第83話 その頃…… ◆

 勢いよく煙を上げ漆黒の蒸気機関車が草原の中を疾走している。

 その姿は絵になっていたが。その蒸気機関車を運転している人物はそんなことを思いもせず。とにかく早く目的地へと向かっていた。

 運転しているのは本来ならシェアトの護衛をしているはずのコール。

 しかし今は今後のことも考えた――というか。シェアトに言い負け。結果として食料などを実りの町へと一度取りに行くことになり。悠宇から借りた機関車を走らせているところだった。 


「――にしても揺れが少ない。そして――本当に操作が楽」


 運転席に座るコールは見た目は美男子――だが。本当は女性。でも女性のコールでもこの蒸気機関車は動かすのは簡単だった。

 もちろんコールは日々訓練などをしていたので、体力などには十分自身があったが。そもそもこの蒸気機関車。燃料の補充などはほとんどなく。というか。今のところ必要なく。ハンドル1つで走らせているだけなので、前だけ見ていればいいという状況だった。

 そして何もないところを走っているため。いきなり進路上に何かが飛び出してくるということもなく。ゆとりをもって運転していた。

 

「一体悠宇殿たちは――何者……」


 そのため少し余計な詮索もしていたが――今はまだ情報が少なすぎるのと。とにかく早くシェアトのところへと戻る必要があったため。遠くに小さく見えだした実りの町へと急ぐコールだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る