第50話 運転開始 ★

「よーし。さくっと残った残党を撃破するとするかー」


 これはもうすぐ全国民から英雄と呼ばれ。すべての国民に慕われる?はずの未来が約束されていた男が元気に悪の撃退活動をしていたある日の出来事である。


 ★


 今日も長い前髪が風になびき無駄に目立っているそのうち英雄となる男。オニト。ちなみに前髪の反対側。後頭部は今日も太陽の光がまぶしく反射し輝いている。そのためオニトがやってくれば、そこそこ離れた場所でも見通しが良ければ存在に気が付けたりするレベルだった。


「この全世界まるっと俺のものにするため頑張るぞ!おぉ!」


 そのためオニトが1人元気にそんな掛け声とともに、町の駅へと歩いていると人が集まって来た。


「オニトさん。よろしくお願いします」


 わたわたとオニトの元へと小走りでやって来た中年男性がまずオニトに挨拶をするとそれに続くようにやって来た人もそれぞれオニトに声をかける。


「何か必要なものがあれば何でも」

「人もなんでも貸しだします」

「早くあの魔王を――」

「子供たちが安心して過ごせる町にしてください」

「OKOK。全部俺にまかせちゃえ!ささっと片付けてくるからよ」」


 大雑把に周りの声を聞き。片手を掲げながら受け答えしつつオニトは駅の方へと進みだす。


 多くの市民に囲まれつつ。オニトは駅へとやってくると。簡易な駅舎には似合わない漆黒の蒸気機関車と、その後ろに連結されている3両のこれまた漆黒の客車を見つつ頷く。


「オニトさんに言われた通りピカピカに修理しておきました。魔石の方も問題なしです」


 再度中年男性が姿勢を低くしてオニトに声をかける。


「OKOK。完璧だ。エーテル域で見つけたこれが動くか心配だったが。問題なさそうだな。ふははははっ。さすが俺!よし。いいぞいいぞ。これからの移動はすべてこれだな。線路も順調だろ?」


 説明を受けながらオニトは目の前の輝くボディを満足げに見つつ返事をする。


「はい。問題なく各地を結ぶように作業が進んでいるとのことです」

「よし。じゃとっとと終わらせて、少し進捗状況を見てくるか。おい!手伝いの奴らはすでに乗ってるのか?もう出るぞ!」

「はい。すでに最後尾の一般車に」

「よーし。じゃ。みんな!今から残党ぶっ飛ばしてくるからな!明日の夜は大宴会だ!」

「「「おおおっ!」」」


 オニトが力強くこぶしを上げ。声を張り上げると。周りで見ていた人々も一斉に声を上げる。

 その後オニトは先頭の車両に乗り込むと窓を開ける。


「おーし。出発進行だ!いけ!」


 ヴォォォォォ――。


 窓から身を乗り出したオニトが叫ぶと漆黒の蒸気機関車がけたたまし汽笛を鳴らし。ガッコン。と車体を揺らしながらゆっくり走り出す。

 そして町の人が走り出した蒸気機関車の方に手を振るとそれにオニト。そして後方の車両に乗っている人々も窓から身を乗り出し手を振り返す。

 それから蒸気機関車はどんどんとスピードをあげ整備の終えた線路上を快調に進んでいくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る