第90話 我が名はシッシ ◆
シーマ地方を出発してからしばらく。
予定では普通域。正確に言うと普通域というところにあるdsa国の北にある町をとりあえず目指していた茶髪のボサボサ頭の男。
しかし現在彼は気が付ていなかったが。彼はシーマ地方を出た後。真逆の南へと進んでおり。魔物退治をしつつ山を登り――くだり。登りくだりを繰り返し。気が付けばマナ域と言われているレオ帝国のシッカジモアとアミジャギュア。と言われる町の間にある山間部を歩いていたが――本人はそのことを知らない。
実は途中の山中でシッカジモアとアミジャギュアを結んでいる鉄道が走っていたのだが。それがトンネル内だったこともあり。彼は気が付かずに線路を通過。レオ帝国の中心部へと向かっていた。いや、現在は歩いてはいなかった。何故なら。
「我の名はシッシ!シッシだったか。いい名前だ」
自分の名前を思い出した――と、思い込んでいるためだ。
そして何故か自分の名前?と思い込んでいる名前を何回かつぶやいていた。
「シッシ。シッシ。うんうん。王になる男シッシ。そうだな。これで王になれる。この後町に着いたら『王になる男シッシ』と、毎回自己紹介しよう。よしまずは町に向かうぞ!」
なお、レオ帝国に入ってしばらく経っているが。このレオ帝国もかなり大きな国。南北に長いためそう簡単には中心部にはたどり着かな――。
「うん?看板――」
少し自分の名前を連呼していろいろ言っていた茶髪のボサボサ頭の男。改めてシッシ。シッシはやっと再度歩き出したのだが。歩き出してすぐ。山道からちゃんと整備された道路へと出た。そしてその道にはちょうど看板があり――。
「――シッカジモアは東に30キロ?なんで他国の町の名前が書いてあるんだよ。って、もしかして俺また間違って――いや、待て待て、誰にも気が付かれていない。そうだ。王になる男シッシは今いろいろなところを見て回っている――そう、迷子ではない。方向音痴でもない。とりあえずだ――今歩いてきた道を戻れば問題ないはずだ。よし。王になる男シッシ。えっと――レオ帝国はまたそのうち訪れるとしよう!じゃ!」
特に誰かが聞いていたわけではない。というか、誰もいないところで一通り話したシッシは先ほどまで歩いてきた道をまた戻りだした。
やっとのことでシッシは北へと歩き出した。
そしてこの後のシッシはとにかく北へと歩き続けた。
本当はシーマ地方に再度立ち寄ることもできたが。また来たと思われる可能性があったためシッシはシーマ地方は通過。そのまま北へと進んだ。
本当は途中にSCAWと言われる普通域から独立?しているような地下都市があったりしたのだが。そこには気が付かず。そしてその近くにあったラー地方にも気が付くことなく。気が付けばシッシは北へと歩き続け。
「――なんでどこ行っても長距離移動できるものがもないんだよ!なんか途中で爆発でもしたのかってくらい穴だらけのところはあったけどよー」
歩き続けてボロボロになった頃。そんなことを叫びつつ普通域dsa国の北東にある大きな町。ゴーヤ地方へと到着したのだった。
ちなみにこのゴーヤ地方を南東へと進んでいくと実りの町とドーナツ国という町があるのだが。この時ゴーヤ地方に到着したシッシはまだ何も知らない。
そしてそのシッシ。まだ知らない実りの町を中心にとある異世界人たちが活躍して鉄道網を再構築していることを知るのは――もう少し後の事。
「とりあえず酒と飯だ!あっ、かわいい子もせっかくだし探そう」
シッシ。ゴーヤ地方の夜の町へと消えていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます