第84話 お出かけ!

「まず、今の姿のシェアトは外に出せないな」

「「うん」」


 シェアトを見つつつぶやく悠宇に海楓とちかが同じようにシェアトを見つつ同意する。


「なんで!?」


 一方のシェアトは悠宇たちの言葉に驚きつつ。自分が着ているドレスを少し持ち上げくるりと回る。

 もちろんシェアトが普段住んでいるところなら。この姿で出歩いても全く問題ないのだろう。しかし今シェアトが居るのは別世界――悠宇たちの世界だ。


「ドレスを着て町を歩いている人は居ないですからね」

「えっ?そうなの?って、そうか。向こうでも町の人はドレス着ないものね。いつもドレス着ているのは貴族くらいかしら?こっちでもそうなのね」

「まあそういうことというか。とにかく――今の姿では無理だな。じゃなくても目立ちそうだし」

「じゃあ脱げばいい?」


 すると、何故かその場にドレスを脱ごうとするやんちゃ娘がいた。


「ちょちょ、脱ぐな」

「シェアト悠宇先輩の前でなんで脱いでるの!」


 悠宇が明後日の方向を見ると同時に、慌ててちかがシェアトを止める。


「えっ?婚約者だし?私がいいんだから」

「それでも――って、このままってわけにもですから着替えは確実に要りますね」

「だな。それは――海楓とちかに任せるしかないか」


 さすがに悠宇は、女性の服装に何か言えるほどの知識はない。なのでこのことに関しては海楓とちかに任せた。


「服を買いに行くにしても――だね。まず私の家の方が近い?」

「だな。海楓に服を借りるのがベストかと」

「じゃあちょっと取って来るから待ってて」


 それから海楓が自宅へと一度帰る。シェアトが付いて行こうとしたがそれは悠宇とちかが止めた。


「――なんか杜若――に似ている?いや、建物が見えるから少し発展?しているのかしら」


 それから海楓が戻って来るまでの間。シェアトは窓から外の様子をまず見ていた。


「杜若よりかは良いというか。人は居るぞ」

「建物もありますね。あそこはホント駅しかなかったですから。昔は集落?があったんですかね?」

「私は名前しか知らないわね。でも名前が残っているから――誰かは昔居たんでしょうね」

「駅だけってことはないはずですからね」

「っか、悠宇。ちか。道路の上にあるあの――線って何かしら?」


 シェアトが電線を指さす。


「あーあれは電気だな」

「電気?」

「あれ?電気向こうになかったか?」

「そういえば火使ってませんでした?」

「あー、そういわれてみればっか、魔法見たいなんも多かったような……」

「まあ杜若の駅がそうでしたね」

「いきなり生まれた――って、まああの線はこういうライトを付けたり――だな」

「おお、明るい」


 昼間ということもあり。悠宇たちの居た室内は電気が付いていなかったので、悠宇が壁にあるスイッチを触り電気をつけるとシェアトが驚きの声と共に電球を見た。


「あっ、そうそう、スマホとかの電池?まあこういうのにも電気は使ってますよ」

「ナニコレ!?えっ、動いてる――どういう仕組み!?って、魔法!?」

「あー、なるほど魔法にスマホとかは近くなるのか。って、冷蔵庫とかもか?」

「れいぞうこ?」

「これこれ」


 悠宇は一応あるキッチンにシェアトを案内して冷蔵庫などの家電を見せる。

 すると、面白いようにシェアトが驚き続けた。


「――ここは、すごい魔法が……いや、でも悠宇たちが触るだけで火が付いたり。常に冷え続ける箱――精霊を使ってもここまでは――って、今気が付いたけど。ここ精霊いなくない!?えっ!?気配すらないんだけど」

「まあ居たら――ってか、精霊って実際いるのかな?」

「神社とかに神様なら居そうですけどね」

「だな」

「神が居るの!?でも精霊はいない!?どういうこと!?って、神って神話の中とかじゃないの!?」

「まあそれにこっちでも近いというか。見えないものというか」

「なんていうんですかね。信仰?」


 それからも悠宇たちはあーだこーだと話し海楓の帰りを待ったのだった。 

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