第153話 再度実りの町へ

 現在の悠宇たちは朝食後。そして、駅に止まっている蒸気機関車のところへと移動したところだった。


「ってか――機関車ここにあるの――なんでコールさんいないんだ?」

「それもそうですね」


 蒸気機関車の前でふと悠宇がつぶやくと隣に来たちかも蒸気機関車を見つつつぶやいた。


「もしかして、コールさんに何かあって、機関車だけ戻ってきているとか?」


 すると、悠宇の背後から、両肩に手を置きながら。そして悠宇とちかの間から覗き込むように海楓も会話に入って来た。

 ちなみに少しちかが複雑そうな表情をしたことに、海楓は気が付いていたが――ニコニコしたまま触れずにそのまま話を続けた。


「か――普通にこの近くにいる。戻って来て私たちが居ないから探した――って、それだとさすがにさっき探したときに見つかっているだろうし。そもそも朝ごはん食べている時に来るよねー」

「海楓。地味にのしかかるな」

「問題ないでしょ?」

「どういうことだよ」

「だって私空気みたいに軽いし。にひひっ」

「……ちか。これどうしたらいい?」

「し、知りませんよ」


 ちなみに海楓に軽くのしかかられている悠宇だが。心の中では、ちかの方が軽い。とかとか思っているのだが――それを口にするとさらにややこしくなるため。そのことは触れなかった。


「ねえ悠宇悠宇。コールの事はほっておいて大丈夫よ」


  すると今度は悠宇の隣。ちかの居る側とは反対にシェアトが悠宇の腕に絡みつくように会話に加わって来た。

 今ここに4人以外の人が居れば。なんだこの男となるだろう。両手に華。プラス1状態だからだ。でも当の本人。悠宇はというと――。


「あの動けない。ってか。シェアトは一番コールさんを心配するべきと思うんだけど――」

「なんで?」

「いや、なんでって。今のところ唯一の――なんていうか。国の人というか。付いてきてくれた人だし」

「問題ないわ。私もう悠宇のものだから」

「いや、だからどうしてそうなる」

「もう、シェアト悠宇から離れる」


 悠宇とシェアトが話していると、その間に入り込むかのように。悠宇の腕にシェアトの腕を軽く引っ張りつつ。ちかが2人の間に話しながら入って来た。

 なお、シェアトは全く離す気がないためしっかり悠宇にしがみ付くのだった。


「悠宇いいねー。超モテモテじゃん」

「海楓。そろそろ肩がつらくなってきた」

「そんな事ないでしょ」

「そんな事ある。って、動けない」

「まあまあ」

「まあまあじゃない。そもそも今から実りの町の方に行くんじゃなかったか?」

「悠宇がイチャイチャハーレム始めなかったらもう出発してるよねー」

「おかしい。いろいろおかしいが――って、とにかく全員離れよう。というか落ち着け」

「無理ー」

「シェアト。 離す」

「悠宇は私のー」


 悠宇の声は――多分3人に聞こえているのだが。というか。普通に聞こえているのに、なかなか悠宇から離れない3人だった。


 と、無駄な時間があったが。そのあと何とか悠宇は3人を自分から離し――何とか蒸気機関車へと乗り込んだ。


「はぁ。出発まで何分かかってるんだよ」

「1時間くらいじゃない?」

「そんなに話してたか――」


 運転席に悠宇が少し疲れながら座りつつつぶやくと。再度悠宇の後ろ。先ほどと同じポジションをゲットした海楓が話しかけてきた。

 

「悠宇がなかなか動かないから」

「嫌だからな。って、またこの話をすると進まん」

「ところで悠宇」

「――なんだよ」

「今からコールさんの行方探すんだよね?」

「まあ、このあたりにはいないみたいだし。何かあったかも――だから」

「でもさ。こういう時こそ。シェアトの力使うべきじゃない?」

「シェアトの力?」

「あっ、そっか。ここは精霊居るんだから。精霊に聞けばいいんだ!」


 悠宇と海楓が話していると思い出したかのようにシェアトが手をポンと軽く叩きながら思い出した。かのようにそんなことを言ったのだった。

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