第20話 仲間は多い方が良い
ボロボロの駅舎?らしきものの方へと歩き出していた悠宇の目の前に現れた2つの影。それはよくよく知った2人だった。
「――えっ、海楓。ちかも――なんで?」
「それはこっちのセリフ――ってか、悠宇何してるの?って、ここどこ?」
悠宇の前に唐突に現れたのは海楓とちか。
2人とも制服姿で、学校で別れた時のままの感じに悠宇は思えた。というか、実は悠宇すでに数時間この場所に居たため。自分が学校帰りに――ということを少し忘れかけていたので、2人の姿を見て、自分の行動を改めて思い出すことができたのだった。
「ここどこですか!?私と海楓先輩室内に居たんですよ!?えっ!?」
「――ちか。会えてうれしいが――ちょっと落ち着け」
「いやいやいやいや、なんですかここ!って、えー!?ですよ!はいっ!ですよ!!」
ちなみに1人大騒ぎしているのがちかである。
なお、いきなり見知らぬ大地に飛ばされればちかのような反応をするのも普通である。
「いや、俺もわかっていないというか――っか、2人はなんでここに――」
「あっ、そういえば私。海楓先輩に無理矢理悠宇先輩のお爺ちゃんが大事にしていたSLに触れさせられて――」
「そんなことしたっけ?」
すっとボケる海楓だが。海楓がやったことである。
「しましたよ。海楓先輩。サラッと嘘言わないでくださいよ。って、悠宇先輩。海楓先輩がどんどん悪い人に私は見えてきたんですが――」
「それが本当の姿だ」
「ちょ、悠宇が酷いこと言ったー」
「家に居れば基本おっさんだ」
「ちょっと、丸聞こえなんですけど?」
「悠宇先輩。おっさんはさすがに――」
「胡坐かいて、おつまみポリポリ。そして人を召使のように使う」
「――まあおっさんに近いものかもしれませんね」
一瞬だけ悠宇が言いすぎ――と、思ったちかだったが。悠宇の話を聞くとすぐに納得するのだった。
「ちかちゃんがサラッと悠宇側に!?いや、それは元からかー」
見知らぬ土地に居るということを忘れそうな雰囲気で話している3人だが。ここで悠宇が話を戻した。
「はぁ――って、とりあえず、ちかたちもあの蒸気機関車に触ったらここに来たということか」
悠宇が話を戻すと、まずちかが『そうですそうです』と、言う感じで思い出したように海楓の方から悠宇の方を見つつ話した。
「あっ、えっと――多分ですが。なんか触れる瞬間――ってところでもう今この場所に居た気がします」
「俺と一緒か」
「ってか、悠宇。何があったの?模型ボロボロになってたじゃん」
「いや俺も帰ってきたら――でよ。泥棒かと思ったが――って、そうだ。確か模型が燃えていたんだが。あれ?でもちかたちは家に入れたのか?」
悠宇はこの場所へと来た際に最後に見た自宅の光景を思い出し2人に確認する。
「えっ?燃えてはいませんでした――あー、でも模型の奥の方は焦げていたというか――黒くなっていましたかね?」
「家は無事なのか――って、もしかして俺が音信不通になったとかで2人は探しに来てくれたということか?多分もう――深夜とかそんな時間だよな?」
「「えっ?」」
「――うん?」
悠宇がなんとなくこの場所に来てからそれくらい時間は立っている。すでに自宅の方では夜になっていると思い2人に確認してみたが。2人とも不思議な顔をした。その様子を見て、悠宇も違和感を感じ。そして改めて2人の姿を見て問いかけた。
「あれ――?もしかして、まだ学校が終わってそれほど時間経ってない?」
まさか。と、思いつつも悠宇が2人に確認をするが。
「ですよ?まだ――学校終わってすぐに海楓先輩とお店に向かって――臨時休業を知って、そのまま悠宇先輩の家に行きましたから。ねえ海楓先輩?」
「うん。多分1時間も経ってないと思うよ?」
ちかも海楓も悠宇は何を言っているのだろう?と、言う感じで返すのだった。
「――なんだと?俺――すでにこの場所で数時間5、6時間は居るような感覚なんだが――気のせいだったのか」
ちなみに悠宇の時間の感覚は実は正しかったのだが。今はまだ。正確には把握できない悠宇だった。
「えー、悠宇先輩大丈夫ですか?学校で悠宇先輩と別れてからそんなに時間経ってないですよ。って――荷物を悠宇先輩の家に置いてきちゃったから時間を確認できないんですが――」
「あっ、私も何も持ってないや」
「ちなみに俺も何も持ってないからな」
3人で話していると少しずつそれぞれの状況。こちらのことと向こうのことというべきか。本来悠宇たちが居る場所の情報が整えられていく。
それからは悠宇がメインでこちらの情報を2人に話した。
「つまりは――ここはどこかわからない。そして、そこにあるSLは悠宇先輩の家にあったものが実物大になった物な気がする。さらにさらに悠宇先輩はおかしな能力?を手に入れて、今生き物が居るところにこの線路を延ばしていると――いろいろ頭が混乱する状況ですね」
悠宇が説明すると、腕を組みながら。そして頷きながらちかが声に出しつつ確認をする。
「でもなんか楽しそうな場所だね。私たちしかいないなら自由に使えるんでしょ?」
なおその際海楓だけは何故か現状を楽しんでいるように見えるが――気のせい……。
「海楓。もうちょっと慌てるというか。海楓もなんか知恵出してくれよ。このままだとここにとどまることになるぞ?」
「でもねー。悠宇の話を聞いても意味わかんないことばかりだし――あっ、わかることといえばそこの建物に書いてある漢字『杜若』は「かきつばた」だと私は思うけどね。もしかしたらこの場所はあの漢字で『とわか』って読むからひらがな表記があるのかもだけど――でもまあ「とわか」読めなくもなかったような気がするけど――私的には万葉集とかで確か出てくる「かきつばた」の方がしっくりくるかな。って、でも悠宇やちかちゃんが居るから1人じゃないし私はここにとどまっても良いよくらいだね」
いや、気のせいではなく。海楓はこの今の状況をすでに楽しんでいたのだった。
「海楓の対応力がやばい」
「いや、だって、帰る方法わからないんでしょ?」
「です」
海楓の問いに素直に答える悠宇。そしてそれは事実である。今この場から帰る術はない。
「なら、もうここから出れない。ならここで少しでも快適に過ごす方法は――じゃない?」
「ちか。こんな簡単に状況って呑み込めるものなのか?」
海楓の様子を見つつ悠宇は多分同じ考えであるだろう。と思いつつちかにも確認をする。
「私は今超不安です。ってか、混乱中です。あっ、でもまあ確かに悠宇先輩と海楓先輩のお2人がいるから――そこまで怖さはないと言いますか。でも海楓先輩の落ち着きはすごいです」
すると、ちかの方は悠宇の予想通りの反応をしてくれた。
「だよな。つまり海楓がおかしい」
「ちょ、なんで私がおかしい認定されるのよ」
「おかしいから」
「もう。ってか、悠宇ここって何もないの?その――ボロの建物と機関車以外」
「ああ、後はさっきも見せた地道に伸びる線路くらいだな」
ちなみに線路の方は着実に進んでいた。
一瞬悠宇は海楓とちかという自分以外の生き物がこの場に現れたため。もしかすると線路がぐるっとUターンしてくるのではないだろうかと思ったが。そんなことは
なく。線路は着実に延びていた。
なお、スピードは速くないのでまだ3人でちょっと小走りすれば線路が生まれているところにはすぐに行くことができた。
「できれば服とかほしいね。制服のままは――だから」
自分の着ている制服を見ながら海楓がつぶやく。
「あー、2人は制服のままだもんな」
悠宇も改めて2人の姿を見る。
そしてこれは少し前に、今更ながら気が付いたことだが。今悠宇たちは外に居る。
しかしこの場所へと飛ばされたときは室内に居たので靴は脱いでいたはずだが――今の3人はそれぞれシンプルな靴。革製?のような靴を履いていた。あまりにピッタリフィットしていたため。3人で話している途中まで気が付かなかった。
つまり、必要なものは勝手に装備されたということである。
それもあって結果としてさらに3人の頭の中を混乱させたのだが――いや、2人の頭の中だけだ。海楓に関しては『そいうこともあるんじゃない?そもそも瞬間移動できた時点でいろいろぶっ飛んでるじゃん』というスタンスだった。
「ってか、悠宇なんで着替えてるわけ?」
「いやいや家帰ったら着替えるだろ」
「別に誰かに見られるわけじゃなないのに?真面目だねー。私ならまあ――自分の家から出ないなら適当に悠宇のシャツ着てるね」
「なぜに俺のシャツが海楓の家にあるのか――それの方が問題なんだが」
ちなみに海楓の家には何故か悠宇の私物があったりする。
「そりゃ悠宇のところに行ったとき借りたのがあるから」
「あっ、ちなみに私も悠宇先輩の上着2着借りっぱなしです」
そして新たな情報。ちかも悠宇の私物を持っていた。
「おいお前たちは俺の私物を何故に勝手に持っていっている――ってそれは今は置いておいて――どうすっかねーこれから」
「ですねー」
「はいはーい。とりあえず座りたいから、あのボロの建物のところ行こうよ」
「――海楓がマジで楽しんでいるようでよかったよ」
ある意味どこに居ても自由な海楓。いや、悠宇とちかしかいない場所だから自由なのかもしれないが。現状海楓主導でことは進んでいく。
その後3人は蒸気機関車の近く。ボロボロの建物の方へと足を進めたのだった。
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