第57話 羨ましい
『どうするって言われてもな』
『だね。これは悠宇が本当に婿に後日行く流れで――今は結婚』
『おい、海楓。お前楽しんでるな?』
『えー』
『こういう時にふざけるな』
『そ、そうですよ。海楓先輩。このままだと、悠宇先輩戻れなくなりますよ?』
『まあでも――せっかく悠宇は主人公になれそうだから』
『海楓』
『うん?』
『お黙り』
『えー』
ガクたちと話しているシェアトの視線の端では悠宇。海楓。ちかがコソコソと話している。
『とりあえず――ちか。なんか方法ないか?』
『なんで私に丸投げするんですか』
『いや、現状俺たちにできることが――ね。部外者だし』
『――まあそれは――って、まさかこんなことになっていくとは――』
唐突に現れた3人が安全というのは今のところわからない。
でもシェアトには自身の能力で悠宇たちのことを確認する術がある。
シェアトの能力というのは、精霊と会話し力を借りることができる能力。この世界でもとっても珍しい能力であり。基本伏せられているが。すでにそこそこ多くの人に広まっているのが現状。
そしてこの能力は敵対勢力から見るとかなり厄介だ。精霊と会話が出来ない者からすれば、もしシェアトが精霊を使い内情を探っていても、精霊の姿が見えないのでわからないからだ。
まあ実はシェアト自身も精霊の姿がはっきりと見えるわけではないし。なんとなく雰囲気で存在が分かり。近くに居るとやり取りができるといったものであるが。だからそこまで万能――ではないのだが。でも噂が大きくなり。シェアトの能力は危険と勝手に判断している敵対勢力の人は多い。また仲間ですら能力についてはちゃんと把握できていない者が多かったりする。
なお、この能力は、外部と遮断しているような場所。または地下などでは精霊とやり取りをすることは難しい。なので、現在の場所にシェアトは来てからは精霊とのやり取りは出来ていない。
本当は周りが過大評価しすぎているだけなのだが――一度広まった噂の収拾はもうできない。
シェアトが生きている限る。この能力は敵対勢力から見ればまずどうにかしたい事となっている。
シェアトがまだ幼ければそこまで精霊を使いこなせていないだろうという考えも生まれていただろうが。この地域。国の場合。すでにシェアトの年齢でももう大人扱い。つまり十分に能力は使えると思われるのが普通。そのためシェアトはまず狙われていた。しかし現在はどこにいるかわからず。生死もわからないことになっているため敵対勢力の一部が血眼になって探しているのだった。
ちなみに、シェアト自身もいつもなら本当は自分の能力で国のため。みんなのためになりたいと心の中では思っている。思っているが――。
今はのシェアトはと言うと……。
「――」
ガクと話しつつも。視線の端に入る3人の仲の良い雰囲気を見てもやもやとしているだけで、もしこの場に精霊が居ればシェアトは3人の様子についてもっと聞いて来ようと。仲良くなるために精霊を使おうと。などとすごく個人的なお願いしか頭の中には浮かんでいなかったのだった。
本当はシェアトそこまで気にするほどの大物ではない。そりゃ覚醒すれば厄介この上ないが。今は違う。でも、それは周りの者にはわからない事である。
今のシェアトはただ同年代の友達が欲しいだけの少女だった。
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