第107話 運転席では―― ◆

 漆黒の蒸気機関車が実りの町の作りかけの駅の先で脱線。転覆する数分前の事。


 バキッ――。

 

 蒸気機関車の車内では不穏な音がしていた。


「………………あっ」


 そして、杜若を出てずっと自分の行動に公開していたコールは、自分がしでかしたことを理解するまで10秒ほど時間を費やした。


 実りの町に居る数少ない若いに入る女性――それがコール。

 しかし今までのコールは基本シェアトの護衛。そのため常に鍛えたりしていたため。基本初めてコールを見た人のほとんどが男性と勘違いする身体つきだ。そもそもコール自身も何故かイケメン。美男子を目指していたこともあり。女性と気が付くのはかなり難しい。稀に即見破る者もいるが――。

 というコールが女性ということはちょっとおいて起き。

 コールは鍛えていた。

 それは実りの町でならトップレベルの強さ。戦い喧嘩ならそう簡単には負けないだろう。

 そんな力を持っていたコールは力一杯ハンドルを押し込みながら。少しでも早く実りの町にシェアトがされたことを伝えようとしていた。

 そして移動中は自分のミスを悔やんだりしており。無駄に手に力が入っていることに本人は気が付いていなかった。

 そんな時だった。

 聞いてはいけない音が運転席に響いた。


「――これは……なんだ?」


 コールは手に持っているハンドルを確認する。

 それは本来機関車とくっついている物。

 それが根元でぽっきりと折れて、持ち手部分が今コールの手の中にある。


 蒸気機関車は最高速度で走行中だ。


「――ぶ、ブレーキ!」


 コールが慌ててハンドルを戻そうとするも、折れた物はそう簡単にくっつかない。さらに運の悪いことにもう目の前が実りの町。正面にはもう駅も見えている。幸いにも実りの町から先にも古い線路は続いている。なので止まれなくても何とかなる――などろコールが思った瞬間。全速力で実りの町を機関車は通過。

 駅には何人か人影があった気がするがコールは誰が居るのかまではわからなかった。

 と、そんな時だった。ふわっと、浮遊感が身体を襲った。


「――何!?」


 気が付いた時は車内が斜めになっていた。

 どうやら機関車の重さに古い線路が耐えれなかったらしい。


「――くそっ」

 

 機関車が転覆――する直前。普段から鍛えていたコールはとっさの反応が出来。地面とは反対側になる方の出口から運転席を飛び出した。

 

「――がはっ」


 そして地面に身体を打ち付けながら転がり――止まった。

 あたりは一面砂埃となっていたのだった。

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