第85話 その頃……2 ◆

 ヴォォォォォ……。


 実りの町に蒸気機関車の汽笛が響く。

 町の人はその音に早くから気が付いていた。

 そのため、コールだけを乗せた漆黒の蒸気機関車が実りの町の駅に着くころにはガクやアク。ベクも建設中の駅に集まっていた。


 ちなみにコールは実りの町から別方向。お隣ドーナツ国の方へと線路が延びていることに気が付いたが。今はそれより。スピードを落として、駅へと機関車を止めた。


「コールどうした?。シェアトは」


 コールが運転席から降りると、ガクが足早に近寄ってくる。


「シェアト様は今は悠宇殿たちと。そして、杜若には食料がほとんどなかったので、一度補給に。それと無事ということを。あの場所はそう簡単には攻められることはないでしょう」

「そうか。とりあえず町の者は抑え込んだが。町の外に行った奴は見つけられんだそうだ。だからしばらくは悠宇殿たちに匿ってもらうのが――いいじゃろう。とりあえず食料じゃな。おい、食料だ食料」


 ガクが後ろに居た人達に声をかけると、一斉に人が動き出した。


「じゃがコール。シェアトを1人にするのはな……言い負けたな?」

「……はい」

「はぁ。まあ悠宇殿たちは大丈夫――じゃろうが」

「不思議なことは多々ありますが――実際杜若の地も」

「じゃが今は悠宇殿たちを信じるしかあるまい。コール荷物を載せたらすぐに戻るんじゃ」

「はっ」


 それから荷物を蒸気機関車の運転席に載せれるだけ載せるとコールは悠宇に教わった通り進行方向を変えてまた蒸気機関車を杜若に向かって走らせだしたのだった。

  

 ――杜若の地にシェアトが居ないとは夢にも思わず……。 

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