第70話 人は見た目で――

「うん?これはどういうこと?私はてっきり悠宇と海楓って結婚してるみたいに思ってたけど――実はちかと?いや――もしかして、悠宇と海楓の子供――ってそれにしては似てないか。って、ちかの髪色ってさなんか――?」


 唐突に始まった悠宇と海楓、ちかの関係探り。シェアトは楽しそうに3人を見ている。

 ちなみにコールは1人大人の余裕とでもいう雰囲気を出し。口を挟まず見学している様子だった。


「ちょちぃ、シェアトさん。変な事言わないで」


 いろいろ想像を膨らませたシェアトをまず止めたのは、むせ返っていたちかだったが。


「だからちか。シェアトでいいって」


 すると、さん呼びがやはり嫌なのかシェアトがちかに指摘をすると。ちかはそれは今は関係ない――といった表情をしつつも。何か諦めた様子で一息ついてから再度シェアトに話した。


「――あー、もうシェアト。えっと、その悠宇は誰とも結婚してないから」

「あのー。なんで本人いるのにちかが答えているのか」


 ちかの言葉に悠宇が反応する。それもそうだ。今ここには悠宇が居る。運転しているとは言え。話せない状況ではない。


「悠宇。いいの。ちかちゃんが答えたいんだよ」


 ちかが1人慌ててシェアトの問いに答えていると。海楓が悠宇に声をかけた。その際の表情はすごく今の状況を楽しんでいるような状況だった。簡単に言えばニヤニヤ顔だ。


「海楓先輩ニヤニヤしない」


 そのため即ちかが突っ込んできていたが。


「ほら、楽しそうじゃん」


 海楓には効果なしである。

 結果としてちかが1人騒ぐ?形でそのまま話は進んだ。


「あれ?もしかして悠宇とちかが正室?」

「ち、違いますからね!?」

「おっ、ちか、いい反応。これは何かあるね。うんうん」

「もしもーし。シェアト?俺からも言うが。どっちともそういう関係じゃないから」

「シェアト。実は2人ともとすでに関係があるんだよ」

「海楓は勝手なことを普通にサラッと言わない」


 それから社内では何故か悠宇と誰がくっついているか。という話が続くのだった。ちなみにコールはにこやかに4人。同年代4人の会話を聞きながらのんびりしていたのだった。


「あー、もう。こんな話はもうやめましょう。って、そうだ、シェアトの能力。能力について教えてよ」

「私の能力?」

「そうそう」


 そしてさらに少しして、悠宇に関しての話が続いていたが。何故かちかが我慢?できなくなったのか。無理矢理話を変えた。


「あっ、私も気になるかも」


 すると、さすがに同じ話題ばかりは飽きてきたのか。海楓もちかの話題に今度は乗っかったので、シェアトが自身の能力に関して話し出した。

 

「まあなんていうの。私は精霊と話せるんだよ」


 そしていきなりそこそこぶっ飛んだ。ファンタジー?な話が始まったが。さすがにすでにいろいろと経験した悠宇たちは特に驚くことなくシェアトの話を聞いた。

 ちなみにシェアトは自身の話をしつつ勝手にコールの能力のことを話していた。

 と言ってもコールの能力は自身の身体を強化するというもので、戦いに特化したものらしい。

 その際に少しコールが自分で自身の身体の自慢をしようとしていたが。


「コールの話はいいでしょ」


 と、シェアトに簡単に蹴とばされたため。コールは話をできずだったりする。


「まあだから私は見えないものと話せるってことだよ。ちなみにこの周りは少しだけ精霊いるね。近寄っては来てない見たいだけど」

「私たちは全くわかんないけどね」

「うん」

「まあ私も見えるわけじゃなくて、なんとなく――って感じなんだけど。頭の中で話せてね。一応自分の警護くらいはできるわよ」

「それは便利だね」

「まあ精霊の居ないところ。地下とか精霊の少ないところだと無意味な能力だけどね。あと、触ることはできないから。自分の警護ができるって言っても危険を知らせてくれるだけだから。戦う必要はあるんだけどね。まあそのためにコールが私のそばにはいるんだよ。コールとはかれこれ――どれくらい一緒だった?」

「もう十年は超えてますね。シェアト様が生まれてすぐから私はいましたから」

「だって。って、私の話はこれくらいでいいでしょ?やっぱりこういう時は恋バナでしょ!」

「なんで戻るの!?」


 せっかく話を変えたつもりだったちかの悲鳴が運転室内に響く。


「なるほどなるほどー。ちかは悠宇が好きと」


 そして先ほどまでの自分の能力の話はなかったかのように、シェアトがちかを見ながら、ニコニコとつぶやきだした。


「ちょちょだからそれは――!」


 ちかが再度慌てるがそんなのお構いなくシェアトは話を続け今度は海楓を見る。


「そして、海楓も悠宇が好き」

「まあねえー、長い付き合いだから」

「えっ!?」


 すると、海楓の問いにぎょっとした表情をするちか。意外――ではないのだが。あっさりと認めたことに驚いたのだった。

 だが――海楓という人間は楽しい方向に今舵をきりまくっていたので――。


「あっ、ラブの好きじゃないよ?ライクだよ。ちかちゃん慌てすぎー」


 なんやかんやで海楓にいじられているちかだった。


「あっ、ああ。って、私も悠宇先輩は――」

「「いやいや(ちか)ちかちゃんは見ていたらわかる」」

「ハモるなーって、なんでシェアトさんと海楓先輩息ぴったりなの!?」

「だから――もう。何度も言わせないでよ。シェアトでいいってだから」

「――あっ、その――って、そうだよ!シェアトも隣にってか、コールさんと仲良しじゃん。ずっと一緒なんでしょ?」


 気が付けば顔を真っ赤にしているちかだったが。何とか。何とかしてもう1回話を変えようと――そして攻撃の矛先をシェアトに向くように必死に考えて出した答えが。先ほど聞いたずっと一緒――と、いうシェアトと、コールの事だったのだが。


「コールと?」


 シェアトは真顔で答えた。特に何もないと言わんばかりに。


「いや、だって着替えの時とかも一緒だったし」

「あっ、確かにシェアトって年上。叔父様好き?」


 あまりに真顔だったので、シェアトが演技をしていると思ったちかは何とか記憶を思い出しつつ。突っ込もうとした。

 すると、海楓も少し気になったのかちか側について援護射撃――だったのだが。

 この時はとある勘違いをしていたのだった。

 残りののうち2人は顔を見合わせて「完璧」という合図をしており。もう1人はというと――先ほどからほとんど会話には入らず。いや、入らずのんびりとハンドルを握っていたのだが。

 さすがにこの勘違い話――と、思い。口を開いたのだった。


「おいおいちか、海楓。コールさん。女性だぞ?」

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