第140話 消失……?

「――ただいまー」


 真っ暗な家へと帰って来た悠宇。

 1人で帰ってきたため。今はとっても静かである。

 というか。少し前までがにぎやかすぎたのだが――この静かな空間があるのはいつもの事。というかこれが本来の悠宇の家の姿である。


「なんかシェアトあのままでよかったのだろうか……」


 電気を付けて荷物を置きつつ悠宇がつぶやく。

 かなり重要なことなのだが。どうも重要に感じられていない事。もちろんそれはシェアトの事である。本来この世界にはいない人が普通に居る。

 この状態は果たして――などと思いつつ。だったが。


「――疲れたから。今日はとりあえず休むか」


 悠宇は軽く背伸びをし。とりあえずシャワーを浴びようと『着替え着替え――』などと思いつつ。室内へと進む。

 電気を付ければいつも通りの世界が広がっている。

 悠宇から見れば何も驚くことはない空間。足の踏み場がない――と、多くの人が言うだろうが。悠宇にとってはいつもの事。電気さえつければ普通に歩けるところを歩いていく。

 少し前ならボロボロになった姿をいきなり見たためしばらくは見るたびに驚く。気に留めるような事があったが。今の悠宇はそこまではなかった。そりゃ全く気に止まらないということはないが――今もボロボロのところはボロボロの為。でもどのような仕組みなのかわからないが。勝手に元通りに少しずつなっているということもあり。今の悠宇はちらっと見る程度で済んでいた。


 そのためだろう。

 悠宇はとあることにこの時は気が付けなかった。


 蒸気機関車がことに。


 そのあとも悠宇は結局蒸気機関車の事にはこの日は気が付かなかった。


 ◆


 これは悠宇が知らない時のことだが。向こうの世界では蒸気機関車の脱線事故が起きていた。

 コールがいろいろと1人で妄想し暴走――というと少しコールが可哀そうとなってしまうが。コールとしては本当にシェアトのことを心配していたのだが……まあとりあえず。コールが急にいなくなったシェアトや悠宇たちにより少し気が動転。大慌てでみんなのところへと戻った結果。蒸気機関車のブレーキが破損。

 ポッキリと折れてしまったため。制御が出来なくなった蒸気機関車は――止まることが出来ず。脱線。脱線によろ車体がボロボロになってしまった。

 ということを悠宇が知ると――今度は悠宇が少し取り乱すようなことになってしまったかもだが……。

 先に言ってしまうと。悠宇はそんな脱線した蒸気機関車を見ることはない。

 ないのである。

 だってあの蒸気機関車は――。


『――うーん。もしこの機関車に何かあったらと思うと心配だ。心配だ。脱線でもしようもんなら。そりゃ大事だ。さすがの俺にも脱線した機関車を簡単に戻す能力――いや……待てよ?あるかもしれねぇーじゃん!』


 元はと言えばあの男の所有物なのだから。

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