第71話 意外と見ている
『おいおい。ちか、海楓。コールさん。女性だぞ?』
少しぶりに声を出した悠宇。
しかし悠宇の言葉により2人が目の覚めるような衝撃を受けることとなった。
「「――――――えぇ!?」」
悠宇の言葉にちかと海楓が『いやいや何その冗談』といった感じの反応をし。コールを見たのだが。
「――ぶっ」
「――」
ちかと海楓の視線を集めたコールがないか言うより早くシェアトが噴き出した。
そしてコールが何とも言えない表情をしている。と、思えば何故か急に笑みをこぼして頷きだした。まるで勝った。とでも言わんばかりだ。
「――ど、ど、どういうこと?」
「コールさんって――えっ!?」
「「男だよね?」」
笑うシェアトと、頷くコールを見て、その後顔を見合わせながらちかと海楓が首を傾げた。
「ふふっ。コール。良かったねー。完璧じゃん。にしてもここまではっきりバレてないって久しぶり――ふふっ。いや、笑っちゃだけど、ほんとコール男になりそう。ってことで、こんな見た目だけどコールは女よ」
ちかと海楓が少し混乱していると。その様子があまりにもよかった。自分たちの作戦通りだったため。シェアトはご機嫌となり。種明かしをするかのように少し話し出した――が。少し笑いながら話した後。シェアトは笑うのをやめて、悠宇の方を少し真面目な表情に変えてから見た。
「で。悠宇はなんでコールが女だと思ったの?」
そして、大事な確認作業と言わんばかりに悠宇に話しかけたのだった。
「えっと、まあ初めから確証があったわけではないですけど――」
「でも、ぱっと見た時のコールは筋肉質。戦いばかりさせてるから。服を脱いだら傷だらけ。あっ、それはまだ知らないか。でも、見た目も短髪のイケメンでしょ?そう簡単にわからないと思うんだけど?多分町でも知らないでいる人多いと思うんだけど。それなのに来たばかりの悠宇だけが気が付いたのは気になるのよねー」
「うんうん。悠宇殿が何故私のことに気が付いたか。教えてもらいたいですね。今後の参考までに」
話ながら少しずつ悠宇に近寄るシェアトとコール。なお運転席内狭い。すぐに悠宇は逃げ道をなくす。というかそもそも悠宇は運転中なので、逃げるとかそういうことはできないのでシェアトとコールにはすぐ囲まれた。
「――えっ、この流れ……」
「本当にコールさん女性……?」
「嘘?えっ?ドッキリとかじゃなくて?普通にイケメン――」
「ちょっと待ってさすがに待ってよ。嘘でしょ?」
シェアトとコールが悠宇に迫っている時。近くではちかと海楓がまだ混乱していたが、そちらにはシェアトもコールも気にする素振りはなく。
今は悠宇だけを見ていた。
そんな2人に見られつつ悠宇はというと隠すことでもないので運転をしつつ。どうしてコールが女と思っていたのか答えだした。
「えっと、もう一度言いますが。初めから確証があったというわけではですから。単にちらちら見えた行動といいますか。例えば初めの時。シェアトが――まあ薄着で出てきたとき。あの時コールさんが普通にシェアトと一緒に入っていきましたし」
「そういえば。ああいう時。男性が入ることは――ないわね。コールのミスね」
「まあ、そうそうないと思いますね。よほど信頼――家族とか。またはそういう関係?じゃないと」
「うんうん。コール。今後は私の着替え中に入らない事。そうね私の部屋入室禁止」
「えっ、ちょシェアト様。それだとシェアト様のお着替えが――」
「大丈夫。着替えは悠宇がしてくれるわ」
「それはそれでおかしいですからね?」
少しずつシェアトの暴走?無茶ぶり?にも慣れつつある悠宇。冷静に返すが――。
「早くも悠宇もサラッと返すようになって来たわね。まあとりあえずよ。でもさすがに杜若まで行けば人も居ないでしょうから。そこまで気にしなくても――って、悠宇。他は?それだけじゃないでしょ?コールが女って思った理由。私ならいくつか気になることがあって初めて確定すると思うけど?」
「あー、いや、他と言われと。なんとなく。コールさんの身体つきが女性言いますか。確かにぱっと見は男性。でもよくよく見るとなんか丸みがあるような――と思っていたのと。でも一番はやはり着替えのところですね」
「なんと。悠宇殿そこまで見ていましたか。もっと鍛えないとですかね」
「もちろんはじめは男性と思ってましたよ。ってか、コールさん声も男性に近いというか――そういう真似も?」
「あー。悠宇。それガチ。もともとコールこんな声。喉仏もあるしね」
「えっ?」
シェアトの声に反応した悠宇がコールの方を見る。そして悠宇がよくよくコールの首元を確認すると確かに喉仏があった。それはさすがに悠宇。気が付いていなかった。というかこれに気が付いていたら。男と悠宇は思い込んだだろう。
「いやー、声に関しては。昔からで」
何故か照れるように答えるコール。頭をポリポリとかいている。
「まあ女性でも喉仏がしっかりわかる人はいるでしょ」
「――いるのかな?海楓?」
シェアトの言葉に悠宇は自身がなかったため先ほどから話しの輪に入れていない。海楓たちの方を見つつ声をかけたが――。
「コールさんが女」
「いや――」
「あっ。この2人まだ現実受け入れてないわ」
「まあコールの変装?は悠宇以外には効果ありと。コールよかったわね。ちゃんと男性に見られていて」
「はい。でも悠宇殿には効果がありませんでしたからね。これからもシェアト様を守るためにも精進します」
「まあ私は悠宇に守ってもらう予定だけど」
「あの――シェアト?その設定いつまで続く?」
「えっ?婚約は本気よ」
「――マジですか」
「マジマジ」
「――軽く言われても――」
悠宇たちを乗せた機関車は運転室から賑やかな?声を漏らしながら、まもなく杜若へと到着する。
ヴォォォォォ……。
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