた。

 ホント唐突に。世界が歪んだとかそんなことは一切なく。パッと現れたのだった。


「――――はいっ!?」


 もちろん唐突に現れた影に驚き後ずさりする悠宇――だったが。


「うん?って――悠宇!」


 悠宇が反応したことにより。突如押して現れた人影がこちらを見た。


「えっ?あっ、悠宇先輩居るじゃないですか――じゃなくて外!?えっ?さっきまで悠宇先輩の家――あれ!って、ちょっと待って、今なんか大きなものが―――うんん!?あれって……SL!?」


 そしてもう1つの人影。ちかも悠宇の方を見て――と、思ったら周りの状況。いろいろな情報が一気に脳内へと入ったからか。キョロキョロしながら慌てふためきだしたのだった。ここに来たときの悠宇と似ており違いと言えばすぐに騒ぎ出したことだろう。


 ということで、突如として悠宇の居た場所が賑やかとなったのだった。

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